目的は「敵の襲来察知」 全数信仰の弊害も コロナ定点報告どう見る
新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行し、感染者数や死者数の公表の仕方が変わりました。どんな課題があり、今後、どのような点に注意していくべきか。感染症疫学やサーベイランスに詳しい、国立病院機構三重病院院長の谷口清州さんに聞きました。
――新規感染者数の公表が定点サーベイランスに変わりました。
軽症から重症者まで、新型コロナの症状は幅が大きいため、全ての感染者を数えることは不可能、かつ非現実的です。
定点サーベイランスとは、単に全数届け出を縮小するという意味合いのものではなく、役目は「敵の襲来を早く察知する」ことにあります。
実際の報告数を問題にするのではなく、流行の始まりや増加速度、流行規模、そして収束という流行のトレンドを探知することが目的なのです。
全数把握、全数報告のなごりがあって、報告する医療機関が増えれば増えるほど良いと誤解されがちですが、実は増えるほど、質は落ちます。「全数信仰」の弊害といえます。
増えるほどに落ちる信頼性
――なぜ、医療機関数が増えると質が落ちるのですか。
医療機関が多いと、多くの医師、つまり普段あまり感染症を診ない医師らにも報告をお願いすることになります。
検査する基準や考え方、報告する基準が異なってきて、過剰な報告となったり、逆に報告率が落ちたりします。
特に、現状のように軽症例が増えると、報告される患者さんの質に差がひらき、どのような患者さんをカウントしているのか、よりわからなくなります。
また、そもそも検査をしないと感染はわかりません。受診しない、検査を受けない人もいる。誰にも実際の感染者数がどれだけか、わからないわけです。医療機関数が増えるほど、こうした信頼性が落ちてしまうのです。
――定点の良さは。
信頼できる少ない医療機関にお願いするので、症例定義に基づいた、確実な情報が集まりやすくなります。
三重県では、2020年秋から定点サーベイランスをしてきました。定点当たりの患者数と全数届け出数は比例し、地域の流行状況が反映されるとわかっています。
データの蓄積から、三重県では定点当たり30人だと、週あたり患者数が約2万人、つまり1日平均3千人弱くらいといえます。
「いかに伝えるか」が大事なのに
――流行の目安として、推計患者数を公表してほしい、という意見があります。
定点当たりの数字を聞いても…
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