ロビイングして最高速25km/h未満のパーソナルモビリティは無免許公道オッケーにしないと世界に置いていかれて死ぬって話し

パーソナルモビリティそのもの、あるいはパーソナルモビリティを活用した新サービスは今後大きく人類の移動を改革するだろう。で、その大きな新規ビジネスエリアを日本という国は法律・条例によって国際標準から大きくかけ離れた規制をかけており、このままでは自動車バイクと違って次世代の移動手段における国際競争力を大きく失うことになる。これはすごいまずいことなんじゃないか? と思ってて、同じ思いを持つ人達で寄ってたかってロビー活動して法改正に持っていってパーソナルモビリティ分野取りにいかないとやばいんじゃないの? というはなし。

退職金ほしさに大企業にしがみついてる窓際オッサンがあと5年もしがみついていればのうのうと生きられるのに対し、いま入ったばかりの20代社員は一寸先は闇状態...ってのとおなじ。仕事できないオッサンは容赦なく切る、なんてルールを20代が言い始めたらオッサンたちは死んでもルール改正反対するが、あと40年ほど今の20代社員が戦わねばならないその企業は、消え行く無能にコストを払って5年後にはガタガタの財務体質になってしまっていて....というような状況を想像してもらうとわかりやすい。



まず、日本のバイクメーカーにおける原付きは死んだ。まぁ原付きなんて日本にしか存在しないガラパゴス規格*1なんで、ガラケー死したのと同じ流れで死亡、と。ちなみに超バイク文化の東南アジアの実質的な標準サイズが125ccなので、まぁこうなる。

ヤマハ発動機とホンダ。1980年代にオートバイの過激なシェア争いを繰り広げた”因縁”の2社が手を組んだ。

ヤマ発は10月5日、2018年をメドに排気量50cc原付バイクの自社生産から撤退し、ホンダからOEM(相手先ブランドによる生産)による供給に切り替える方向で検討すると発表した。ヤマ発の渡部克明取締役は「自前で造り続ければ、50ccスクーターの事業が成り立たなくなる段階まで来ている」と危機感を募らせる。
かつてのライバル同士による提携は、一世を風靡したバイク文化の凋落ぶりを如実に示している。

http://toyokeizai.net/articles/-/139521


ちと古い記事だが日本の自転車メーカーも同様に死んだ。生ぬるく言うなら、ガラパゴス化して死につつある、という表現になるか。

東南アジアに近い台湾のサイクルショーは、今、これらの国々からバイヤーが集結する場となっているのだが、ブリヂストンやパナソニックなど日本の自転車の完成車メーカーは出展すらしていない。会場で会った日本の自転車業界関係者に理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。「海外市場で勝負しても勝ち目がないと、あきらめているんです」<中略>
どうにか食いつないでいるが、いずれは廉価な中国製などに市場を奪われる可能性が高いじり貧の市場でしかない。
http://toyokeizai.net/articles/-/13628


さて、別に原付きバイクや自転車を語りたいわけではなく、『パーソナルモビリティ』である。0-2km/hぐらいだけを人力ペダルで加速してそこからバッテリ+モーターですーっと走っていく『e-bike』はいまや国際自転車展示会の1/3以上を占める巨大市場に。Z-Boardが先鞭をつけたが中華に完全にうっちゃられつつある『電動スケボー型モビリティ』も見逃せない。バッテリ爆発で一世を風靡した中華ホバーボードや、神田さんが捕まって一世を風靡したセグウェイ改めNinebotなどの『完全電動非バイク型モビリティ』もアジアを中心にかなり伸びている。

