BI Graphics
2018年がスタートした。今年、テック業界に波乱を起こすスタートアップを予想してみよう。
では、誰に意見を聞くのがいいだろうか? テック業界をチェックし、スタートアップの相談に乗り、プレゼンを受け、投資を行う —— ベンチャーキャピタル(VC)以上の適任はいないだろう。2018年に急成長しそうなスタートアップについて、我々はさまざまなバックグラウンドや投資哲学を持つVCに意見を求めた。
シリコンバレーからは、アクセル(Accel)、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)、 バッテリー・ベンチャーズ(Battery Ventures)、ベッセマー(Bessemer)、グレイロック・パートナーズ(Greylock Partners)、クライナー・パーキンス(Kleiner Perkins)、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)が答えてくれた。
また、8VC、ブルームバーグ・ベータ(Bloomberg Beta)、そして創業者に女性が少なくとも1人いるスタートアップに投資するBBGベンチャーズ(BBG Ventures)など、シードラウンドや初期の投資ラウンドに特化したVCにも意見を求めた。
そのほかには、スタートアップ大国イスラエルのVC、エルサレム・ベンチャー・パートナーズ(JVP)やアワークラウド(OurCrowd)、インスティテューショナル・ヴェンチャー・パートナーズ(Institutional Venture Partners)のソメシュ・ダッシュ(Somesh Dash)氏のような成長企業を見つける目を持つVCにも話を聞いた。
我々はまず、2018年に成功が見込まれ、すでにVCが投資済みのスタートアップを1社あげてもらった。VCに投資を決断させるほどのスタートアップだ。さらに、まだ投資などは行っていないが、クールと考えているスタートアップも1社あげてもらった。
スタートアップを愛してやまないVCの力を借りて、魅力的で将来有望なスタートアップをリストアップすることができた。ビジネス、ゲーム、パーソナライズされた健康サービス、ロボット、次世代通貨、新しいスーパーコンピューター、そして宇宙まで、さまざまな領域にわたっている。
2018年注目のスタートアップ50社を見てみよう。
Nauto:AI車載カメラ
Nauto
調達額:1億7390万ドル
ナウト(Nauto)はクラウドに接続されたAI車載カメラを製造。ドライバーに危険を知らせたり、運転後にフィードバックしてくれるほか、事故の際にその原因を分析してくれる。
Rigetti Computing:量子コンピューター開発
CEOのチャド・リゲッティ氏。
YouTube/Y Combinator
調達額:6950万ドル
リゲッティ・コンピューティング(Rigetti Computing)は、スーパーコンピューターよりも高速な「量子コンピューター」を開発中。
Pindrop:電話詐欺の防止
Pindrop
調達額:1億2280万ドル
ピンドロップ(Pindrop)のソフトウエアは、コールセンターなどで使われている。音声を分析し、詐欺を見抜く。また音声が肉声か人工音声かを識別することができる。
Relativity Space:ロケットを3Dプリンターで製造
Relativity Space
調達額:840万ドル
レラティビティ・スペース(Relativity Space)は、自動化されたロケット製造工場。低コストのロケットを製造することで、宇宙への輸送コストの削減を目指す。
Reflektive:従業員へのパフォーマンスのフィードバックを可視化
Reflektive
調達額:4160万ドル
リフレクティブ(Reflektive)は、パフォーマンスレビュー用のソフトウエアを提供。アウトルック、Gメール、slackなどと統合可能。
MoveWith:世界レベルのフィットネスクラスをスマホに配信
共同創業者兼CEOのホリー・シェルトン氏。
Medium/Holly Shelton
調達額:380万ドル
ムーブウィズ(MoveWith)の個人向けのフィットネスアプリは、有名コーチによるワークアウト用音声データを配信。ランニング、サイクリング、バレエからヨガ、瞑想などのクラスがある。
Zume Pizza:ピザ作りをロボット化
Melia Robinson
調達額:4800万ドル
ズーム・ピザ(Zume Pizza)のキッチンでは、ピザ作りはほぼすべてロボットが行う。宅配トラックも自動化され、配達中にピザを焼く。届いた時には、できたてだ。スマートフードデリバリーの新たな潮流の先がけと見なされている。
Earny:最低価格との差額を自動で請求
CEOのオデッド・ヴァクラット氏。
Earny
調達額:250万ドル
アメリカには「価格保護(Price Protection)」と呼ばれる制度がある。購入した商品の価格が下がった場合、一定期間ならばその差額を返金してもらえる制度。
