2018年6月に成立した働き方改革関連法は「同一労働同一賃金」が目玉の一つでした。昨年4月施行の改正労働者派遣法で、派遣労働者の待遇を決めるルールも大きく変わりました。ただ、派遣会社が間に入る仕組みが複雑で、すっきりしない現実もあるようです。
同僚より授業多いのに8万円の差
「こんなに基本給が違うのか」
2019年夏、大妻中学高等学校(東京都千代田区)で英語講師をしていた米国籍の40代男性は、同僚の給料を知って驚いた。
男性は18年10月から働いていた。ただし、雇用主は職場の学校ではなく、語学学校を運営するバークレーハウス(東京都千代田区)から派遣されていた。
男性の基本給は月27万円。一方、同じネイティブでも直接雇用の同僚の基本給は8万円多い35万円だった。男性は「同僚よりも週2コマ多く担当し、帰国子女向けの特別授業も受け持っていた。派遣なので差があるとは予想していたが、あまりの金額差にショックを受けた」と話す。
そのころ、日本で「同一労働同一賃金」の法律が施行されることを知った。
安倍晋三・前首相が「同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と宣言した働き方改革関連法は18年6月に成立。労働者派遣法も改正され、20年4月から施行されることになっていた。
男性は19年末ごろから学校側に「同一労働同一賃金」について相談するようになった。「そのことをきっかけにいやがらせを受けるようになった」と男性はいう。
「労使協定あるので」
20年2月ごろには派遣元にも相談。すると「労使協定があるので派遣先との待遇差があっても問題にならない」という返答だった。
バークレーは20年12月、男性の勤務態度に問題があったとして休職を命令。今年3月末で契約を終了した。
男性は4月、バークレーと学校を相手取って、復職と未払い賃金などの支払いを求めて労働審判を申し立てた。
朝日新聞の取材にバークレーは「労働審判は非公開の手続きであるため、回答は差し控える」。大妻側は「派遣元会社から派遣講師に関して労使協定方式が適用されるとの通知を受けていたため、派遣講師に対して派遣元会社と待遇交渉をするよう説明していた。係争中の事案であるため、詳細な主張については労働審判手続きの中で述べる」としている。
派遣専用に二つの方式
日本の「同一労働同一賃金」…