質の高いコンテンツを効率よく生産するための戦略とワークフロー(後編:コンテンツ作成のツールとワークフロー)
それなりの規模で、コンテンツの質を確保し、測定可能な成果を生み出す方法を伝えるこの記事は、前中後編の3回に分けてお届けしている。最終回となる今回は、コンテンツを外注する場合と自作する場合について、役に立つツールやサービスと、ワークフローについて見ていこう。→まず前編と中編を読んでおく
質の高いアウトソーシング
質の高いコンテンツのそれなりの規模でそろえようとする上で最も難しいのは、コンテンツを外注すると同時にその質を保証する部分だ。もちろん、このプロセスの管理担当者は必要だが、実際にコンテンツをアウトソーシングするにあたって、作業をぐっと楽にしてくれるプラットフォームを紹介しよう。
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99Designs 日本向けあり
あなたのプロジェクトのために大勢のクリエイターが競うとしたらどうだろう? 全員に完成品を提出してもらい、いちばん気に入った作品を出した人を勝者に選ぶのだ。これが比較的安価に実施できるとしたら? そういうことをやってみたいという人なら、99Designsを気に入るだろう。
99Designsのネットワークは、アプリケーション、ウェブサイト、ブランディング、書籍などのデザインに対応している。当然、プロジェクトの提示額が高くなるほど、協力を得られる専門家の質も上がる。デザインコンテストには気が進まないのであれば、99Designsには「1-to-1プロジェクト」 モデルがある。
これに対して、デザイナーのポートフォリオサイトであるDribbbleは、1対1のプロジェクト専門だ。スキルと居住地に基づいて条件に合うデザイナーを検索し、デザイナーの作品と依頼可能かどうかを確認したうえで、コンタクトをとってプロジェクトを提案できる。
ただ注意しよう。サイトにあるすばらしい作品を眺めていると、知らないうちに何時間も過ぎていることがある。
コンテンツのマーケットプレイス
今回の記事から学ぶものがあるとすれば、あなたのコンテンツプロジェクトを喜んで引き受けてくれる質の高いクリエイターたちが存在するという事実だ。
さほど質が高くない執筆者から5ドルの記事を購入することもできるし、New York Timesに署名記事を書いている人々に、数百ドルを出してすばらしい文章を書いてもらうこともできる。
- Contently ―― 高品質を志向するコンテンツのマーケットプレイスなら、ワークフロー管理ツールと編集作業のスケジュール管理ツールを提供している。こういったツールがあると、作り手とパブリッシャーがつながり、それぞれのコンテンツ管理システム(CMS)へ直接接続できる。ところが、Contentlyはそれだけでなく、コンテンツ配置についての分析を提供してくれる上、プラットフォーム自身がデザイナーを擁している。「inurl:.contently.com intitle:stories for [キーワード]」という検索クエリを使えば、あるテーマに関してContentlyにどんなポートフォリオがあるのか、登録することなく大枠をつかむことができる。
Skyword ―― Skywordは、Contentlyと大差ないが、業種や取り扱うサイトの数によっては、こちらのほうがやや低コストで始められるかもしれない。SkywordはSEOへの関心が非常に高く、キーワード調査ツールが組み込まれている。また、BigStockと統合されており、ライセンスされた画像を簡単に追加できる。
Newscred ―― Newscredは、コンテンツの品質も、提供しているワークルロー管理ツールも、ContentlyやSkywordに似ている。ただ、Newscredの独自の強み(USP)は、二次使用のためのコンテンツライセンスの扱いにある。また、TaboolaやOutbrainなどの有料プロモーションツールが組み込まれている。
これらのプラットフォームは、どれも実用的なコンテンツソースだ。違いは微妙だが、どれが自分のケースに最適なのかを判断するのは、あなただ。
CopyPressは、手軽にコンテンツを作るには間違いなく最高のマーケットプレイスだ。単なるコピーライティングから質の高いインタラクティブなコンテンツまで、厳選されたコミュニティを駆使してすばらしいコンテンツを作り出す。これまで紹介してきたツールはサービスへの登録が必要だが、CopyPressのコンテンツは1回限りの購入が可能だ。
作成して公開するコンテンツの量によっては、コンテンツがオリジナルなものであることを確認するためにウェブを調査するリソースがないこともあるかもしれない。PlagTrackerは、コンテンツがオリジナルだと確認するためのツールだ。
APIもあるので、PlagTrackerによる確認をプログラム的に処理することも可能だ。
