妻子失い「ずっと悲しみと生きるしか」がれきになった輪島の自宅跡で
能登半島地震で妻子を失った楠健二さん(56)は1日午後、ビルの解体が進む石川県輪島市中心部のがれきの上にいた。この場所に1年前まで、夫婦で営む居酒屋「わじまんま」と自宅があった。
「割れたグラスが見えたからさ。ここにわじまんまがあったんだなって、改めて思ったな」
隣接する7階建てビルが地震で倒れ、自宅兼店舗が下敷きとなった。妻の由香利さん(当時48)と長女の珠蘭(じゅら)さん(当時19)が亡くなった。
この日、楠さんは次女とともに現場を訪れ、線香に火をつけ、しゃがみこんで手を合わせた。
由香利さんには「苦しめてごめん」、珠蘭さんには「絶対助けてやるからなって言ったのに、ごめん」とわびた。がれきに挟まれた2人は、楠さんの目の前で息絶えた。手を合わせるときはいつも、同じ言葉で謝っている。
地震後、かつて家族で暮らしていた川崎市に次女や次男と転居した。
元日は輪島に行こうと思っていたが、2日前の12月30日に40度を超える熱が出た。
「天国の女房と娘がさ、行かなくていいよって言ってんじゃねえかなって思った」という。
それでも体調と相談し、家族の思い出が詰まった場所に帰ってきた。
「命日だから、そこにいなきゃいけないっていうのは当然。来てよかったよ」と語る。
あの日から1年。
「これからも、どれからも、何もなくて、当然このままずっと、この悲しみを抱えながら生きていくしかない」とこぼした。
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