ポイントカード最大手・カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、運営する「Tカード」の会員情報を裁判所の令状なしに捜査当局へ提供していた問題で、CCCは2月5日、一時的に令状に基づく場合にのみ対応すると発表した。この問題が明らかになって以来、ネットでは批判が相次ぎ、Tカードを解約しようとするユーザーが続出している。また、衆議院でも1月23日、この問題をめぐって質疑が紛糾している。
●「基本方針が確定するまで」令状が必要に
この問題でCCCは、報道された1月21日、ホームページで謝罪。即日、「『法令で認められる場合』を除いて、個人情報について、あらかじめご本人から同意をいただいた提供先以外の第三者に必要な範囲を超えて提供はいたしません」と個人情報保護方針を変更していた。
しかし、「炎上」は止まらず、2月5日に大きな変更を発表した。公式ホームページで発表した「お知らせ」では、次のように説明している。
「このたびのTカードの情報に関する報道を受け、弊社は、お客さま情報のお取り扱いに関して、みなさまによりご安心とご納得をいただけるようにするため、お客さま情報のお取り扱いに関する基本方針の再検討を行っております。
つきまして、その基本方針が確定するまでの間は、捜査機関からの要請に対しては、捜査令状に基づく場合にのみ対応することといたします」
ネットではTカードを解約しようとするユーザーが相次いでおり、専門家からもCCCの企業姿勢について批判が寄せられていた。CCCでは、基本方針が決まり次第、公表するとしている。
●警察庁「民間事業者に対し協力を要請する場合はある」
「Tカード」はコンビニなどのさまざまな店舗や企業などで利用可能で、会員数は日本の人口の5割を超える約6700万人で、国民に与える影響は少なくない。この問題は1月23日、衆院でも取り上げられた。
立憲民主党の山尾志桜里議員は警察庁に対し、「2012年にCCCに対して、このように令状なしの個人情報提供を要請したということ自体は事実か」と質問。警察庁は「警察庁からCCCに対し、都道府県警察から捜査関係事項照会書により照会があった場合に必要な回答をいただくため、要請を行った」と回答した。
山尾議員は、「ポイントカードは個人情報、プライバシーの権利としてのリスクが高いという2つの特徴を持っている。どのような検討をしてこういう要請をしたのかなと、大変疑問」と批判。他の事業者にも同じような要請をしたかとさらに質問した。これに対し、警察庁は「一般論として申し上げれば、通信の秘密に該当する事項などの一部の例外を除き、捜査関係事項照会に対して必要な回答が得られるよう、民間事業者に対し協力を要請する場合はある」という回答を何度も繰り返し、質疑が一時中断するなど紛糾した。
一方、山尾議員は国立国会図書館に対しても、「ユーザーの利用図書履歴の捜査機関への情報提供について、国会図書館はいかなる方針を持っているか」と質問。国立国会図書館は、「令状なしの利用履歴の提供に応じたことはなく、今後も同様」と回答。その理由として、「利用した資料名等の利用履歴は、利用者の思想信条を推知し得るものであり、その取扱いには特に配慮を要するものであります。国立国会図書館は、個人情報保護及び国会職員としての守秘義務等の観点から、裁判官が発付する令状がなければ情報の提供はいたしておりません」と説明した。