Apple TVのYouTube閲覧機能を徹底解剖。生煮え感があり、次のバージョンに期待か!?

6/20 Apple TVのファームウェアがバージョンアップされ、YouTubeが見れるようになった。新しく追加されたYouTube関連機能をまとめつつ、家電メーカーの企画屋の観点から、新ファーム版Apple TVを評価してみたい。

トップメニューにいきなり「YouTube」ボタン

1番上位の操作メニューにいきなりYouTubeロゴがあらわれる。このあたり、家電メーカーは今後の商品企画において考え方を変えていく必要があるかもしれない。というのも、家電の企画担当者は、新機能、サブ機能をどうしてもUI奥のほうに押しやりがちだ。

例としてYouTubeが見れるCATVチューナーを企画したとする。現場の連中に特に細かな指示をせずにほおっておけば「『機能』ボタンを押して『遊ぶ』『インターネットアプリ』『YOUTUBE』と順に選択して起動」などといった長ったらしい遷移をしないとYouTube機能にたどり着けないようなUIを平気で書いてしまうことだろう。サポートのことなどまで考えると、新しい機能はなるたけ奥に押し込めておきたいという文化があるらしい*1。

そんなことじゃぁいかん!と上層部からのトップダウンで圧力をかけ、徹底的に簡単に使えるようにしろ!と指示をしたとしても、何を勘違いしたか「リモコンのYOUTUBEボタンを押して起動」なんてUIにしてしまう。従来のCATVチューナーに付いていなかったボタンが1個リモコンに増えたことを一体何パーセントのユーザーが気づいてくれると思っているのだろうか。こんなUI設計にしているくせに「新機能の利用率が低い!お客様はこんな機能を求めていない」とか言ってないだろうか?(笑)各家電メーカーのアクトビラ対応テレビ設計者の皆さん、ちょっとはマジメにUIを考えましょうぜ。

その点Apple TVは誰でもYouTube機能に気付けるよう配慮されていると言える。起動すると機能選択メニュー画面が表示され、そこに" View YouTube"と書かれたボタンがある、たったこれだけこのことで何十パーセントものユーザが機能の存在に気づき、Clickしてくれることだろう。

機能一覧

続いてYouTube機能を列記しよう。カッコ内はPC版YouTube(English)における対応機能名である。

  • お勧めのビデオ(Featured)
  • 人気のビデオ(Most viewed)
  • 最新のビデオ(Most recent)
  • トップレート(Top rated)
  • 履歴(Viewing History)
  • 検索(search)
  • Log in/out

とってもsimple。Most Recent、Most Viewed、Top Ratedを選択すると左右二分割画面となる。ここでは左側にサムネイル、右側にビデオタイトルのリストが表示され、上下ボタンで選択、決定で再生というオーソドックスなUIが用いられている。Clickで再生が開始されると、全画面表示となる。4:3ビデオの16:9引き伸ばしなどの機能は用意されておらず、画面左右に黒帯を残す状態での再生となる。

YouTube on Apple TV 01候補ビデオ選択画面(Most Viewed)

再生中は左右ボタン長押しで早送り、巻き戻しが可能となっており、PC版より使いやすい印象をうけた

再生終了時には「再開」「YouTubeメニューに戻る」「オプション」の3択+関連するビデオ(PCと同じ機能)が提示される。オプションを選択すると「このビデオのレートをつける」「よく使う項目(favorite)に登録」「不適切なビデオとしてフラグをつける」の3択が現れ、CGMに貢献することができる仕様となっている。

YouTube on Apple TV 03再生終了画面

ここまで使うユーザがどれだけいるかはさておき、CGMをただ消費するデバイスではなく、CGMに参加することができる仕様としたことは評価に値するだろう。今後CGMを受ける家電を作るメーカーはコミュニティからの批判などを考慮し、こういった機能の是非について検討する必要があるだろう。

ここが便利!

