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- ビリオネアの投資家でソロス・ファンド・マネジメントの会長、ジョージ・ソロス氏は、スイスで開催された世界経済フォーラムの年次会合(ダボス会議)でスピーチした。
- ソロス氏は中国と習近平国家主席を非難し、聴衆に対し、この新興国家のせいで世界は「これまでにない危険」に直面していると警告した。
- ソロス氏はまた、2018年のスピーチでフェイスブックやグーグルといった「ITの独占企業」を批判した自身のコメントを強調した。同氏はこうした企業の行動が、中国の閉ざされた社会の実現を可能にしていると考えている。
世界経済フォーラムの年次会合(ダボス会議)で、ビリオネアの投資家、ジョージ・ソロス氏がスピーチを行った。
1月24日の夜(現地時間)に行われたこのスピーチは、ソロス氏が中国に対して間違いなく批判的であることを示した。
「今夜、わたしはこの時間を、開かれた社会の存続を脅かすこれまでにない危険について、世界に警告するために使いたいと思う」
こう切り出したソロス氏は、言葉を続けた。
「抑圧的な政府の手によって機械学習や人工知能といった統制の手段がもたらし得る、開かれた社会が直面する致命的な危険に注意を呼び掛けたい。絶大な権力を維持するため、習近平が一党支配する中国にわたしは注目し続ける」
ソロス氏の反中国の議論の中心は、個人情報を一元管理するデータベース「社会信用システム」のコンセプトだ。
そうした仕組みがまだ存在しないことを認めつつ、ソロス氏は世界のテクノロジー企業の大手がその登場を早め、その過程で開かれた社会に悪影響を及ぼす可能性を恐れていると語った。
ソロス氏のスピーチは、前の年と同じようなトーンだった。同氏は2018年のスピーチで、フェイスブックやグーグルといったテック大手の世界的な支配を嘆いていた。同氏はこうした企業を「脅威」と呼び、その成長に対する飽くなき欲望が、結果的に中国のような独裁的な政権との協力につながると警告した。
ソロス氏の今回のコメントはこの議論をさらに進めたもので、中国が開かれた社会から完全に移行した場合に世界に及ぼす影響を探るものだった。
「わたしが言いたいのは、抑圧的な政権とITの独占企業が組み合わさることで、こうした政権に開かれた社会をしのぐアドバンテージを与えることになるということだ」
ソロス氏は言う。
「独裁政権にとって、統制の手段は有用なツールだ。だが、こうした手段は致命的な脅威を突き付ける」
「中国は、世界で唯一の独裁政権ではない。だが間違いなく、最も経済的に豊かで、最も強く、機械学習や人工知能が最も発展した国だ。これが開かれた社会というコンセプトを信じる人々にとって、習近平を最も危険な敵にしている」
アメリカにできること
アメリカのトランプ大統領が中国との貿易戦争の乗り出したとき、ソロス氏は満足していた。手遅れになる前に中国には戦いを挑まれる必要があり、トランプ大統領は正しい方向に一歩進んだと受け止めたからだ。
しかし、ソロス氏は大統領のその後の行動に失望したという。もっと強硬な姿勢を取るべきだったのに、自身の政治的な欲望がトランプ大統領を譲歩により応じやすくしたと同氏は述べた。
では、アメリカはどう強硬手段を取り、習国家主席が進めるこの閉ざされた社会のひどい計画の実現を阻止できるのだろうか? ソロス氏は自身のアイデアを示した。
まず第一に、ソロス氏は目下の貿易戦争を対中国のみにしぼるべきだと言う。今はいろいろな国を公平にターゲットとしているように見えるが、ソロス氏は、トランプ大統領は他の国については全て忘れるべきだと主張する。
第二に、知的財産の盗用などで最近非難を浴びている中国企業のZTEやファーウェイには、アメリカは断固とした対応を取るべきだとソロス氏は言う。同氏はアメリカ政府に、これらの企業を厳しく取り締まってほしいと考えている。
しかし、ソロス氏は最終的に、国家間の緊張を和らげる何らかの国際的な合意が必要だと考えている。
「第二次世界大戦から生まれた、国際連合の条約に似た何かを夢見ることは可能だ」と、ソロス氏は言う。「これは米中間の対立の連鎖の終わり方として適切だろう。国際協調を取り戻し、開かれた社会を繁栄させる」
(翻訳、編集:山口佳美)