量が多くなると文法のチェックも容易ではない。Grammarlyは、Wordの校正機能よりはるかに高い精度で文法ミスをプログラムによって検知し、編集をスピードアップするツールだ。また、独自の盗作チェックツールも備えている。
僕が知るかぎり、GrammarlyはAPIを提供していないので、PlagTrackerのようにプログラム的な処理はできない。
アウトソーシング用ワークフローの具体例
ユースケースと一緒にツールを紹介するのもいいが、もっと重要なのは、効率を上げるために繰り返し使えるワークフローを作ることだ。ここでは、アウトソーシング用ワークフローの各プロセスでどのツールを使うかの例を示す。
監査フェーズ ―― 最初のステップでは、すでにあるコンテンツのすべてを、質と量の面で再検討し、目的を変えて利用できるものがないか、更新や削除が必要なものがないかなどを確認する。これには、Screaming FrogやURL Profilerを使う。
戦略フェーズ ―― 戦略フェーズでは、Quora、Bottlenose、Followerwonk、SurveyMonkey Audienceなどを使い、アイデアを明確化してユーザーに関するデータを集める。また、Murallyを使ってチームでブレインストーミングを行い、Trelloを使ってキャンペーンを構成する要素の配置を決めてプロジェクトを管理する。
プランニングフェーズ ―― StoryboardとBalsamiqでストーリーボードとワイヤーフレームを作成し、99Designs、Contently、Dribbbleを利用してどのようにコンテンツを外注するかを決める。
作成フェーズ ―― 99Designs、Dribbble、Contentlyなどを利用してコンテンツを作成し、PlagTrackerとGrammarlyによって、できたコンテンツの品質を確実なものとする。
維持管理 ―― コンテンツを、Trelloのメンテナンススケジュールボードに入れる。
質の高いコンテンツを自作する
数千ドルから数万ドルのコンテンツ予算がある官公庁や大企業で働いている人ばかりではないことは、僕もよくわかっている。幸いにも、文章を書いたり、スプレッドシートを作ったり、画像をアップロードしたりできる人なら、すばらしいコンテンツを自作(DIY)することが可能だ。
そのためのツールはなじみのものがたくさんあるだろうから、ここでは、さほど名の知れていないものに絞って紹介することにしよう。
WYSIWYGでインフォグラフィック ―― Infogr.amとPiktochartは、SEO業界ではすでに広まっている。どちらも、テンプレートにドラッグ&ドロップすることでインフォグラフィックを作成できるツールだ。
Google Fusion Tables ―― これまたSEO業界では人気のデータ視覚化ツールだ。スプレッドシートを視覚化できる。
iCharts ―― iChartsはGoogle Fusion Tablesに似ている。スプレッドシートを基にデータを視覚化でき、APIを介して複数のデータソースをつないでくれる。
Dipity ―― Dipityは、画像をアップロードして文章を書くだけで、インタラクティブな年表を作ることができる。作った年表は、ランディングページに埋め込むことが可能だ。
Storybird ―― Storybirdでは、サイトにアップロードされている画像や自分でアップロードした画像に文章を添えて、インタラクティブな本を作ることができる。
Adobe Kuler ―― 美しいコンテンツを作るには色の調整が重要だが、色彩理論なんてよくわからないという人も多い。でも怖がることはない。AdobeのKulerなら、制作者間で配色を決めて共有することができ、あなたのコンテンツが必要としているルック&フィールにふさわしい適切な配色を探せる。
Adobe Edge Web Fonts ―― ウェブは長足の進歩を遂げたが、それでも利用できない書体がたくさんある。AdobeのTypeKitとGoogle FontsのAPIから生まれたAdobe Edge Web Fontsは、デザイナーが利用できる質の高いフォントの選択肢を拡大する。これを使って、もっとよい書体でコンテンツを構築しよう。
HackDesign ―― あなたの考えは分かる。「自分はデザイナーじゃないんだ。どこから手をつければいいのかさえわからない」。もっともだ。HackDesignは無料のデザイン教室だ。毎週メールボックスにテキストが届き、デザインの考え方を理解するのを手助けしてくれる。
DIY用ワークフローの具体例
DIYの場合でも、それなりの規模でやろうと思えば、繰り返し使えるワークフローを作ることはとても重要だ。
DIYのワークフローといっても、作成フェーズ以外はアウトソーシングのワークフローとさほど変わらないことに気がつくだろう。DIYワークフローでは、プラン作りの段階でコンテンツの外注先を探す代わりに、Kuler、Infogr.am、Storybirdなどを組み合わせてコンテンツを自作する。
