記憶できずとも記録を 認知症の女性、綴った思いは段ボール2箱分
福岡市でひとり暮らしをする女性(76)がベルトからぶら下げているリールの先にはメモ帳がついている。
きっかけは10年以上前にさかのぼる。
「鍵がない」「財布がない」と1時間捜し、気がつけば手に持っている――。そんなことが続いた。
自分の生活を近くで見ていてくれる人はいなかった。不安感から心療内科に通い始めた。
ある通院の日。いつもの場所に病院が見つからない。周りをぐるぐる歩き、あきらめて帰宅する頃には日が暮れていた。
「移転したのに伝えないなんて」。病院に電話をかけた。だが、病院は移転していない。担当医が異変を感じ、総合病院で「アルツハイマー型認知症」と診断を受けた。当時は60代半ば。学習塾講師の仕事を辞めた。
その日の出来事を思い出せず、ぼーっと過ごす日が増えた。約束をしてもすっぽかす。電話をしても言葉がうまく出ない。できないことばかりが目につき、外出は減った。
ふさぎ込んでしまった女性は、ノートをつけることで自分を取り戻しました。女性がノートにたどり着くまでや、綴る際の工夫を紹介します。
たどり着いた「記憶ノート」 再び足は外に向いた
生きている実感が欲しい――…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら