いまどき「好いとうよ」とは言わない 博多弁の「悲報」を読み解く

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伊藤隆太郎
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 50歳を過ぎ、転勤で離れていた郷里・福岡へ戻った。身にしみるのが九州方言のなつかしさだ。

 なかでも幸福に包まれるのが、街で耳にする博多弁。地元のテレビやラジオのトーク番組も楽しい。

 ところが、ここで遭遇した問題がある。

 いまどきの高校生や大学生は「好いとうよ」とは言わない、というのだ。

筆者=伊藤隆太郎

 地元タレント・山本カヨさんと同じ、1964年福岡県生まれ。若田光一さんとたまたま同期の九州大学大学院卒。89年に朝日新聞社に入社後、熊本支局、西部本社(福岡)など九州で9年間を過ごし、東京本社のAERA編集部に異動。科学医療部などを経て昨年、23年ぶりに福岡へ戻り、郷里の変容ぶりに驚きつづける日々。

 ネットでも衝撃をもって受け止められ、「悲報!」との叫びも聞かれる。

 さまざまなサイトから声を拾うと、こんな感じである。

 「好いとうよは、あまり使いません」

 「口にする人はほぼいない」

 「残念ながら、言ってる人は見たことがありません」

「おばあちゃんしか言わない」

 この問題は、テレビのバラエティー番組などでもたびたび取りあげられていた。

 出演者から「若い子は言わない」「実際、言ったことない」などの声があり、なかには「おばあちゃんしか言わない」とか、「食べ物などには使うが、人には言わない」などの解説も。

 もはや「実際は使わない」という現実は、ほぼ確定的といえる。まさに「悲報」ではないか。

 そもそも博多弁は、「告白されたら嬉(うれ)しい方言」といった調査でも、決まってトップ級を確保する。

 「標準語で言われた時よりも何倍もよろこびを感じる」「イントネーションにドキッとしてしまう」といった共感の声は多い。ところが、そのキラーワードが幻想というわけだ。

 では、いまどき世代は何と言って告白するのか。

 これもネットの意見を採録すると、どうやら「好きっちゃん」または「好きやけん」が主流らしい。

言語研究者の見解は

 ここはぜひ、研究者の見解を聞きたいところ。

 しかし、こんなさまつな話題にまともに取り合ってもらえるだろうか。

 おそるおそる申し込むと、福岡大学の江口正教授から、思いがけずも「いいテーマです」と、ありがたい反応が。

 なんとこの問題に関心を持ち…

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