グーグルが米東部時間10月8日、SNSの「Google+」を閉鎖すると発表した。
50万人超の個人情報が外部からアクセスできる状態になっていたが、公表を控えていたことを、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がスクープ、その直後に発表した。公表すれば、グーグルが議会や規制当局の関心を引き、ブランドが傷つくことを恐れていたとWSJは伝えている。
グーグルはWSJの報道直後、Google+を2019年8月末で閉鎖し、継続しないことを発表。理由は「消費者の期待に沿うような、成功できるプロダクト(Google+)を作り、維持していくのには、大きな困難がありすぎる」というものだ。Facebookの台頭に、検索エンジンであるグーグルが危機感を募らせ、2011年にスタートしたGoogle+があっけなくなくなる。
個人情報が流出したと報じられたグーグル。報道の直後、Google+閉鎖を発表した。
Reuters/Charles Platiau
しかし問題なのは、個人情報が流出していた恐れがあるのに、それを隠していたことだ。
Google+は2015年から2018年3月にかけての長期間、ソフトウエアの欠陥で、外部デベロッパーがメールアドレスや性別、職業、年齢などの個人情報(プロファイル)にアクセスできるようになっていた。英ガーディアンによると、外部デベロッパーはデータにアクセスできたユーザーの「友達」の情報まで見ることができたという。
2018年3月、社内で問題が発覚し、欠陥は修正された。しかし、WSJが入手したグーグルの法務・ポリシー担当者らによるメモは、問題を公表すれば「即座に規制当局の関心」を引くとし、欠陥に関する公表が見送られたとしている。関係者によると、サンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)にも、公表しないという計画について報告があったという。
Facebookの情報漏洩との比較を懸念
グーグルCEOのサンダー・ピチャイも流出を知っていたと報じられている。
REUTERS/Stephen Lam
2018年3月といえば、英データ分析会社ケンブリッジ・アナリティカに、Facebookユーザーの個人情報8700万人分がアプリを通じて流出したことを、英オブザーバー紙などがスクープした時期だ。WSJによると、グーグル法務担当者らのメモは、Facebookの個人情報漏洩問題と比較される可能性が高いとして、「上級幹部」に共有されていた。Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、ケンブリッジ・アナリティカ問題がきっかけで、議会で証言する羽目に陥った。
グーグルのブログは、Google+がいかにFacebookに水をあけられていたかも明らかにした。
「多大な努力と腐心にもかかわらず、(Google+は)幅広い消費者とデベロッパーを獲得できなかった。90%のユーザーの接続時間が、5秒以下だった」
これに対し、グーグルが当初ライバル視したFacebookは現在、ユーザーが1日平均35分を費やしている。
そのFacebookは8700万人分の個人情報漏洩問題で連邦議員の叱責を買い、「プラットフォーマー」に対する規制論が議会で高まった。Facebookは9月半ばにもセキュリティーの欠陥で、約5000万人のユーザー情報にハッカーの影響があった可能性があると発表している。同社は影響があったとみられるユーザーとその予備のユーザーアカウント計9000万を、ユーザーには知らせもせずに即座にリセットするという措置を取った。
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Google+の個人情報をめぐる問題で、今後再びプラットフォーマーの責任問題が注目を浴びることになるだろう。
Facebookの対策も進まず
米大統領選挙にもトランプ大統領誕生に「使われた」とされるFacebook。議会などでもその責任を追求された。
REUTERS/Charles Platiau
「GAFA(ガーファ)」と呼ばれ、世界中の個人情報を独占しているグーグル、アップル、Facebook、アマゾンの4大企業で、今回グーグルが主要サービスの閉鎖を余儀なくされた。個人情報保護、セキュリティをめぐる問題で、GAFAの一角が崩れた。
問題の発覚が議会や規制当局の関心を引くのを恐れて、グーグルが問題を「隠蔽」したのは、まさに「大企業病」の表れとも言える。
大企業病の特徴は、組織が大きくなりすぎて、風通しが悪くなる。各部署が外部を排除し仕事に邁進するあまり、責任の所在が分かりにくくなり、問題が起きても誰が責任をとるのかも分からず、迅速な対応ができなくなる。そのため対応や公表が、後手後手になる。
会社を揺るがす危機が起きた時に「守り」に回るのも、大企業病の特徴だ。バッドニュースを表に出るのを恐れて、組織的に隠蔽する。まさにグーグルの今回のケースだ。
Facebookも3月の8700万人の情報漏洩問題は、メディアのスクープで明らかになった。流出した個人情報は2016年米大統領選挙で、トランプ候補を勝たせるためのデータに使われたというから、問題はさらに深刻だ。Facebook社員が知っていて隠蔽していたとすれば、民主主義国家における罪は重い。
これに対し、Facebookはさまざまな対策を講じていると発表しているが、ユーザーを100%安心させるには至っていない。こうした対策の遅さも、大企業病の特徴の一つだ。株価、時価総額ともに、好調に上昇してきているグーグルやFacebookだが、私たち消費者の個人情報が、その収益のもとだ。それが第三者の手に渡り、何らかの損害を被る可能性がいつでもあるとすれば、莫大な収益のために、消費者が犠牲になっているとも言える。
(文・津山恵子)