アーニー(Earny)のサービスは、小売業者やクレジットカード会社の価格保護制度に自動で申請し、返金請求する。
Ripple:グローバル決済にブロックチェーンを応用
CEOのブラッド・ガーリングハウス氏。
Ripple
調達額:9360万ドル
リップル(Ripple)は、ビットコインを支える技術であるブロックチェーン技術を使い、世界中の銀行や決済処理企業が相互に直接かつ安全に送金することを可能とする。
AOLおよびヤフーの元幹部、ブラッド・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse)がCEOを務める。
Duo Security:パスワードをより安全に
リード・エッジ・キャピタル(Lead Edge Capital)の幹部エイヴリー・ロジン(Avery Rosin)氏はデュオ・セキュリティ(Duo Security)とトースト(Toast)の2社に投資している。
Duo Security
調達額:1億2150万ドル
デュオ・セキュリティ(Duo Security)は、パスワードの管理と、企業のネットワークに接続する前にデバイスのウィルスチェックを行う。
Signal Sciences:開発チームとセキュリティチームの共同作業を促進
共同創業者兼CTOのニック・ガルブレス氏。
Signal Sciences
調達額:2670万ドル
シグナル・サイエンシズ(Signal Sciences)は、ウェブサイトやアプリの開発チームとセキュリティチームの共同作業を円滑にし、ハッカーからの攻撃を防ぐ。
Hudl:あらゆるアスリートが利用できる、プロレベルの分析ソフトウエア
Hudl/Facebook
調達額:1億890万ドル
ハドル(Hudl)は、どんなレベルのアスリートでも利用できる、アスリートやコーチ向けのパフォーマンス分析ソフトウエア。
動画をアップロードすると、パフォーマンスの分析、ハイライト映像の公開などができる。
JustWorks:スモールビジネス向け人事ソフトウエア
創業者兼CEOのアイザック・オーツ氏。
Courtesy of Justworks
調達額:5300万ドル
ジャストワークス(JustWorks)は、スモールビジネス向けの人事ソフトウエアを提供。
給与計算、福利厚生、コンプライアンスなどの人事関係のタスクをカバー。
Deepmap:自動運転車用の特別な地図
DeepMap
調達額:3200万ドル
近い将来、自動車は自動化され、人間が運転する必要はなくなるだろう。しかし、その前に自動運転者車向けに地図を作る必要がある。
ディープマップ(Deepmap)は、自動運転車向けの高精細な地図を提供、また車に搭載したセンサーを利用して道路を「見る」。そして、コーナーの先を予測する。
Remix:より良い公共交通システムを
Remix
調達額:1200万ドル
リミックス(Remix) のサービスは、 都市計画における交通システムの立案を支援。ルートの検討、コストや計画による人口動態への影響の算出を行う。
Smash.gg:eスポーツの運営支援
Smash.gg
調達額:1400万ドル
スマッシュ・ドット・gg(Smash.gg)のソフトウエアは、eスポーツのイベント運営者が大会やイベントを計画、運営することをサポート。
Dia&Co:等身大の女性向けファッション
共同創業者リディア・ギルバート氏とナディア・ボウジョワ氏。
Medium/Lerer Hippeau Ventures
調達額:2000万ドル
ディア・アンド・コー(Dia&Co)は、大きいサイズの服を着る女性向けに洋服やアクセサリーを販売。
Narvar:配送、返品を追跡するeコマース向けソフトウエア
創業者兼CEOのアミット・シャーマ氏
Twitter/Amit Sharma
調達額:3400万ドル
ナーバー(Narvar)は、商品の配送および返品を追跡するソフトウエアを「インターネット小売業上位100社(Internet Retailer 100)」の半数を含む400以上のeコマースサイトに提供、年間2億5000万人が同社のサービスを利用している。
Molekule:ナノテクノロジーで空気を清浄
この銀色の筒状の機械がモレキュールの空気清浄機。
Molekule
調達額:1340万ドル
モレキュール(Molekule)がは、ナノテクノロジーを使って汚染物質を分子レベルで分解し、取り除く空気清浄機を販売。
Handshake:大学生向けのリンクトイン(LinkedIn)
創業者兼CEOのガレット・ロード氏。
Handshake
調達額:3400万ドル
ハンドシェイク(Handshake)は、大学生や若い卒業生のためのリクルーティングおよびキャリアネットワーク。
Roblox:子ども向けオンラインゲーム
ロブロックス(Roblox)のプレイ画面
Matt Weinberger/Business Insider
調達額:9920万ドル
ロブロックス(Roblox)は子ども向けオンラインゲーム。月間のアクティブプレイヤーは6400万人以上。プレイヤーは3D空間を作り、そこで他のプレイヤーと遊ぶことができる。