クリエイターとのコミュニケーション
マーケターが「シンプルでクリーンなデザイン」がいいと言ったり、「フラットデザイン」という用語を間違って使ったりするたびに、スティーブ・ジョブズはiPad操作のプラズマ砲で天使をひとり撃ち落とす。
OK、ランドが以前のホワイトボード・フライデーで使った「箇条書きが子猫を撃ち殺す」(スライドで箇条書きを表示する愚かさをたとえてランドが使った表現)ほどわかりやすい表現ではないかもしれないけれど、言いたいことはわかるよね。
要するに、マーケターである僕たちは、必ずしもクリエイターと同じ言語を話してはおらず、多くの場合、僕たちが伝えようとしているものと実際に伝わった内容の間には隔たりがある。
「すばらしいコンテンツを作るために必要なもの」という記事で書いたように、僕は、一緒に働いていたクリエイティブディレクターと議論し、「データ視覚化の概要」(Data Viz Brief)という成果物をまとめたことがある。
「データ視覚化の概要」については上述の記事で詳しく語っているのだが、これは、以下のような要素からなる。
- コンテンツが追求するペルソナ
- コンテンツのためのストーリー(背景)
- データと文章
- ルック&フィールの例コンテンツの配置の仕方を示すワイヤーフレーム
データのセクションには、集めたすべての生データだけでなく、みんなに知っておいてもらいたいデータポイントを、厳選して加えた。
これによってデザイナーは、われわれが初めに考えていたアイデアに捕われず、より自由にクリエイティブな発想ができるようになる。
これが重要なのだ。なぜなら、デザイナーは、何をして何をコピーしろとただ命じられるのではなく、プロジェクトに対してもっと有意義な貢献をしたいと思っているのだから。
ワイヤーフレームは、作り出したいと思っているものをうまく実現するために大切な構成要素だ。
ワイヤーフレームは、デザイナーにどういうものを作成するのかという枠組みを与えるだけではない。実際にピクセルを配置する前にコンテンツの最善のアイデアを捻り出すチャンスを、マーケターとデザイナーの双方にもたらしてくれる。
スクリーンショットに示されているこの概要が、最終的にこのようなインフォグラフィックに結実した。
コンテンツプロモーションの公式
BuzzStreamの人たちが、コンテンツプロモーションに関する(電子)書籍を書いた。コンテンツのプロモーションは当然ながら、オーガニックなものもそうでないものも、資金と労力が必要になる。プロモーションのすばらしいプロセスを明らかにしたこの本は、深く読み込むだけの価値がある。
僕がこの件で特に強調したいのは、BuzzStreamが提示している公式だ。
目標設定の公式のほか、ペイドメディアのチャネルごとに必要な予算や、リンク構築のためのアウトリーチ活動に必要な労力が割り出せる公式などがある。
目標設定の公式 ―― コンテンツの実績に基づいた以下の公式でコンテンツの目標を判断する。
- ダウンロード目標 = リード目標 ÷ クオリファイド・リード率
- ビジター目標 = ダウンロード目標 ÷ コンバージョン率
チャネルごとに必要な支出の公式 ―― 任意のチャネルにおける支出に基づいてどんな結果を期待できるかを判断する。
- 1ドルあたりのビュー = ビュー ÷ 支出
- 1ドルあたりのコンバージョン数 = 1ドルあたりのビュー ÷ コンバージョン率
必要なアウトリーチ活動の公式 ―― 目標達成のためアウトリーチ活動に費やさなければならない労力を、レスポンス率から判断する。
- アウトリーチ目標 = リンク目標 ÷ レスポンス(リンク)率
- 最初のリストの長さ = アウトリーチ目標 ÷ 0.2
これらの公式によって、コンテンツマーケティングの話に、とても必要とされている予測可能性がある程度加わる。また、これらの公式は、迅速なビジネス事例作成やROIの予測にも適している。
まとめ
いったん振り返って、失敗に終わったコンテンツマーケティングのプログラムを調べてみよう。
もっと質の高いコンテンツ作成ソースを採用したり、タスク割り当てと品質確認を明確にしたりしておけば、もっとうまく目標を達成できたのではないか考えよう。
もう少し資金を投じれば便利で有用なものが作れたかもしれないのに、「見切り発車」してしまったときのことを考えよう。
そういうときにコンテンツ戦略があれば、大きな力になったはずだ。
質の高いコンテンツを極めるには、コンテンツマーケティングに加えてコンテンツ戦略という大きな支えが必要だ。
それなりの規模の品質を確保するには、技術的なテクニックや迅速さよりもプロセスとリソースが問題になる。
より良いマーケティングはよりよいコンテンツ体験から得られ、より良いコンテンツ体験はコンテンツ戦略から始まる。
僕は、あらゆる規模のブランドによる日々のコンテンツ戦略の効果的な実施を支援している。
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