「必ず座れる」湘南ライナー、12日に終了 新特急へ

秦忠弘
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 小田原と東京を結び、「必ず座れる定員制の通勤電車」として人気があったJRの「湘南ライナー」が12日で運行を終える。これに伴い、15日から小田原―東京間などで新たな特急「湘南」の運行が始まる。

 湘南ライナーは旧国鉄時代の1986年に通勤ライナーとして運行が始まった。横浜、川崎の両駅にはとまらず、乗車券のほか座席数の分だけ販売されるライナー券を買うと乗車可能。都心に向かう通勤客の人気を集めた。現在、小田原―東京間を約1時間半かけて、平日の朝に上り6本、夜に下り9本が走る。ライナー券は当初300円だったが、現在は520円になっている。

 湘南ライナーのほか、小田原―新宿間で平日朝に上り3本が走る「おはようライナー新宿」と、平日夜に下りが2本走る「ホームライナー小田原」も12日に廃止となる。

 新特急「湘南」は平日に小田原―東京、小田原―新宿間を走る。乗車券のほかに特急料金(660~1280円)が必要だ。

長年愛用の客「仕事する活力くれた」

 「ライナーがなくなると聞いた時はショックだった」。神奈川県藤沢市在住で、東京・新橋の食品商社に勤める河西洋二さん(60)はそう話す。同市に育ち、就職してすぐに地元・藤沢駅から湘南ライナーを利用し、新橋まで通った。昨年、定年退職し、再雇用で同じ会社に通っている。

 ライナーの魅力は必ず着席できることだという。「昭和サラリーマンの典型で、CMにあったように『24時間戦えますか』という感じだった。毎日のように終電で帰り、朝早く満員電車に揺られて通った。それがライナーの登場で毎朝座れることが保証され、一眠りできた。会社で仕事する活力を与えてくれた」

 当初は藤沢から新橋まで300円の追加券で乗れた。月間通し券が販売される日、藤沢駅などには徹夜で並ぶ人たちの行列ができた時期もあったという。

 コロナ禍の影響で、河西さんも週1、2日は在宅勤務。乗る機会は減っていたが、「ライナーに助けてもらったから、三十数年、東京勤めを続けられた。今までありがとう」。

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