遺産相続はほとんどの場合、子どもたちの役には立たない。『DIE WITH ZERO』の著者が説く人生設計

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標準的な寿命が80歳だとすると、相続をするころに子どもはすでに60歳になっている。

Inside Creative House/Getty Images

  • ビル・パーキンス氏は著書『DIE WITH ZERO』のなかで、遺産相続は受け取った時点では何の役にも立たないと書いている。
  • 遺産は、人がすでに安定した生活を送り、引退を考え始める60歳ごろに相続されることが最も多い。
  • 賢いのは現金を早めに贈ることであり、そうすることでお金が最大限に活用されると、パーキンス氏は指摘した。

以前ウォール街でトレーダーとして活動していた著者のビル・パーキンス氏は、子どもたちに遺産として何も遺さないつもりだ。

著書『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(2020年、ダイヤモンド社、児島修訳)のなかで、彼は死ぬ前にもっている現金をすべて使い果たそうと考えている理由を説明した。自身の退職金を一銭たりとも子どもたちに遺すつもりはない。

しかし、金銭的な意味で子どもたちを援助する気がないわけではない。ふたりの子をもつパーキンス氏は、子どもたちが年をとるのを待つことなく、必要なときに彼らにお金を分け与えると書いている。そして、家族のために財産を築きたいと願う人は、同じことを検討すべきだと指摘する。

ほとんどの場合、遺産相続はあまりに遅く行われるため、意味をなさない

寿命が延び、親も子も長生きする昨今は、遺産相続のタイミングもどんどん遅くなっている。

「どの収入クラスを見てみても、“遺産相続”の年齢は60歳ぐらいが最も多くなっている。標準的な寿命が80歳で、親子の年齢差が多くの場合で20歳ぐらいなのだから、当然だ」とパーキンス氏は連邦準備制度のレポートを引用しながら説明する。

ほとんどの人にとって、60歳でお金をもらっても、大きな影響は出ない。この年齢層、つまり世帯主の年齢が55歳から64歳の世帯の平均純資産は100万ドル(約10億5000万円、1ドル=150円換算)を超える。たいていの場合、この年齢層の人々は、すでにみずからの引退を視野に入れているし、子どもも大学生以上で、住宅ローンの返済も終わっている。したがって、そのお金は、もっと早い段階で譲り渡したほうがいいと、パーキンス氏は提案する。

相続財産は、おそらく意図せずして、おもに中流階級の退職者のための退職金になってきた。「以前は、相続財産は子育てなど、キャリアと人生の中盤にある人に渡されてきたが、最近では、50代の人々の心配事、つまり退職後の貯蓄のために使われるようになった」。以前、ユナイテッド・インカム・フロム・キャピタル・ワン(United Income from Capital One)でリサーチアナリストとして働くリンカーン・プリューズ氏がBusiness Insiderにそう指摘したことがある。

早めの生前贈与は、子どもたちに短期的にも、長期的にも利益をもたらす

パーキンス氏はある女性の例を引用した。彼女は子育てをしながら、長年経済的に苦労していた。そして49歳のときに母が亡くなり、遺産を受け取った。パーキンス氏の同僚と話したとき、その女性は「もっと早くもらえれば、もっと多くの価値があったのに」と語った。

50代から60代の人は、何年も前から貯蓄や投資を始めていて、多くの場合ですでに自分の人生を確立している。その一方で、ミレニアル世代やZ世代を含む若者たちは学生ローンの返済、厳しい雇用市場、住宅価格の高騰に直面している。彼らはまさに、遺産を相続できれば、生活を築けるだけでなく、みずからの老後に備えて退職金の貯蓄を始めたり、自分の家族を築いたりできる年齢にある。

自分のTwitterフォロワーに対してアンケート調査を行なったパーキンス氏は、回答者3500人の半分以上が26歳から35歳を、遺産を相続するのに最適な時期として挙げたと書いている。これは60歳代で受け取るのとはまったくの逆だ。60歳にもなると、必要がないときにお金が入ってくることになり、しかも受け取った人は残りの寿命が短いため、複利の恩恵を多く得ることもできない。

人生晩年における相続というパターンを、パーキンス氏は『DIE WITH ZERO』で覆したいと願っている。

「子供に関して言うと、『DIE WITH ZERO』は子供を第一に考えるという思いやりを示している。つまり、自分が死ぬ前に、彼らにいくら譲り渡すかをしっかり考え、それを実行するのである」と同氏は書いた。

※本記事の原文は2021年5月に初めて発表された。

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