俳優や音楽家らでつくる日本芸能従事者協会(森崎めぐみ代表理事)は8日、東京都内で会見し、AI(人工知能)によって芸術・芸能の担い手が職を失う可能性が大きいとして、権利を守るための法整備などを求めた。
「数日の撮影で姿形と動きがスキャンできて、どんな年代、性別にも合成できると聞く。このまま突き進むと完全に需要がなくなる恐怖」(俳優)、「危険だからとAIばかりを使って人手を減らされたら、技術は継承できなくなり、現役のスタントマンは死活問題になる」(スタントマン)。会見では、AIに対する現場からの懸念の声が紹介された。
佐藤大和弁護士は文書を寄せ、今後は実際に実演家が演じなくても、彼らの肖像や声を使って「自動的に映画、ドラマ、歌唱、アニメなども生成される可能性がある」として、実演家の姿や声、動きなどに関する権利を法律で明文化した上で特別な保護を与えたり、AIが生成に使ったデータについてクリエーターらに適切な対価を還元したりするための法整備の必要性を訴えた。
映画監督の深田晃司さんは、AI技術の進展について「映画業界は俳優もスタッフも監督もフリーランスの立場で関わっている中で、その不安定さがより加速化していくのではないかと懸念している」と話した。
音楽業界でもAIに関する議論が活発化している。日本音楽著作権協会(JASRAC)は3月、AI生成楽曲と著作権についてのシンポジウムをオンラインで開いた。
音楽プロデューサーの今井了介さんは、人間とAIの差が縮まってくることは間違いない、とした上で「自分を完全にコピーしたAIを他の方が使って自分と同じ曲を書けるようになる。学習速度によっては(コピーした)AIに先を越されることもある」と不安を語った。
また、アーティストへのリスペクトが維持されるかについての議論では、元アップル米国本社副社長の前刀禎明(さきとうよしあき)さんが、多くの人が曲を簡単に作れるようになることで、逆にプロのアーティストへのリスペクトが高まる、と主張。一方で、シンガー・ソングライターのMayu Wakisakaさんは「頑張って生身で作っても、あまりリスペクトは得られなくなる」などと話した。
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