ジャック・マーさん「神隠し」 巨大ITが侵した聖域

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編集委員・吉岡桂子
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 なにはともあれ、ほっとした。

 中国のIT大手アリババ集団の創業者で最高実力者、馬雲(ジャック・マー)さんが20日、88日ぶりに公の場に現れた。農村の教師への慈善イベントにオンラインで参加する姿が確認されたのだ。中国の金融監督行政を批判した昨年10月の講演の後、消息が途絶えた。傘下の企業の上場も、予定の2日前に突如、延期になっていた。

 馬さんの「神隠し」――。

 習近平(シーチンピン)国家主席の名前に触れながらの批判が激怒されたとして、当局による拘束までささやかれた。隠されたか、隠れたか。真相は闇の中。ただ、この「88日間」に中国当局から発せられたのは、大きくなりすぎたアリババに対して増長を許さないという強いメッセージだ。デジタルが経済の中枢を担うようになり、事業の質が中国共産党の権力の聖域を侵し始めたのだ。

 私にとって馬さんは特別な存在である。

 上海特派員として赴任した2003年、初めて単独で取材した中国大企業のトップだからだ。いや、当時は創業4年の新興企業。本社がある浙江省杭州だったと思う。緊張して会話が深まらず、記事にはならなかった。その年に流行した新型肺炎SARSによる「巣ごもり需要」でネット通販に弾みがつき、アリババも日本企業との取引に期待を高めていた時期である。

 馬さんは共産党員だが、当局のいいなりだったわけではない。

 たとえば、スマホを使ったQ…

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