第6回「日本人の認識以上」の偉業 小澤征爾さんはなぜ米国で愛されたのか
米国の5大オーケストラの一つとも言われるボストン交響楽団で、小澤征爾さんは29年間にわたり音楽監督を務めた。その意義は「恐らく日本の多くの方が認識しているよりも非常に大きなこと」と、米国文化研究者でハワイ大教授の吉原真里さん(55)は指摘する。
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私は研究で主にアメリカを活動の拠点とするアジア系のクラシック音楽家たちにインタビューしていますが、現代の彼ら彼女らにとって小澤さんは夢と希望を抱かせてくれる存在だったと強く思います。「小澤さんがあのように世界的な活躍をして芸術家にも聴衆にも愛されているのだから、自分にもできるのでは」と。そんな言葉を何人もの音楽家から聞きました。
アメリカオーケストラ連盟のデータによると、現在の全米のオーケストラで、音楽監督を含む指揮者を務めている人のうち、11%がアジア人。全米の人口に占めるアジア人は約6%ですから、大きな比率です。このような状況は小澤さんがキャリアを築き始めてから20年くらいは想像もできなかったことでしょう。
小澤さんの国際的なキャリアは、日本の高度経済成長の時期と重なります。ニューヨーク・フィルの副指揮者に就任し、バーンスタインのアシスタントとして初来日ツアーに同行したのが1961年。日本の急成長の波に乗っかった、というよりは、その波の一部だったと思います。
その後、ニューヨーク・フィ…