(社説)高浜原発認可 老朽炉を使い続けるな

社説

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 原子力規制委員会関西電力高浜原発の3、4号機の運転延長を認可した。来年で運転開始から40年経つ両基に、さらに20年の運転を認める。延長はこれで8基に達し、来年には、60年を超える運転への道も開かれる。だが、老朽原発はリスクが高く、使い続けることは許されない。

 高浜3、4号機は1985年に運転を始めた。規制委は、重要設備に問題は確認されていないとする審査結果を了承。関電が計画的に管理すれば2045年時点でも機能は保てると判断した。

 東京電力福島第一原発事故後の法改正で、運転期間は原則40年、1回に限り20年延長可能とされた。当初は延長は「極めて例外的」と説明されていたが、これまでの申請はすべて認可されている。

 さらに、昨年成立した原発推進関連法は、審査などでの運転停止期間を計算からはずして60年を超える運転を可能にする新制度を盛り込んだ。法案づくりでは、岸田政権が数カ月の検討で方針転換を決め、経済産業省主導の日程に押される中で、規制委も制度変更を認めた。事故の教訓である「推進と規制の分離」をゆるがす進め方だった。

 国際原子力機関IAEA)によると、米やスイスの原発が運転開始から54年経過しているが、60年超は「未知の領域」だ。それを地震大国で進めていいのか。原発事故は、国の将来を危うくしかねないことを13年前に思い知らされたはずだ。

 運転延長で、電力会社や利用者に当面の経済的な利点はあるだろう。だが同時に、老朽化のリスクを抱え込む。安全対策の強化や、古い部品の交換はできても原子炉本体は取り換えられない。設計自体が古く、災害など想定外の事態に対して予期せぬトラブルの恐れも増す。

 1月の能登半島地震では、北陸電力志賀原発で外部電源を受ける変圧器の損傷などのトラブルが起きた。周辺では家屋の倒壊や道路の通行不能が相次ぎ、事故時の屋内退避や避難の難しさも露呈した。避難路が限られる地域での住民の不安は高まっている。

 原発は、使用済み燃料の扱いや高レベル廃棄物の処分など未解決の問題も山積する。安全対策の費用が増え、経済性でも再生可能エネルギーへの優位が失われつつある。

 政府は今月、新しいエネルギー基本計画の議論を始めた。事故後に盛り込んだ「原発依存度を可能な限り低減」との方針は、自民党の政権復帰後も保たれてきた。今後もこれを堅持し、老朽原発に頼るような道は避けるべきだ。

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