2月から午前6時~翌午前1時までの「19時間」営業をしている「セブンイレブン東大阪南上小阪店」で、2月と3月の店舗利益が前年同期を上回った。
売上は減ったものの、時短にともなう人件費の削減に加え、3月から「見切り販売」(消費期限が迫った商品を値引きすること)を始めたことで、廃棄額が減った。
オーナーの松本実敏さんによると、店の利益は2月が94万円(前年比43万円増)、3月が109万円(同21万円増)。ただし、ここから従業員の社会保険料や店長を勤める長男の報酬(生前は妻の分)、税金などを払うことになる。
なお、セブンでは非24時間の店舗はチャージ(上納金)が2%増える。現在、松本さんは免除されているが、仮にチャージが加算されれば、利益は各月9万円強減る計算。ただし、それでも24時間営業をしていたときと同等か、それ以上の利益となる。
同店から入手したPL(損益計算書)をもとにコンビニフランチャイズの仕組みを考えたい。
●売上激減でも、利益が増えたワケ
松本さんの店では、時短以前に人手不足で客をさばききれないため、扱う商品を減らしていた。新規の仕入れ額も2月は前年比で119万円、3月は書籍やネット通販の取り扱いがなくなったこともあり、273万円減った。
この結果、2月の売上は115万円減の1495万円(前年比92.87%)、3月が365万円減の1488万円(同80.30%)になった。
一方、時短営業になったこともあり、人件費は2月が41万円減、3月も44万円減と大幅カットに成功した。
また、3月からは見切り販売も開始。コンビニではチャージ計算の際に、売れ残り(廃棄)の仕入れ代は考慮しない。セブンでは本部が廃棄の15%を負担するが、残りはオーナー負担となる。
大手コンビニでは通常、客の求める商品がない「機会ロス」を防ぐため、オーナーは廃棄覚悟で発注するよう指導されることが多い。
一方、松本さんは、仕入れ減と値引きで廃棄を減らすことを選択。結果、3月の廃棄額は前年から12万円減って、14万円で済んだ(うち15%は本部負担)。
「仕入れを減らすことに不安もあったが、これだけ売上が下がっても、ちゃんと利益が出ている。売上が減った分、業務密度も緩和され、余裕ができた。これまで一体何のために人を雇って、忙しく働いていたんだろうと思った」(松本さん)
ただし、仕入れを少なくした分、客足が遠くなる可能性もある。長期的に利益を維持できるかが今後の課題だ。
「見切り販売は始めたばかり。研究してまだまだ廃棄を減らしたい。仕入れ量もスタッフの数や客足を見ながら、臨機応変に考えたい」
●本部「私どもの収益性ではない」
4月4日にあった記者会見で、セブン本部は時短営業を求めている加盟店は96店舗(全体の0.5%)だと発表した。
この点について、テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト(WBS)」の山川龍雄キャスターは、「96店舗しかないなら、(本部の)収益に与えるインパクトは大したことがない。24時間営業を選択制にすれば良いのでは」と質問している。
セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長の答えは、「私どもの収益性というよりは加盟店さんの収益性だと思う」というものだった。
実際、会見ではセブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長も、時短営業のテストをしている直営10店舗で「売上が下がっている」ことを指摘していた。
しかし、本部は加盟店の「売上」が増えるほど儲かるが、加盟店は必ずしもそうではない。チャージを計算するときに、人件費や廃棄は考慮されないからだ。「加盟店の収益性」を考えるなら、「営業費」も念頭に入れなくてはならない。
たとえば、松本さんの例では、売上が前年比で百万円単位で減っているのに、店の利益は増加ないし、横ばいとなった。
一方、本部の取り分は、2月が前年比12万円減の253万円、見切り販売を始めた3月は69万円減の257万円。24時間をやめた際のチャージ2%(9万円強)を考慮しても、減少は顕著といえる。
現状の仕組みでは、本部と加盟店は本当の意味でwin-winの関係になるのは難しい。それぞれが目指す方向は似ているようで違うのだ。そして、松本さんのような例外を除けば、どうしても交渉力の強い本部側に有利になりやすいと考えられる。
本部と加盟店の「共存共栄」を果たす上では、この辺りも再検討する必要があるのではないだろうか。