(社説)消えた郵貯 最大限の返金 実現を

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 郵政民営化前の郵便貯金について、払い戻しの運用が見直される。定期性の貯金で、一定の期間がたつと権利が消えるという規定自体は変えないが、その後の返金に柔軟に応じる運用にするという。貯金は本来、預けた人のものであり、最大限の返金を実現してほしい。

 07年の民営化前の定額貯金などには、今も旧郵便貯金法が適用されている。満期後20年で催告書が発送され、2カ月以内に請求がなければ権利が消滅するとの規定だ。

 催告書の8割は転居などの理由で届かずに返送されているといい、権利が消えた金額は、07年度以降で計2千億円を超える。これまでの運用では、その後の返金は原則、災害や事故など「真にやむを得ない事情」を書類で証明できる場合に限られていた。

 今回、旧郵貯を管理する独立行政法人が、総務省の要請で基準を見直す。来年からは書類での証明を求めず、個々の事情を柔軟にくむようにする。過去に返金に応じなかった事例についても新基準に沿って対応するという。

 旧郵貯法の規定には、長期間の放置で権利関係が不明確になることを防いだり、郵貯事業の運営上の負担を減らしたりする狙いがあったという。だが、口座記録の保存などもデジタル化が進み、一定期間で貯金を消滅させる必要性は、もはや乏しい。

 実際、民間の銀行では、長期間利用がない場合も返金に応じている。民営化後に預けたゆうちょ銀行の貯金も同様だ。5年前に始まった休眠預金を民間の公益活動に活用する制度も、いつでも返金に応じる仕組みになっている。

 郵政民営化の経緯があるにせよ、旧郵貯だけ返金のハードルが高いままだったのは、非常に分かりにくかった。手を打つのは当然だ。

 そもそも、旧郵貯法は、郵貯を「簡易で確実な貯蓄の手段」と位置づけていた。国の事業として幅広く利用を勧めていた歴史も考えれば、民営化による制度変化のはざまで利用者に不便や不利益が生じていたことを、率直に省みるべきだろう。

 新しい基準を作り、運用するにあたっては、返金を可能な限り広く実現するよう工夫が必要だ。総務省も今後の状況を確認し、必要ならばさらに手立てを講じてほしい。

 近年はスマートフォンの普及もあり、様々な金融サービスが身近になってきた。預貯金など資産の状況を定期的に確認することの大切さも増している。自らの財産を守るため、利用者の側も金融についての知識を高めていきたい。

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