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親友の夫とキスしたら、全てを親友に目撃され修羅場  
写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

親友の夫とキスしたら、全てを親友に目撃され修羅場  

「友人の旦那さんとキスをしてしまいました」ーー。シングルマザーの女性が弁護士ドットコムに相談を寄せています。

相談者によると、事件は友人家族が遊びに来た日に起きたそうです。「その日はお酒を飲んで、いつの間にか寝てしまいました。夜中ふと起こされ、友人の旦那さんにキスをされたのです。私も寝ぼけたままキスをしてしまいました」と相談者はいいます。

ところが、友人にその様子を目撃され、絶交されることに。友人夫婦は離婚することも検討しているようです。

相談者は、友人の夫と今まで連絡を取ったり、肉体関係を持ったりしたことはなく、まさかの出来事にショックを受けている様子です。

●キスは「不貞行為」にならないけれども…

慰謝料が認められるためには、「不法行為」があったことが前提となります。不法行為は、故意または過失によって、他人の権利を侵害する行為のことをいいます(民法709条)。

では、不倫は不法行為となるのでしょうか。

結婚している人が、本人の意思に基づいて、配偶者以外の人とおこなう性的交渉のことを「不貞行為」といいます。不貞行為は不法行為となるため、不貞行為をおこなった配偶者とその相手に慰謝料を請求することができます。

不貞行為の範囲には、実質的にみて性交と同視しうるような行為(射精を伴う行為やオーラルセックスなど)の性交類似行為も含まれるとされています。

一方、キスやハグをしただけで不貞行為には該当しにくいといえます。ただし、キスをしただけだったとしても、夫婦関係を破綻させたとして、「不法行為」の成立が認められる可能性もあります。

離婚問題に詳しい長瀬佑志弁護士によると、「不貞行為」とは、

(1)性交又は性交類似行為 (2)同棲 (3)上記(1)(2)のほか、他方配偶者の立場に置かれた通常人を基準として、夫婦間の婚姻を破綻に至らせる蓋然性のある異性との交流・接触

をいうものと解されているようです。

「肉体関係があったとは断定できないものの、別居と離婚を要求し、キスをしたことが不法行為にあたるとして、慰謝料250万円としている裁判例があります(東京地判平成20年12月5日)」と長瀬弁護士は説明します。

●キスをしたことで夫婦関係を破綻させたのであれば、慰謝料の支払義務も…

今回のケースでは、相談者は寝ぼけた状態で友人の夫とキスをしているようです。また、キスをしたのも1回きりだといいます。裁判になった場合、相談者は慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。

「キスをしたことが1つのきっかけとなって、夫婦関係を破綻させたということであれば、不法行為にあたり、慰謝料を支払う義務が生じる可能性があります。

ただし、相談者が寝ぼけた状態であり、またキスをしたことも1回だけということが事実であれば、これで婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性があるとまでは言えず、慰謝料の支払い義務までは生じないかもしれません」(長瀬弁護士)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

長瀬 佑志
長瀬 佑志(ながせ ゆうし)弁護士 弁護士法人長瀬総合法律事務所
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか

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