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原因がわかっていて、減らすこともできる「がん」がある 最新のデータは何を示す?

国立がん研究センターが「がん死亡数と罹患数がともに増加、生存率は多くの部位で上昇傾向」と発表。

現在、日本人の2人に1人がかかる「がん」。そんながんについての最新の傾向を、国立がん研究センターのがん情報サービスが6月14日に発表した。

これは死亡データを2015年まで、罹患(病気にかかること)データを2012年まで、さらに2006〜2008年の生存率データを追加したもの。

同センターによれば、がんの死亡数と罹患数は、ともに増加し続けている。2015年の死亡数は1985年の約2倍、2012年の罹患数は1985年の約2.5倍となった。

主な原因は「人口の高齢化」。しかし、この影響を除くと、がんについての別の傾向が見えてくる。

BuzzFeed Newsは同センターのがん統計・総合解析研究部部長である片野田耕太氏を取材し、データについて説明してもらった。

年齢調整がん死亡率の推移は?

高齢化の影響を除いた年齢調整率(比較ができるように年齢構成を調整しそろえたもの)でみると、がんの死亡率(男女計)は1990年代後半をピークに減少している。片野田氏はこの理由を次のように説明する。

「年齢調整死亡率が減少した主な理由は、男女で胃がん・肝がんによる死亡率が減少したこと、男性で肺がんによる死亡率が減少したことです」

実は、胃がんと肝がんは、感染症を主な原因とするがんだ。胃がんはピロリ菌、肝がんはC型肝炎ウィルスが主な原因となる。検査や治療の普及により感染率が低下していることが、それぞれのがんの死亡率の減少につながっているという。

また、肺がんの死亡率の減少の理由として、片野田氏は「男性の喫煙率が低下している」ことが考えられるとした。

年齢調整がん罹患率の推移は?

一方、年齢調整罹患率(男女計)は1985年以降増加している。理由としては、まず男性で前立腺がんを早期発見するPSA検査が普及したことがある。ただし、このことにより実際に前立腺がんが増加しているとは言い切れないそうだ。

次に、女性で乳がんが増加していること。また、CTで発見される肺の腺がん(喫煙との関連が比較的弱い)が増加傾向にあることも理由だとした。

主要部位別の近年の傾向は?

主要部位別では、近年、男性で年齢調整死亡率が増加しているがんはなく、女性では子宮・子宮頸部・子宮体部でがんによる年齢調整死亡率が増加した。

年齢調整罹患率については、近年、男性では食道・膵臓・前立腺・甲状腺・悪性リンパ腫でがんが増加、女性では食道・結腸・直腸・肺・乳房・子宮・子宮頸部・子宮体部・卵巣・甲状腺・悪性リンパ腫でがんが増加した。

5年相対生存率の推移は?

がんの生存率は多くの部位で上昇傾向にある。これは、医学の進歩により治療成績が向上していることもあるが、また別の理由もあるそうだ。

「胃がん・肝がんなどの原因となる菌・ウィルスに適切な対処をしたり、肺がんにならないために禁煙をするなど、予防可能ながんを予防できるようになっている、と言えます」

この年次推移の調査結果から、片野田氏は「原因がわかっていて、減らすことができるがんが、実はかなりあることを知ってほしい」と思いを話す。

また、罹患率が増え、死亡率が減っていることで、「発見しなくてもいいがんが発見されるケースもあるかもしれない」と言う。

「がんについてはいろんな情報があふれていますが、まずは国がガイドラインで定める胃がん・子宮頸がん・肺がん・乳がん・大腸がんの検診をしっかり受けることが大切です」