LOLA:おしゃれな生理用品ブランド
共同創業者のアレックス・フリードマン氏(左)とジョーダナ・キアー氏(右)。
Lola
調達額:1120万ドル
ローラ(LOLA)は、100%オーガニックコットン製の生理用品を宅配してくれる、定額制サービス。
Function of Beauty:パーソナライズされたシャンプー
Avery Hartmans/Business Insider
調達額:960万ドル
ファンクション・オブ・ビューティー(Function of Beauty)は、顧客の好みや髪質をもとに、アルゴリズムを使ってパーソナライズされたシャンプーを提供。
Citizen:緊急通報(911)を近隣住民に警告
Citizen
調達額:1216万ドル
シティズン(Citizen)は、ユーザーの近所で発生した緊急通報(911)をリアルタイムで表示するアプリ。
以前は「ビジランテ(Vigilante)」という名前(自警団員という意味)で、人気とともに、その名前ゆえに議論の的にもなった。誤解を避けるために名前を変更した。
Aurora Innovation:自動運転車開発の天才たちが独立
同社はデータ収集にアウディ「Q7」を利用している。
Aurora Innovation
調達額:611万ドル
オーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)は、謎めいたスタートアップ。創業メンバーはグーグル出身者、テスラ出身者、ウーバー出身者。
8月にカリフォルニア州における公道での試験走行の許可を受けた。
Knotel:コワーキングスペース
CEOのアモル・サルバ氏。
Knotel
調達額:2500万ドル
ノーテル(Knotel)は、ウィーワーク(WeWork)と競合するコワーキングスペース。サービスの柔軟性をアピールしている。
現在成長中で、マンハッタン、ブルックリン、サンフランシスコで、合わせて50万平方フィート(約4万6000平方メートル)以上のスペースを運営している。
Guild Education:労働者階級向けに大学教育を提供
共同創業者のブリタニー・スティッチ氏(左)とレイチェル・カールソン氏(右)。
Guild Education/Built in Colorado
調達額:3150万ドル
ギルド・エデュケーション(Guild Education)は、チポトレ(Chipotle)、タコ・ベル(Taco Bell)、ダヴィータ(DaVita)といった多くの従業員を抱える企業に対して、大学教育の提供、授業料還付のサポートなどを行う。
Periscope Data:データアナリストを支援
Periscope Data
調達額:3450万ドル
ペリスコープ・データ(Periscope Data)はビッグデータ分析ツールを提供。アナリストのデータ処理やインサイトの発見を支援。
Carta:ストックオプションを透明化
創業者兼CEOのヘンリー・ワード氏。
LinkedIn/Henry Ward
調達額:6780万ドル
カルタ(Carta) は、非上場企業の株券やストックオプション、ワラント、デリバティブなどをデジタル化して管理する。
スタートアップ企業は、同社のサービスを利用することで、誰が、何を、どれくらい所有しているかを簡単に把握できる。
Toast:レストラン運営用ソフトウエア
Toast
調達額:1億3400万ドル
トースト(Toast)はレストラン向けのモバイルアプリ。テーブルでのオーダーやデリバリーの受け付け、ポイントサービスまでレストランに必要なあらゆる機能を備えている。
uBiome:世界最大の体内微生物データベース
uBiome
調達額:2700万ドル
マイクロバイオームは我々の体内に生息する微生物、その多くは我々の健康に役立っている。ユーバイオーム(uBiome)は、世界最大の体内微生物データベースを構築している。
同社はデータベースを活用して、保険が適用された検査を提供する。
Celmatix:不妊治療に関する個別の医学的アドバイスを提供
共同創業者のピラヤ・ユータス・ベイム氏。
Courtesy Celmatix
調達額:4710万ドル
セルマティクス(Celmatix)はビッグデータと遺伝子科学を使って、女性に不妊治療に関するパーソナライズ化されたアドバイスを提供。
ServiceTitan:家庭工事業者向けソフトウェア
CEOのアラ・マデシアン氏。
ServiceTitan
調達額:9900万ドル
サービスタイタン(ServiceTitan) は配管業者、空調業者、電気工事業者などに対して、クラウドベースのモバイルソフトウエアを提供。
Crew:時給で働く人向けアプリ
Crew
調達額:2490万ドル
クルー(Crew)は、企業のメールアドレスを持たない、時給で働く人向けアプリ。
SlackやWhatsAppのような機能に加えて、スケジューリングやシフト変更などの機能を提供。
Vayyar:3Dイメージングセンサーを提供
Vayyar
調達額:3400万ドル
