(社説)秘書企業へ発注 維新「身正す改革」こそ
高市首相率いる自民党と連立政権を組んだばかりの日本維新の会の藤田文武共同代表に、「政治とカネ」をめぐる問題が浮上した。
公設第1秘書が代表を務める会社に、ビラやポスターの印刷などを発注し、税金を原資とする政党交付金や調査研究広報滞在費などから約7年半にわたり、計約2千万円を支出していた。
藤田氏は「実態のある正当な取引」で「適法」だと強調するが、身びいきであり、公金の私物化と見られても仕方あるまい。維新は立党以来、「しがらみのない政治」「身を切る改革」を掲げ、衆院議員の定数削減を迫っているが、まずは自らの「身を正す改革」が必要ではないか。
問題は「しんぶん赤旗日曜版」(電子版)が先週、「身内へ税金還流」などと報じた。藤田氏はすぐに反論を公表したが、今週の定例会見まで、記者の質問に直接答えることはなかった。秘書の会社は実際の印刷を別の業者に外注していたが、利ザヤがどの程度あるのかなど、具体的な契約内容を明かすこともなかった。説明責任を軽んじていると言わざるを得ない。
藤田氏は同紙を「共産党のプロパガンダ紙」と断じ、「報道ではなく政治的主張」などという。確かに同紙は政党の機関紙であるが、安倍政権下の「桜を見る会」や自民党の派閥の裏金をめぐる疑惑を掘り起こすなど、報道機関としての役割を果たしてきたことは紛れもない。
見過ごせないのが、取材した記者の名刺をSNS上で公開したことだ。携帯番号やメールアドレスの一部はぼかしているが、氏名や編集部の電話番号などはそのままだ。記者への個人攻撃や嫌がらせを誘発しかねず、自身に批判的な報道を抑えようという意図が透けて見える。ただちに画像は削除すべきだ。
維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は党の内規を改め、秘書が代表を務める会社などへの公金支出を禁じる考えを明らかにした。法令違反はなくとも、適当ではないと自ら認めた格好だ。
維新をめぐっては、両院議員総会長も務めた石井章前参院議員が9月に、国から秘書給与を詐取した罪で在宅起訴されている。身を切る改革という旗印はかすむばかりだ。
藤田氏は会見で「法的にはどこから切り取っても適正だ」と強調したが、違法でなければよいという姿勢で、国民の幅広い信頼を得ることができるだろうか。連立与党として、政策決定に深くかかわる立場になった。その責任の重さを自覚せねばならない。
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