新型コロナウイルス禍の中、一風変わった取り組みで逆境を乗り越えようとする飲食店が増えている。「お手伝いボランティア」で飲食無料、提灯(ちょうちん)の下で会食、住宅地への出張営業……。新たな変異株「オミクロン株」の脅威も迫る中、忘年会シーズンを迎える。客を取り込もうと奮闘する店を追いかけた。
片付けやテーブル清掃手伝えばタダに
12月上旬の平日夜、東京・六本木の居酒屋「肉汁水餃子(ぎょうざ) 餃包」。満席の店内で「お手伝い」と書かれた札をぶら下げたエプロン姿の男性が走り回っていた。
コンサル業の土戸悠生さん(24)。店が11月から始めた「お手伝いで0円食べ飲み放題プラン」の利用客だ。最大2時間の予約制で、食器の片付けやテーブルの清掃などを「ボランティア」として手伝う代わりに、無料で飲食ができる。
土戸さんは「おいしい食事もできる上、店の力になれるのはうれしい」。手伝いの合間を縫って、入り口付近のカウンターで熱々の水ギョーザを味わった。
運営会社の坂田健代表(39)によると、導入のきっかけはアルバイト不足だ。コロナ禍前に約20人いたバイトは半分以下に。10月下旬からの通常営業再開を前に、飲食店同士でバイトの争奪戦になっていることを報道などで知り、「お手伝い」プランを考案した。
利用して店の雰囲気を気に入ってバイトを始めた人も。「コロナ下だから生まれた工夫。忘年会シーズンなのでピンチをチャンスに変える気持ちで、前向きに乗り切りたい」と話す。
スタッフが実験繰り返し
東京・大手町の日本旅館「星のや東京」は10月から、宿泊客と宿泊客が招待した客に向けて「東京・提灯(ちょうちん)会食」と名付けたコースを提供している。京都の職人がつくった提灯型の仕切りで、マスクを外して会話を楽しみながら食事できるようにした。
提灯は、直径75センチ、高さ102センチで首から上はすっぽりと覆われる。顔が見えやすいように透明の薄いビニール製で電球が備わっている。複数のスタッフで実際の会食に近づけた実験を繰り返し、着席・離席の仕方、食事提供の方法などを修正したという。旅館の予約状況は、昨年ほどの落ち幅ではないものの「引き続き厳しい状況が続いている」。一方、11月には数組が利用し、「久しぶりに相手の表情を見て食事を楽しむことができてうれしかった」などの声が寄せられ、12月にも予約が入っているという。
広報担当者は「食事の場をより楽しくする体験を提案したかった。集まった人々と気兼ねなく食事や会話をして、親睦を深め、信頼関係を築くという会食本来の目的を楽しんでほしい」と話す。
「宅飲み」の需要を見越した動きもある。
「宅飲み需要」に応えるために
東京都千代田区の「Mell…
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