ポケモンGOとも組んだ、マイクロソフトの最新「複合現実」の破壊力…Microsoft Meshとは何か:Ignite2021

Ignite

年次開発者会議「Microsoft Ignite」はオンラインで3月2日から4日(ともにアメリカ太平洋時間)まで開催。コンテンツは後日の視聴も可能。

出典:マイクロソフト

米マイクロソフトが3月2日(現地時間。日本時間3月3日)からオンラインで開催している開発者会議「Microsoft Ignite」の発表が、VR業界から注目をあびている。

AIからセキュリティ、ビジネスオートメーションまで、さまざまな話題が語られているなか、基調講演でデモンストレーションに時間を割かれたのが、ixed Realityを活用する「Microsoft Mesh」で、さらに「ポケモンGO」のナイアンテックとの協業も飛び出したからだ。

このテクノロジーは、どのような世界を描き出そうとしているのだろうか。

Mixed Realityを再加速する「Microsoft Mesh」とはなにか

マイクロソフトは以前より時々、基調講演などを「バーチャル空間」でも展開するようになっている。今年のIgniteの基調講演も、2017年に買収したバーチャル空間コミュニケーション・サービス「Altspace VR」上で開く、とアナウンスをしていた。

だが、それは単に「VRでもみられる」という話ではなかった。その空間こそが「デモに使われた場所」だった。

基調講演の画面には、Altspace VRの空間が表示された。中央にいるのは、HoloLensとマイクロソフトのMixed Reality(複合現実)ビジネスの生みの親である、米マイクロソフト Mixed Reality and AI担当テクニカルフェローのアレックス・キップマン氏だ。

米マイクロソフト Mixed Reality and AI担当テクニカルフェローのアレックス・キップマン氏

米マイクロソフト Mixed Reality and AI担当テクニカルフェローのアレックス・キップマン氏。もちろんHoloLensをかぶって登場。基調講演のうち、Mixed Reality関連の部分については、バーチャル空間である「Altspace VR」の中から行われた。

出典:マイクロソフト

「皆で空間や想いを共有できることは、素晴らしいことです。それはもう夢ではなく、リアリティを共有することができるようになってきました。皆さんに新テクノロジー『Microsoft Mesh』をご紹介します」(キップマン氏)

彼は以前より、たくさんの人が参加するバーチャルな場をネットに用意し、それを実際に多くの人で共有して活動する「コラボラティブ(協調的)コンピューティング」という考え方をアピールしてきた。Microsoft Meshは、まさにそのためのシステムといえる。

どんなことができるのか?については、以下の概念ビデオを見るのがわかりやすい。

空間にCGを重ねて表示できるMixed Realityコンピュータである「HoloLens 2」を使い、コミュニケーションしたり人の動きを見たり、CGの物体を見ながら仕事の検討を進めたりしている。


Microsoft Mesh説明ビデオより。3Dの物体を、複数の場所にいる人がネットワークを介してみながら作業している。実在する人物は左の男性のみだ。

Microsoft Mesh説明ビデオより。3Dの物体を、複数の場所にいる人がネットワークを介してみながら作業している。実在する人物は左の男性のみだ。

出典:マイクロソフト

Microsoft Mesh説明ビデオより。習字の先生のお手本を、Mixed Realityの形でみながら学習

Microsoft Mesh説明ビデオより。習字の先生のお手本を、Mixed Realityの形でみながら学習。

出典:マイクロソフト

HoloLens 2があれば「今すぐ体験できる」遠隔コラボの破壊力

前出の映像は、SFの世界のイメージ映像のように見える。実際、多くの部分がまだイメージであり、そのまま「今できる」わけではない。

だが重要なのは、画質やできることの範囲は違っていても、すでに実際に「アプリケーションが無償公開済み」であり、業務用とはいえ販売も行われている「HoloLens 2」を使うと、規模や画質は異なるが、基本的な機能については実際に目の前で試してみることも可能だ、という点だ。

Mesh

HoloLens 2向けに公開されている「Mesh」でのコミュニケーションアプリを使うキップマン氏。アプリはすでに無償公開済みで、機器さえあれば試せる。

出典:マイクロソフト

以下のビデオは、現状で動作するMeshアプリケーションについて解説したものだ。16分と長めのビデオなので、デモの部分をかいつまんで紹介する。

HoloLens 2をかぶると、自分の姿は「アバター」と重なる。表情や目線、手の動きなどもそのまま再現される。

他の人と同じバーチャル空間に入ると、ちゃんと相手のアバターの姿も見え、音声+アバターの身振りで会話が成立する。手にはコントローラーなどを持つわけではなく、HoloLens 2をかけるだけでいい。

自分の姿に重なっているのが自分のアバター。動きや表情の一部などはHoloLens 2から取り込まれ、自分の自然な動きが再現される。

自分の姿に重なっているのが自分のアバター。動きや表情の一部などはHoloLens 2から取り込まれ、自分の自然な動きが再現される。

出典:マイクロソフト

目の前にはバーチャルな机が現れるが、これが「みんなで共有する場所」のようなものだ。クラウドストレージであるOneDriveから3Dデータを読み込み、みんなでそれを見ながら対話ができる。それだけでなく、各人が指で線を描き、立体に「注釈」をつけることもできる。可能だ。

Mesh

バーチャルな机を囲んでアバターでミーティング。

出典:マイクロソフト

Mesh

3Dの物体を出し、そこに線を引いて確認しながらディスカッションができる。

出典:マイクロソフト

それぞれの人々はもちろん、同じ場所にいる必要はない。それぞれが別の場所にいても、机を挟んだ相対位置がちゃんと相手に伝わる。

Mesh

それぞれの人はもちろん、別々の場所からネットを介してアクセスしている。別々の場所にいるひとが、同じ仮想空間上の位置関係を保持しながらコミュニケーションできるというのは、比較的高度な技術だ。

出典:マイクロソフト

こうしたことは、それぞれ個別の機能としては他のVRコミュニティなどでも実現されていたのだ。ただ、HoloLens 2とMeshのシステムでは「機器をかぶるだけ」「すでにアプリがあり、限定的ながらすぐに使える」のが大きい。

そして、Meshはあくまでこのアプリの「基盤技術」なので、今後より大規模なアプリケーション開発や、他のサービスとの連携につながっていく。

仮想空間上でもTeamsが使える

例えばMeshはマイクロソフトの主軸サービスの一つである「Microsoft Teams」とも連携する。我々は日常、Teamsでメッセージやビデオ会議をしているが、それをMixed Realityと組み合わせるのは簡単なことだ。

Teams連携のイメージ

Meshに関する説明ビデオより抜粋。医師とのビデオコミュニケーションもMeshの中から。Teams連携を思わせる。

出典:マイクロソフト

「両方を組み合わせれば、もはや企業の本社機能を1つの場所にまとめておく必然性は小さくなる。このような使い方を通して、Mixed Realityはみんなのものになっていきます」

とキップマン氏は語る。

Meshは、AzureやTeamsはもちろん、オフィスソリューションであるMicrosoft 365、CRM(顧客関係管理)ツールであるDynamics 365など、マイクロソフトが持つさまざまな技術・サービスと連携する。

HoloLensの可能性として過去から語られてきたことではあるが、Meshという具体的な「核」が生まれたことで、その実現性と広がりが明確になってきた印象がある。

ポケモンGOのナイアンティックやジェームズ・キャメロン監督とも連携

そもそも、MeshはHoloLens専用というわけではない。Mixed Realityで体験するにはHoloLensが最も優れたデバイスである、というだけで、「マルチデバイス・マルチOSで動作します。どこにいる友人ともつながれます」とキップマン氏はいう。

そうしたパートナーとして紹介されたのは、「ポケモンGO」でおなじみのナイアンティックだ。ナイアンティックのジョン・ハンケCEOも、アバターの姿で登場した。

アバターとして登壇した、ナイアンティックのジョン・ハンケCEO

アバターとして登壇した、ナイアンティックのジョン・ハンケCEO。

出典:マイクロソフト

ナイアンティックは独自に、世界の3Dデータ化やAR基盤技術の開発を進めてきた。

「この種の技術は必ずや、世界にポジティブな影響を与えるでしょう。次の世代のARハードウエアを使って、我々もユーザー体験を次の世界へと推し進めます。マイクロソフトとの間で『リアルなソーシャル・コネクション』実現というビジョンを共有し、業界をリードしていきたいです」(ハンケ氏)

ハンケCEOはそう語った。そして公開されたのが、MeshとHoloLensを使って作られた、「次世代のポケモンGO」の姿だ。動画はナイアンティックのツイートで見ることができる。

これはあくまで実証用デモであり、このアプリがそのまま供給されるわけではない。だが、非常に興味深いものだ。

よりリアルな世界にポケモンが「ちゃんと歩いている」のがわかるし、自分の後をついてきてもくれる。「スマホを使ってポケモンを探す」ゲームだったポケモンGOが、「現実世界でポケモンと生活する」ゲームになったかのようだ。

他にも、ディスカバリーチャンネルで深海ドキュメンタリーを制作中のジェームズ・キャメロン監督がニュージーランドから遠隔登壇したり、Mixed Realityでのライブを披露したりと、キップマン氏は現状での「空間共有」の可能性を魅せることに非常に積極的に見えた。

現在深海関連ドキュメンタリーを制作中の、ジェームズ・キャメロン監督はニュージーランドからリモート登壇

現在深海関連ドキュメンタリーを制作中の、ジェームズ・キャメロン監督はニュージーランドからリモート登壇。

出典:マイクロソフト

こうしたアプリケーション開発が進んでいくことは、コミュニケーションの拡大とともに、Mixed Realityを広げるために大きな助けとなるだろう。

現状では、そのためのハードウエアはまだ高価な上に制約も多い。だが、技術はいつか解決できるものだ。マイクロソフトやナイアンティックはそれを信じて、着実に基盤整備をすすめ、それをアピールしている。

今回のMeshの発表は、その一つの段階を示す、重要なものと言えるだろう。

(文・西田宗千佳

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