「よく使う項目」はPC版とWEBベースで連携しており、PCで登録したビデオをアップルTVで楽しむ(逆も可)ことができる。動画を探す行為をリビングで、しかもApple TVを使って...というのは少々敷居が高い。だが、この機能があることで「PCでBlogやNewsサイト経由で見つけた面白い動画をストックしておいて家族や友達に見せる」といったユースケースが実現可能となる。

ここが不便!

検索で日本語が使えないのはだめすぎる

検索機能の出来はめちゃくちゃ悪い。まず、英数字でしか検索できない点が日本人には致命的。その英数字にしても、補完機能すら無いなど、入力方法に捻りがないうえにレスポンスが悪く、入力しづらいことこのうえない。さらに悪いことに、検索語を入力するために使うソフトキーボードが何と他の入力で使うものとレイアウトが異なるのである。他の画面では画面いっぱいを占有する広いソフトキーボードなのだが、検索画面では画面右側にリアルタイムで検索結果を表示する必要があるから、という理由はわかるがここは何とか統一してほしかったところ。

YouTube on Apple TV 02これがその検索画面。つ、使いにくい...

文字入力まわりが使いにくい!

家電の宿命でもあるが、文字入力に課題あり。iPhoneのようなタッチパネル+ソフトキーボードとまでは行かずとも、もうちょいマシなインターフェイスを考えてほしかったものである。ま、家電屋としてはライバルがこういったウィークポイントを持っていてくれることは喜ぶべきことなのかもしれないが。

パスワードなどは画面上のソフトキーボードで入力するから傍に誰かがいれば丸見えだ。100歩譲ってここは許すとしても、カーソルキー移動の遅さもあいまって、ソフトキーボードの使い勝手がよくない。Wiiリモコンとまでは言わないが、先に述べた入力候補提示機能など、もう少し入力まわりを作りこんでほしかった。

リモコンが使いにくい!

受光部のせいか発光部のせいかは定かではないが、リモコンをきちんと本体の方向に向けないと反応してくれない点もストレスが溜まる一因だ。このあたりはもう少し家電を見習ってほしいところ。また、キー連打時の反応の悪さも気になった。オシロスコープを持ち出して計測したわけではないからはっきりしたことは言えないが、連打に向いていない赤外線方式を使っているのかもしれない。ちなみに日本の家電メーカ間で取り決めた家政協リモコンコードは連打に弱いことで有名...orz

総括

AppleTVのYouTube機能はこれぐらいだ。日本は特殊市場だとしても、欧米でも売れ行きパッとしないApple TVにとって、今回の新機能は起死回生の一手というよりは、次期Apple TVに向けてのユーザーテストの意味合いが強いものと予想される。

UI設計を見るに「とりあえず作りましたエヘ」臭が漂ってくるからである。ログイン機能がどれぐらい使われるのか、レート付け機能を使う人はいるのか、などなどしっかりとデータを収集した上で、次の一手を打ってくることは間違いなさそうだ。


一通り触ってみて意外だったのは、ジャンル別ビデオ選択画面がなかったことだ。Most ViewedやTop Ratedがクリーンヒットする人たちはいいが、特に興味のないビデオばかりがこれらのお勧めメニューに並んでいた時、果たしてあの敷居の高い検索画面を使って見たいビデオを探すことができるユーザが一体どれぐらいいるのかは興味深いところ。


個人的な感想だが、メニューをシンプルにしてライトユーザを取り込もうとしたが、ジャンル別とかタグクラウド表示が無いことが結果的にはライトユーザが定着しない大きな要因となるのではないかと感じている。

さまざまな種類のビデオがアップロードされるようになってしまい、さまざまな人々が評価・閲覧を繰り返す今日にYouTubeにおいて、今見直されるべきはジャンル別、タグ別ビデオ分類によるライトユーザーへの訴求かもしれない。

*1:サポートを絡めたネット連携機能を現場がなぜ嫌がるか? については後日詳細なエントリーというかたちで説明したい