元警官「神奈川県警の全てでやってると思う」遺体搬送巡る収賄で証言

土屋香乃子
[PR]

 警察で扱う遺体の搬送を巡る贈収賄事件の公判が15日、横浜地裁であった。受託収賄の罪に問われた神奈川県警大和署元警部補、加藤聖被告(48)は初公判で起訴内容を認め、検察側は懲役2年6カ月を求刑。一方、贈賄の罪に問われた葬儀会社「林間葬祭」の実質的経営者、河合恵子被告(60)と、夫で宮前署元警部補の博貴被告(65)に対して、青沼潔裁判長は懲役1年6カ月、執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)の有罪判決を言い渡した。

 起訴状によると、加藤被告は大和署で検視を担当していた2019年3月~20年1月、署で扱う遺体の搬送先として遺族に林間葬祭を優先的に紹介してほしいと河合夫妻から依頼を受け、現金127万円とクオカード計68万5千円分を受け取ったとされる。

 加藤被告の公判で検察側は「警察官の職務に対する社会の信頼を失墜させた」と指摘。弁護側は「現金収受は受動的だった」として執行猶予を求めた。

 河合夫妻の公判で青沼裁判長は「警察に対する社会の信頼は相当に害された」としたが、2人が罪を認め反省していることなどから執行猶予付き判決とした。

「私がいた6署全てであった」供述

 葬儀会社から警察への金券の提供について、加藤被告は被告人質問で「私がいた6署全てであった」と供述。神奈川県内には全54署あり、「全てでやっていると思う」とも述べた。

 弁護側から事件の経緯を問われた加藤被告は「博貴さんから『どうしても頼むから助けてくれ』と何度も電話を受けた」「捜査1課でお世話になった先輩なので断れなかった」と述べ、河合夫婦の葬儀会社を使うよう部下に頼むための飲み代として月10万円を博貴被告に求めたという。弁護側は「かねてより葬儀会社から県警にビール券を渡す慣習はあった」と指摘した。

 県警監察官室は、葬儀会社によるビール券などの提供の有無について「公判において被告人等が申し立てた事項についてコメントは差し控えますが、現在同種の案件で調査している事項はありません」としている。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません