日大元理事ら背任罪で追起訴 田中理事長の立件は現時点で見送り
日本大学板橋病院をめぐる背任事件で、東京地検特捜部は16日、医療機器などの納入で日大に約2億円の損害を与えたとして、日大元理事・井ノ口忠男(64)と医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」(大阪市)の前理事長・籔本雅巳(61)の両容疑者を背任罪で追起訴し、発表した。建て替え工事の設計・監理業者の選定に関する最初の起訴分と合わせた日大の損害の総額は約4億2千万円となった。
特捜部は医療機器などの納入に関与した会社役員・吉田徹也容疑者(50)も在宅起訴した。
井ノ口容疑者は一連の取引の「お礼」として田中英寿理事長(74)夫妻に計7千万円を渡したと供述したが、特捜部は田中氏が資金作りの仕組みまで認識していたとは言えないと判断し、現時点での背任罪での立件は見送ったとみられる。
発表によると、3容疑者は板橋病院に医療機器と電子カルテ関連機器を納入する取引で、籔本容疑者側の無関係の2社を不必要に介在させ、今年3月と5月、2社の利益として計約2億円を上乗せしたリース契約を日大に結ばせて損害を与えたとされる。
関係者によると、籔本容疑者側の会社から井ノ口容疑者の知人の会社には計約7千万円の送金が予定されていた。約2700万円が振り込まれた後、特捜部の捜索を受けて残りの送金は中断したという。
建て替え工事をめぐる最初の事件では、評価点を改ざんして選定した都内の設計業者から籔本容疑者のペーパー会社に対し、2億2千万円の日大資金が2020年8月に流出したとされる。その後、6600万円が井ノ口容疑者の知人の会社に送金されたという。