CMSの役割はコスト削減からカスタマーエクスペリエンスの向上へ、Webエクスペリエンス管理のポイントと手法/日本オラクル
セミナーイベント「Web担当者Forumミーティング 2013 Spring」(2013年4月24日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
世界の経営幹部の93%以上はカスタマーエクスペリエンス改善を最重要課題の1つと認識している。
カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)の質が企業の売上に大きな影響を与える、と話すのは日本オラクルの渡邊紳二氏。なぜいま、WebサイトのCXが問われているのか、企業にとっての重要性やWebサイトの具体的な改善事例を示しながら、渡邊氏は解説していった。
カスタマーエクスペリエンスの質が売上に影響
先日、ある百貨店でズボンを購入して丈を直してもらいました。ところが履いてみたら、少し丈が短かった。再度、修繕をお願いしたら、その百貨店は丈を直した新品を自宅に送ってくれました。このような体験をすると、次もその百貨店で買おうと思います。みなさんも、同一の商品が同じ価格で売られていれば、CXの高いお店で買い物をするのではないでしょうか。最終的に売上向上へとつながっていくのが、CXの改善なのです。
渡邊氏は講演のはじめにこのように話し、CXは日本語で言えば「おもてなし」のことだと説明した。では、WebサイトにおけるCXとはどのようなものか。渡邉氏が挙げたのは次の3点だ。
- 欲しい情報を欲しい人に的確に届ける
- 顧客にとって居心地のいい場所を作る
- ユーザーにとって煩わしい操作を避ける
渡邉氏は具体的なWebサイトの改善事例に進む前に、企業がCXの意義をどう捉えているかを、オラクルが実施した調査「Customer Experience Global Insights」を基に説明した。北米、中南米、ヨーロッパ、アジア(日本を含む)の18か国、1,300人を超える企業経営幹部を対象に実施した調査で、ポイントは次の通り。
- 93%がCXの改善は今後2年間の最優先課題上位3つのうちの1つと回答し、97%が成功にはCXが不可欠だと回答。
- CXが低下すると、年間売上が20%落ち込む。
- 91%がCXのリーダー企業になりたいと考えているものの、実際に取り組みを始めた企業は37%にすぎない。
- 81%がソーシャルメディアは成功に不可欠であるとしているが、35%は販売やサービスの場面でソーシャルメディアをサポートしていない。
この調査の結果から渡邉氏は、「企業はCXを向上させたくても実際には困難で、理想と現実のギャップが存在していることが読み取れる」と話す。CXとひとくちに言っても、実際に改善するには人材や組織、プロセス、テクノロジーなど多岐にわたるポイントを変革しなければならないからだ。従ってこのギャップを埋めるには、新たなCX実現のアプローチが必要になると、渡邉氏は説明する。
調査によれば、企業は今後2年間でカスタマーエクスペリエンス・テクノロジーへの支出を平均18%増やす見込みです。ビッグデータ活用などを通じ、CXの理想と実行レベルの乖離を埋める投資が予定されています。
Webサイトのカスタマーエクスペリエンスを高める3つのキーワード
このように、企業にとってのCX改善の重要性が増してきていることを説明した渡邉氏は、WebでのCX改善をどう実現するかに焦点を移し、いくつかの調査レポートを引用しながら、Webを取り巻く環境を次のように説明した。
- 40%のユーザーが購入時にFacebookのおすすめ情報を参考にしている
- 48%のユーザーがモバイルデバイスで製品やサービスをブラウズしている
- パーソナライズされたWebサイトはコンバージョン率を70%に増加できる
一方で、「すばらしいマルチチャネルのCXを体験しているのは、たった3%にすぎない」と渡邊氏は説明する。そして、Web上で優れたCXを実現するには、「ENGAGE」「ENPOWER」「EXTEND」の3つがキーワードになると強調した。
- ENGAGE(エンゲージ)
顧客との結びつきを強める施策のことで、属性や行動に基づくパーソナライゼーション、ソーシャルメディアやUGCを取り入れたインタラクティブなサイト作り、レスポンシブWebデザインによるマルチチャネル対応などが代表的な施策。
- EMPOWER(エンパワー)
日々、サイトを運用・改善するWeb担当者の仕事に活力を与える仕組のこと。簡単に編集可能なシステムや、UGCの効率的な管理機能、エンゲージメントを向上するためのきめ細かい分析機能などが挙げられる。渡邉氏は、オラクルが提供しているCMS「Oracle WebCenter Sites」を実際に操作し、パーソナライズされたページがいかに簡単に作成・編集できるかをデモで示した。
- EXTEND(エクステンド)
文字通りサイトを拡張していく仕組みのこと。ビジネスの成長に合わせたサイトのスケールアウト、多言語化をはじめとするグローバル対応、パートナーサイトやソーシャルメディアにコンテンツを配信するチャネル横断機能などがあるという。
渡邉氏はOracle WebCenter Sitesでのグローバル対応のデモも実施。ごく簡単な操作で、日本で用意したマスター情報をコピーしてローカライズできることを実演した。もちろん米国は英語、カナダは英語とフランス語といった具合に、それぞれの地域ごとに言語体系を設定できるようになっている。
最後に渡邉氏は、Oracle WebCenter Sitesの導入事例として、光関連の電気機器メーカーである浜松ホトニクスのケースを簡単に紹介した。同社ではグローバルCMSの導入と、Webサイトと製品データベースの連携を考えており、その両方を実現できることが導入の決め手になった。CMSを導入した結果、製品情報管理の省力化、コスト削減などの効果が得られたという。
同社が取り扱うのはBtoB向け商品だが、閲覧履歴に基づくパーソナライゼーションなど、BtoCサイトでよく用いられている機能も一部で採用されている。現在は日本語と英語の2カ国語に対応しており、今後は中国語、ドイツ語にも展開していくそうだ。
今日はあまり詳しい説明ができませんでしたが、Oracle WebCenter Sitesの詳しい機能は、Oracle.com、Facebook、Twitter、Slide Shareなどでご覧いただくことができます。ドキュメント系やポータル系の情報も載せていますので、ぜひアクセスしてみてください。
渡邉氏は最後に、講演で紹介しきれなかった事例やレポートがWebで公開されていることを述べて、講演を終えた。
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