「日本」とは何か、問い続けた網野善彦 没後20年に読み直す意義

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大内悟史
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 戦後の歴史学を主導し、新たな日本史像を描き出した歴史学者・網野善彦の死去から20年。今年3月までに主著「中世荘園の様相」と「日本中世の非農業民と天皇」(上・下)がともに岩波文庫で出版され、「無縁・公界(くがい)・楽」増補版など平凡社ライブラリーの各著作も再び注目を集める。「網野史学」の重要な舞台の一つは、被災した能登半島だ。網野と同じ日本中世史の専門家2人に、いま網野の著作を読む意義を聞いた。

     ◇

 明治大教授の清水克行さん(52)は網野本人と接した最後の世代。1990年代に学生時代を過ごし、わずかに生前の網野と言葉を交わしたことがある。「誰に対しても分け隔てない豪放磊落(らいらく)な人柄が印象に残っている」

 清水さんは当時を「昭和から平成へと天皇の代替わりがあり、天皇の存在をいや応なく意識させられる時代状況があった」と振り返る。「戦争責任を問う左派と戦前を肯定する保守派。そうした緊張関係のもとで網野さんは中世以来の海の民や山の民、芸能民などの非農業民と天皇の関係を論じた。天皇の歴史的なあり方を網野さんのような視点で語る人は他にいなかった」

 清水さんは、網野の主要著作の時代背景には、高度成長下で起きた地方農村の衰退と生活スタイルの都市化をふまえる必要があると指摘する。

 「網野さん自身、日本各地で農村の変容を目の当たりにしており、民俗学文化人類学の発想もあった。地震に見舞われた能登半島もその舞台の一つだった」

自由な中世像 2000年代以降に転機 

 網野は神奈川大学日本常民文…

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この記事を書いた人
大内悟史
文化部|論壇・読書面担当
専門・関心分野
社会学、政治学、哲学、歴史、文学など