いきもの目線:ネコ科最大最強のアムールトラ 四つ子は愛嬌たっぷり

竹谷俊之
【いきもの目線】アムールトラ@浜松市動物園=2021年12月17日、竹谷俊之撮影
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 今回の「いきもの目線」は、ネコ科最大の動物であるアムールトラを紹介する。大きなオスの体重は300キロを超え、ヒグマを倒す力もあるという「最強のトラ」だ。その子どもたちを360度カメラで撮影すると、愛嬌(あいきょう)のある表情をみせてくれた。

 アムールトラはシベリアトラとも呼ばれ、中国とロシア国境沿いのアムール川流域の森林地帯に生息。繁殖期や子育ての時期以外は単独で生活する。野生ではシカやイノシシ、時にはヒグマも捕食することもある。ネコ科の動物は水が苦手だが、アムールトラは水浴び好きで、泳ぐこともできるという。

 撮影に協力してくれたのは、浜松市動物園静岡県浜松市)。2021年2月、ソーン(父)とローラ(母)の間に4頭の赤ちゃんが誕生した。それからわずか1年足らずで、大きな子トラは体重が約70キロになるまで育っている。

 同園では、奇数日にソーン、偶数日にローラと子トラを展示している。昨年12月中旬の撮影当日はソーンがメインの展示日。午後3時過ぎから、お目当ての子トラがローラと一緒に展示場に出てくる予定だった。

 飼育員の川崎大輝さんがソーンをバックヤードに戻し、展示場に手作りの木製撮影台をペグで固定してカメラをはめ込もうとしたところ、ポツポツと雨が降り出し、雷まで鳴り出して、撮影はいったんお預け。子トラの姿をカメラに収められるかどうか気をもんだが、午後4時に雨がやみ、閉園までの約30分間で撮影をすることができた。

【動画】浜松市動物園の飼育係がアムールトラを解説=竹谷俊之撮影

 運よく、1頭の子トラが撮影台に気づき、近寄ってきた。顔を近づけるとすぐにレンズフィルターをなめ始めた。他の子トラたちも近寄ってきて、代わる代わるなめまわしたり、前脚を伸ばして猫っぽいしぐさを見せたり。愛らしい子トラに囲まれるという貴重な映像を撮影できた。ただ、これまで数々の生き物を撮影してきた木製撮影台は、子トラたちの遊び道具としてかじられて役目を終えた。

 川崎さんによると、野生のトラは9亜種存在していたが、現在は6亜種(ベンガルトラ、アムールトラ、アモイトラ、スマトラトラ、インドシナトラ、マレートラ)で、カスピトラ、ジャワトラ、バリトラはすでに絶滅、アモイトラも絶滅した可能性が高いとの報告があるという。

 野生のアムールトラは現在、約600頭が確認されているという。環境破壊や密猟などで減少し、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種(EN)に指定されている。国際的な種管理計画のもとで、世界中の動物園が繁殖に取り組んでいるという。

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