2020年3月9日、ワシントンで行われたサテライト2020カンファレンスで語るイーロン・マスク。
AP Photo/Susan Walsh
- イーロン・マスクのSpaceXは、スターリンク計画で数万基の人工衛星を宇宙に打ち上げようとしている。
- スターリンクの目標は、この衛星群で世界中のユーザーに高速インターネットを提供することだ。
- 天文学者は、衛星群が天文研究に被害を与えかねないと懸念を表明している。
- マスクは3月9日、スターリンクは「天文学的な発見にはまったく影響を与えないと確信している」と述べた。
- ヨーロッパ南天天文台による最近の研究は、これが事実ではないことを示唆している。
3月9日、イーロン・マスク(Elon Musk)は、最大4万2000基の衛星を軌道に打ち上げるという彼の計画が天文学の研究に損害を与えるかもしれないという天文学者からの懸念に言及した。
ワシントンDCで行われたサテライト2020カンファレンスでのインタビューで、その懸念について聞かれたマスクは、「天文学的な発見にはまったく影響を与えないと確信している。それが私の予想だが、少しでも影響がある場合には修正処置を行う」と答えた。
スペースX(SpaceX)のスターリンク(Starlink)計画は、2019年から人工衛星を打ち上げており、すでに300基近い人工衛星が軌道上にある。まもなく、アメリカ天文協会は商業衛星の大量打ち上げが天文学研究に悪影響を及ぼす可能性があると警告する声明を発表し、天文学者たちはすぐに、観測データに明るい筋を残しているスターリンク衛星を見つけ始めた。
マスクによると、懸念の一部は、意図した軌道より少し下にある衛星によるものかもしれないという。
「一部の人は、衛星が最初に打ち上げられたときには、少し回転していて安定していないために不規則に光ったり、想定よりまだ低い軌道にあるために正しい軌道とは違った形で反射するから、少しエキサイトしている。衛星が正しい軌道に乗っている今、すべての衛星がどこにあるかを誰かが教えてくれれば、私は感心するだろう」と、彼は言いました。
「すべての衛星がどこにあるのか教えてくれる人には会ったことがない。一人も。そんなに大したことではないのだ」と彼は付け加えた。
ヨーロッパ南天天文台が発表した論文によると、チリにある最新鋭のヴェラ・C・ルービン天文台(以前は大型シノプティック・サーベイ望遠鏡、LSST:Large Synoptic Survey Telescopeとして知られていた)のような大型の高性能望遠鏡は、夜空の大量の商用衛星によって「ひどい影響を受ける」ことを示唆する証拠が見つかった。
マスクは続けて、スペースXが自社の衛星の反射率を下げる方法について科学者と取り組んでおり、どのようなアイデアを検討しているかについてを明かした。
「フェーズドアレイ・アンテナを白ではなく黒に塗装する実験を行ってる」と、彼は言った。
スペースXは今年1月、衛星の明るさを抑えるためにダークコーティングする実験を行っていると発表したが、専門家は以前、Business Insiderに対して、これは複雑な作業であり、天体観測に生じる問題を必ずしも解決するものではないと述べていた。
ある専門家は、スペースXは衛星打ち上げを完全に停止すべきだと述べた。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの天文学者、デイブ・クレメンツ(Dave Clements)博士はBusiness Insiderに、「要するに、これらの対策に真剣に取り組むのであれば、これらの対策が完全に機能することが証明されるまで、衛星の打ち上げを中止すべきだ」と語った。
クレメンツ博士によると、マスクは、スターリンク衛星が電波望遠鏡を見えなくしてしまうのではないかという、天文学者たちの懸念には答えていないという。
「衛星は地上と通信するものであり、これらの通信は必然的に電波天文学の活動を妨害することになる。彼が挙げた緩和策はどれもこれを変えるものではない」とクレメンツ博士は述べている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)