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2024年は「就職氷河期世代(1974〜83年生まれの41〜50歳)」が順次、50歳代に突入する年だ。そんな中、驚きの数字が浮かび上がってきた。
「40歳代で家を持っておらず、今後も持つつもりがない」氷河期世代が、184万世帯にのぼるというのだ。
対策を打たねば、住居に不安を抱える「住宅難民」の高齢者が急増する懸念があると専門家は警鐘を鳴らす。
「買わない」のではなく「買えない」と諦めた
試算したのは日本総合研究所(日本総研)だ。2003年、2008年、2023年のそれぞれの年で「住宅を持たず、将来にわたってもマイホームを取得する考えがない40歳代」を試算したところ、2003年は58万7000世帯、2008年は74万9000世帯だったのに対し、2023年は184万1000世帯と大幅に増加していた。
バブル世代らと比べて氷河期世代では、「一生家なし」意向の40代が約2.5倍いることになる。
調査を率いた下田裕介さんは
「氷河期世代は一部、団塊ジュニア世代を含み人口ボリュームが大きいため、数字も大きくなっています」
と前置きした上で言う。
「家を『持たなくていい』という価値観の変化もあるでしょうが、経済的な理由から『持ちたくても持てなかった』層のほうが多いのではないかと見ています。
住宅取得が増える30〜40歳代前半でも所得が伸び悩んだ一方で、住宅価格が高騰し、諦めた人が多かったのではないかと。環境が悪かったんです。
氷河期世代がシニアになる前に対策をしなければ、住居に不安を抱える“住宅難民“の高齢者が急増し、社会問題化する懸念があります」(下田さん)
なお、184万世帯のうち単身世帯は111万3000(60.4%)、2人以上の世帯は72万8000(39.6%)だった。
増えない給料と上がり続けるマンション価格
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下田さんたちの試算では、就職氷河期世代の実質賃金は新人類後期(1960〜64年生まれ)やバブル世代に比べて、月6〜8万円低い水準にとどまっている。
40歳代で貯蓄が100万円に未たない世帯の割合も、上の世代より多い。
一方でマンション価格は高騰を続け、首都圏の「マンション年収倍率(マンション価格が年収の何倍にあたるか)」はバブル世代が30代・40代だったときより大幅に上昇していた。
たとえばバブル世代のマンション年収倍率は30代前半時は7.7、30代後半時は6.2だったが、氷河期前期(1974〜1978年生まれ)はそれぞれ9.3、8.4、氷河期後期(1979〜1983年生まれ)では10.2、9.9だ。
年収の6〜7倍でマンションを購入できていたバブル世代に比べ、はるかに厳しい選択を強いられてきたと言える。
高齢者でも「賃貸を断られない」社会へ
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氷河期世代の就職については、国が2020年度から3年間の集中支援を行なったことで、非正規から正規雇用へ転換する人が増え、一定の成果が出ている。氷河期世代がシニアになる前に、住宅問題も官民あげた早急な対策が必要だろう。
「高齢者であることを理由に賃貸住宅への入居を拒否されるケースは少なくありません。
賃貸時の保証人引受や家賃債務保証支援など、高齢者が安心して住宅の賃貸、購入ができる環境づくりが必要です。
空き家を活用した低価格の住宅供給も有効でしょう。
個人の問題に矮小化せず、社会課題と捉えて解決を目指すべきです」(下田さん)