第19回内閣人事局で強まった菅氏の力 「設計者」の想定超えた
「未完の最長政権」第1部第19回
2014年に生まれた内閣人事局は、官僚人事に対する首相官邸の力を決定的に強めた。原案ができたのは福田康夫政権だった08年の自民、民主の与野党協議だ。当時、参院議員として民主党の交渉当事者だった慶応大教授の松井孝治は言う。「幹部人事600人を人事局が取り扱うという淵源(えんげん)はこの時にある」
松井によると、公務員制度改革の担当相だった渡辺喜美は、人事担当の閣僚を置く内閣人事庁を構想していたが、首相による官僚の人事権掌握をめざしていた与野党協議のメンバーは「内閣人事庁のような大きな組織はいらない。小さな組織で、首相、官房長官の直下に作ろう。これは効くよ」と一致。内閣官房、すなわち官邸に内閣人事局を作ることにした。
人事局が審査対象とする範囲について、自民側は「人事局で判断すべきは数十人程度で十分」と考えたが、松井ら民主側が「例えば財務省主計局次長など、局長以下でも政治が判断すべきポジションはある」と提案。最終的に局長より下の審議官なども含めることになる。「政治主導」を金看板に掲げていた民主党のDNAが組み込まれた。
第2次安倍政権で官房長官だった菅義偉は人事局をフル活用し、官僚を掌握した。ただ、松井の想定を超えて、菅は力を持った。
プレミアムA「未完の最長政権」
「1強」と呼ばれた安倍政権は、強い官邸をめざした改革の到達点だった。しかし、それは後手に回ったコロナ対応の遠因にもなった。安倍政権の内実に迫る長期連載です。
人事局はあくまで、その職に…
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