太陽系に未知の「惑星Y」が存在?、隠れた世界を示唆する新たな手がかり 研究
(CNN) 太陽系内に未知の惑星を探す試みは、100年以上前から天文学者を魅了してきた。最近の研究で新たな候補となる天体の存在が示唆され、論文の著者らによって「惑星Y」と名付けられている。
この惑星は実際に発見されたわけではなく、カイパーベルト(海王星の軌道の外側にある氷天体の大きな環)に位置する一部の天体の軌道が傾いていることから存在が推測されているに過ぎない。何かがこうした軌道を乱し、傾けているに違いないと、研究チームは指摘する。
「一つの説明として、おそらく地球より小さく、水星よりは大きい未確認の惑星が存在し、太陽系外縁部の深宇宙を周回していることが考えられる」。そう指摘するのは、米プリンストン大学天体物理学科の博士候補生で、論文の筆頭著者を務めたアミール・シラージ氏だ。「今回の論文で惑星の発見に至ったわけではないが、惑星が答えとなりうるパズルが見つかったのは間違いない」
シラージ氏と共著者は英王立天文学会月報(レター)に研究結果を発表した。
惑星Yは、近年科学者によって提唱されている一連の仮説上の太陽系惑星で最新のものになる。どの惑星も特徴がやや異なるが、いずれもカイパーベルトに潜んでいると見られている。カイパーベルトにはかつて「第9惑星」とされたものの、2006年に格下げされ準惑星に再分類された冥王星も存在する。

NASAのニューホライズンズ探査機が2015年に撮影した冥王星の画像/NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute
「第9惑星」の候補がこれほど多く浮上しているのは、カイパーベルトが太陽系のはるか遠方に位置する暗い領域であり、観測が困難かつ不完全にならざるを得ないためだ。しかし、新設された「べラ・C・ルービン天文台」では10年がかりの観測を開始する準備が進んでおり、状況が変わる公算が大きい。
「最初の2〜3年で決定的な結果が得られると思う」とシラージ氏。「惑星Yが望遠鏡の視野の内側にあれば、直接発見できるだろう」と説明する。
白熱する議論
1846年の海王星発見後、天文学者たちは太陽系に他にも惑星が存在しないか探索を続け、20世紀初頭には「惑星X」と呼ばれるようになった。この名称を広めたのは、天文学者のパーシバル・ローウェル。ローウェルは海王星と天王星の特異な軌道の原因について、未発見の遠方の天体の影響ではないかと推測した。
1930年に冥王星が発見されると、天文学者たちは「第9惑星」の発見を宣言した。当初は冥王星が「惑星X」だと考えられていた。しかしその後の数十年で、冥王星は軌道の特異性を説明するには小さすぎると判断され、90年代初頭にはボイジャー2号のデータから、海王星の質量が従来の想定より小さいことが判明。これにより、惑星Xを必要とせずとも軌道の乱れを説明できるようになった。
惑星Xの探索が再び脚光を浴びたのは2005年だった。カリフォルニア工科大学のマイク・ブラウン教授(惑星天文学)ら3人の天文学者が、冥王星よりわずかに大きい氷天体「エリス」を発見。この天体もカイパーベルトで太陽の周りを公転している。