登場人物700人超、不倫も復讐も 「韓ドラの原型」世界初の完訳
韓国を代表する大河小説「土地」が今年、日本語に完訳された。日本による植民地下の庶民の暮らしを描いた、全20巻に及ぶ大長編だ。著者の朴景利(1926~2008)は女性。男性作家が主流だった時代に、主体的な女性を主人公に描いた。ノーベル文学賞に決まったハン・ガンらへと至る韓国の女性文学を切りひらいた。
「『土地』を翻訳しながら何度も泣きました」「最後に涙を浮かべたのは今年の5月末、翻訳原稿の最後に(了)と打ち込んだ時でした」
10月19日、韓国南部の港町・統営。日本から訪れた約30人の読者らが、「土地」の日本語版を手に、朴景利の墓地を訪れた。墓前で作品への思いを語ったのは翻訳者の清水知佐子さん。吉川凪さんとともに9年間にわたって翻訳に取り組んだ。
支配された側の普通の暮らし 魅力的な物語を通じて描く
「土地」は、1897年から1945年8月までの朝鮮半島などが舞台。上流階級出身の西姫(ソヒ)という女性を主人公に、総勢約700人のキャラクターが登場。身分違いの恋や不倫、財産の奪い合いや復讐(ふくしゅう)といった濃厚な人間ドラマが描かれ、これまで3回にわたってテレビドラマ化され、教科書にも掲載されている。
日本では1980年代に福武…