ニコニコ動画やUstreamなど、誰でも気軽に動画をネット配信できるプラットフォームが広がっている。なかでも撮影した動画をリアルタイムで中継する「生配信」は、小規模なスタイルなら、スマートフォンがあればいつでもできるという手軽さが受けている。
だが、それだけにトラブルも少なくない。先日も東京ディズニーランド内で、覆面マスク姿で生配信をしていた男性が警備員に呼び止められ、謝罪するという"事件"があった。本人の意図はうかがい知れないが、自らを格好の「さらしもの」としてネットの視聴者に提供したかっこうだ。
過去には、お笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが、東京・原宿の路上で生配信中に警察官と口論になり、大きく問題にされたこともある。今後、生配信はより身近な存在になっていくだろうが、公の場所での生中継は、無関係な人をも配信に巻き込むことになる。無用なトラブルを避けるため、気をつけるべき点を三平聡史弁護士に聞いた。
●撮影場所・肖像権・著作権の3点に注意が必要
三平弁護士によると、動画を配信サイトに投稿(アップロード)する時に、注意すべき点(法律・権利)は主に次の3つだという。
(1)その場所が『撮影OK』かどうか
(2)他人の『肖像権・プライバシー権』は大丈夫か
(3)著作権に問題はないか
それぞれ解説してもらおう。
(1)場所
「場所によっては、動画や写真の撮影自体が禁止されます。『施設管理権』(最判平成7年3月7日)の一環として『撮影禁止』となっているお店、建物もあります。よく確認しましょう」
(2)肖像権・プライバシー権
「最高裁の判例(最判平成17年11月10日)では、以下のような基準が示されています。
(例1)人物が特定されない程度→肖像権の侵害には当たらない
(例2)人物が特定されるが一瞬映る程度→『撮影の目的』と『特定の明確性』のバランス次第
(例3)大事故の現場全体→侵害なし
(例4)大事故の負傷した被害者をズームで撮影→侵害あり
このような基準が示されていますが、『判断の不確定性』はどうしても残ってしまいます」
(3)著作権
「撮影しているのが公共スペースであれば、基本的に著作権法違反となることはほとんどありません。また、テーマパーク内のキャラクターやスポーツの試合、銅像・モニュメントなどは、著作権法の対象とならないか除外規定があり、原則的に著作権侵害とはなりません」
では、例えば一般人がJリーグの試合模様を配信できるのだろうか?
「ダメです。(3)著作権侵害には当たりませんが、Jリーグの試合会場は(1)撮影した動画の配信が禁止されています。気軽に配信できるのがネット生配信の良いところですが、だからこそ、こういった『法的注意点』をしっかり押さえておきたいものです」