ダウンロード違法化の対象範囲を拡大する著作権法改正案をめぐり、文化庁が自民党の部会で配布した資料について、明治大学・知的財産法政策研究所のワーキンググループが3月3日、「国民の声は正確に与党議員に届けられているのか、疑義がある」として批判する検証レポートを発表した。http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/20190219seimei.html
違法アップロードされた漫画など、あらゆるコンテンツについて、著作権侵害されていると知りながらダウンロードすることを全面的に違法とする著作権法改正案は、自民党の文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議(2月22日開催)で異論が出ながらも、いったん承認されたが、その後も議論が続いて、総務会(3月1日開催)でストップしている。
・検証レポート(基本的な考え方・Q&A関係) http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/20190303kensyou1.pdf
・検証レポート(文化審議会著作権分科会意見概要) http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/20190303kensyou2.pdf
●「立法過程における極めて重大な問題をはらんでいる」
検証レポートは、明治大学知的財産法政策研究所部会資料検証ワーキンググループによるもの。
文化庁の資料について、(1)4人の慎重派委員の意見そのものを省略、(2)2人の慎重派委員の主張の重要部分を省略、(3)慎重派の委員2人の意見の一部だけを切り取り積極派であるかのように誤導、(4)積極派の人数を水増しの処理――をおこなっているとして、(小委員会の)議論の正確な状況が伝えられていないと指摘している。
さらに、これによって、「実際には無限定な対象拡大に積極的な意見は少数派であるにもかかわらず、これが多数派であったような誤解を誘っている」「政策判断を行う上で、審議会における議論の状況を正確に把握すべき立場である与党に正確な情報が提供されていない点は、立法過程における極めて重大な問題をはらんでいる」と批判している。
●研究者や出版社、漫画家も声明を発表していた
いわゆるダウンロード違法化の範囲拡大をめぐっては、知的財産法や情報法の研究者、弁護士らが2月19日、対象の範囲について「さらに慎重な議論を重ねることが必要」「拙速な法改正は、私的領域のおける情報収集の自由に対して過度の萎縮効果を及ぼす」とする緊急声明を発表した。
出版社でつくる出版広報センターも2月21日、海賊版サイト対策の必要性を訴えつつも、「ネットユーザーやクリエイターの表現行為を萎縮させるようなことがあってはならない」「違法化の対象範囲見直しにあたっては、『表現の自由』への最大限の配慮がなされるよう望む」とする見解を出した。
さらに、漫画家でつくる「日本漫画家協会」も2月27日、表現や研究などの萎縮はもとより、人権の制約につながることが決してないように、丁寧で十全な審議を要望する」という声明を発表している。