京都市は4月下旬、倒壊の恐れのある空き家について、建築基準法に基づく「行政代執行」で解体撤去工事を始めた。報道によれば、京都市が行政代執行で空き家を解体するのは初めてのことで、6月8日までに撤去を終える予定だ。
問題の空き家は、延べ床面積約67平方メートルの住宅兼工場で、築65年以上が経過している。市は所有者を探したが、連絡がとれなかったという。約470万円の解体費用は、市が全額負担する。
空き家問題は京都市に限らない。全国的に空き家が増加しており、少子高齢化によってさらなる増加が見込まれる。古いために賃貸には出せず、リフォームしたり更地にするには、少なくないお金がかかる。そのため、きちんと管理する手間と費用をさけて放置している所有者が数多くいるのだ。
京都市で実施された「行政による空き家の撤去」は今後、全国的に広がっていくのだろうか。NPO法人「京都町並み保存協議会」代表理事で、空き家問題にくわしい中島宏樹弁護士に聞いた。
●空き家撤去を認める「新法」が施行
今回、市が行政代執行に踏み切った根拠となるのは、どの法律なのか。
「根拠となったのは『建築基準法』と、いわゆる『空き家条例』(「京都市空き家の活用、適性管理等に関する条例」)です。
解体工事が始まった空き家は,所有者が不明のまま倒壊のおそれのある状態であったため、著しく保安上危険であり、衛生上も有害だといえます。そして、その状態を放置することが著しく公益に反するとして、京都市が行政代執行に踏み切ったという流れです。
今後は、所有者が判明するまで、市で管理を行うこととなります。
一方、今年5月26日に『空き家等対策に関する特別措置法』が完全施行となりましたので、今後はこの法律が根拠となります」
各市町村は、この「空き家等対策に関する特別措置法」に基づいて、危険な空き家の所有者に、撤去や修繕を命令できるうえ、命令に応じない場合は「行政代執行」による強制的な解体・撤去が可能になる。
●全国にある「820万戸」の空き家
今後、京都市以外でも、こうした行政代執行は増加していくのだろうか。
「総務省の調査によれば、全国の空き家総数は820万戸、空き家率は13.5%(いずれも2013年現在)であり、その数は増加の一途をたどっています。法律の施行にともない、京都市以外でも行政代執行が行われていくと思われます。
空き家が放置されると、防災・防犯上の問題があるのみならず、地域社会崩壊の原因となってしまいます。放置の原因は、高齢化、資金不足、人間関係の複雑化などが考えられますが、放置すればするほど、問題は複雑化してゆきます。一刻も早い対策が望まれるところです」
中島弁護士はこのように述べていた。