バイアー(Vayyar)の3Dイメージングセンサーは物や液体、原材料を「透視」する。乳がんの検診、水漏れの検知、食品の安全性モニタリングなどに使われている。
Omni:収納&貸し出しサービス
Omni
調達額:1480万ドル
オムニ(Omni)は使っていないものを収納するスペースを提供。またそれを有料で貸し出したり、逆に他のユーザーの収納品を借りることが可能。
Zebra Medical Vision:クラウドベースのAI医療画像診断
Zebra Medical Vision
調達額:2000万ドル
ゼブラ・メディカル・ビジョン(Zebra Medical Vision)は、AIを医療画像診断に活用。見逃されたかもしれない症状を検出する。
料金は固定で、1スキャンにつき1ドル。
OverOps:プログラマーの疑問を解消
OverOps
調達額:4950万ドル
オーバーオプス(OverOps)は、コーディングのミスをその理由とともに開発者に知らせる。また、解決策だけでなく、優先的に取り組むべき問題も理由とともに教えてくれる。
Coda:新しいタイプのドキュメントソフトウエアを開発中
共同創業者のアレックス・デニューイ氏(左)とシシール・メヘロートラー氏。
Coda
調達額:6000万ドル
コーダ(Coda)は、マイクロソフト出身で、元YouTubeのシシール・メヘロートラー(Shishir Mehrotra)氏と元グーグルのアレックス・デニューイ(Alex DeNeui)氏が創業。
テキストドキュメントの柔軟性、スプレッドシートのパワー、そしてアプリの機能を兼ね備えた新しいタイプのドキュメントソフトウエアを開発している。
Sigma Computing:プログラミングなしで美しいチャートを作成
Sigma
調達額:不明
シグマ・コンピューティング(Sigma Computing)はクラウドに巨大なデータベースを保有、ユーザーはデータベースにアクセスして、データの分析、グラフやチャートの作成ができる。
その際、プログラミングスキルは一切必要ない。
Discord:ゲーマー向けチャットツール
CEOのジェイソン・シトロン氏。
Discord
調達額:7930万ドル
ディスコード(Discord)は、ゲーマー向けのチャットツール。ボイスチャットおよびテキストチャットが可能。無料かつ安全で、PCとスマートフォンのどちらでも利用できる。
Gladly:カスタマーサービス用ソフトウェア
Gladly
調達額:6300万ドル
グラッドリー(Gladly)はカスタマーサービス用ソフトウエア。電話、メール、SMS、チャット、ソーシャルメディアなど、どのメディア経由で連絡が来ても、同一の顧客かどうかを認識する。
Frame.IO:投稿前の非公開動画の共同編集を可能に
共同創業者のジョン・トレバー氏(左)とエメリー・ウェルズ氏(右)。
Frame.io
調達額:3220万ドル
フレーム・ドット・io(Frame.io)は、動画編集用の非公開ワークスペースを提供。作業途中の動画やメディアファイルをアップロードし、チームや顧客と共同作業を行うことができる。
Kryon Systems:作業を代行するソフトウエアロボット
Kryon Systems
調達額:1300万ドル
カイロン・システムズ(Kryon Systems)が開発したソフトウエアロボットはAIを搭載。ソフトウエアの実行やオンライン上のタスクを自動化する。
Secret Double Octopus:パスワードを代替
Secred Double Octopus
調達額:750万ドル
シークレット・ダブル・オクトパス(Secret Double Octopus) のソフトウェア、オクトパス・オーセンティケーター(Octopus Authenticator)は、パスワードを使わない安全なログインを実現。
Pymetrics:神経科学を採用に活用、無意識のバイアスを取り除く
共同創業者のフリーダ・ポリ氏(左)とジュリー・ユー氏(右)。
Pymetrics
調達額:1630万ドル
パイメトリクス(Pymetrics)は、ハーバードのMBAを持つフリーダ・ポリ(Frida Polli)氏とマサチューセッツ工科大学(MIT)で神経科学を専攻していたジュリー・ユー(Julie Yoo)氏が創業。
神経科学に基づいたゲームを使って、企業の人材募集、採用活動などから無意識のバイアスを排除する。
Accompany:仕事で出会う人物の情報をリアルタイムで提供
創業者のエイミー・チャン氏。
John Phillips/Getty
調達額:4060万ドル
アカンパニー(Accompany)は、元グーグル・アナリティクスの責任者、エイミー・チャン(Amy Chang)氏が創業。
同社のAIは、ウェブ上に公開されている情報を収集し、3億人を超える人物のプロフィールを構築する。さらに、ユーザーにとって、現在、最も重要な人物を教えてくれる。
[原文:50 startups that will boom in 2018, according to VCs]
(翻訳:Yuta Machida/編集:増田隆幸)