何故伸びているかというと、詳しくは英語版Wikipediaのe-bike項に譲るが、欧州やアジアの主要国(カナダ、ドイツ、イギリス、マレーシア、シンガポール、中国など)においてe-bikeは免許不要で公道OKなのだ。電動アシスト自転車ではなく、完全電動で最高時速は25km程度も出る。漕ぎ出しの瞬間だけペダルを踏んでやる必要はあるが、実質的に原付バイク以上の使い勝手である。アメリカのカリフォルニア州では電動スケボーが合法化された。中国やシンガポールは歩道を『完全電動非バイク型モビリティ』つまりホバーボードやセグウェイ型でがんがん走れる。もちろんライセンス不要なわけだからナンバープレートなんて存在しない。

対する日本はどうか。時速6km以上絶対に出ないよう制限を掛けたもの、つまり電動車椅子やシニアカー程度のものはノンライセンスでOK。しかし、ひとたび6km/hを超えると次は原付きの扱いまで何もカテゴリーがない。しかも原付きはライセンス制でナンバープレート管理でひじょーーーーーにガラパゴスな車体規定がある。具体的には座席がないといけない(スケボー型やホバーボード型はここで落ちる)、制動装置がないといけない(体重移動不可、モーター逆回転系も不可、座席ありセグウェイ型はここで落ちる)、ミラーとウィンカーがないといけず(これでスマートな形状ができなくなる)、前照灯、尾灯、制動灯(ブレーキランプ)が必要で、ライセンスプレート灯が必要。結果、車体形状に大きな制限がかかるわけだ。

で、いま海外のこういったパーソナルモビリティ系はどんな状況になっているかというと、すでにPCのように相当なコンポーネント化が進んでいて、中国の広州(Guangzhou)や深センに行ったら、タイヤ工場、ホイール工場、ブレーキ工場、インホイールモーター工場、専用バッテリ工場、座席工場(笑)、ECU(制御ユニット)工場などがそれぞれ独立で存在しており、どこにでもあるアルミ削り工場やプラ成形工場と組み合わせると、誰でも完成車メーカーになれてしまう状態。


これがECU中心に作ってる工場。
https://persino.en.alibaba.com/


これがインホイールモーター専業工場
https://cnjzdj.en.alibaba.com/


これがモビリティ用バッテリ専業工場
https://jneshine.en.alibaba.com/

ここはブレーキ『レバー』とウィンカー『レバー』の専業工場
https://liguang.en.alibaba.com/productlist.html

といった感じで嘘でも何でもなく本当にこのレベルで水平分業化されているのである。
で、じゃぁ日本も部品メーカーになろうとかそういう話しをしたいわけではなく、これって台湾自転車工場群に日本の自転車産業がヤラれちゃったパターンと全く同じ流れを辿っているということ。
さらにそこに道交法の壁が立ちふさがって日本マーケットってもんを消失させてしまっている現状、日本は次世代パーソナルモビリティというビジネスチャンスを完全に捨てていることになる。もちろんe-bike禁止、ホバーボードも禁止、禁止、禁止ィ! とガチガチにしてしまって海外製品が入ってこないようにしてしまえばホンダの原付き部門とブリヂストンの自転車部門ぐらいは維持できてしまうかもしれないが、それでいいのかと。冒頭であえて刺激的に書いた、沈みゆく船にしがみつくオッサンじゃないのかと。現にヤマハの原付き部門は沈んだわけで。

そしてガラパゴスしがみつきだとやっぱり10年ともたずに死ぬよねというのは、ソニーがNECが東芝が手放していったPC事業、三菱がNECがパナソニックが撤退していった携帯電話事業と見ていけば自明の理ではないかと。B-CASガラパゴスで守りきったかに見えたテレビ事業も決して安泰ではない状況下なわけで。

で、手伝ってるおまえがいうな的立場だけど、中国の電動バイクをベースにして日本仕様にカスタムして持ってきて販売するUPQみたいな業者も出てくるわけで、もう止められないわけですよ。
http://upq.me/jp/upq_bike/me01/



真面目な話、原付き業界どうせもう死ぬのが見えたんだし、自転車業界のことなんて気にせずさっさと時速25kmぐらいまでのパーソナルモビリティは(方式や形状、装備を問わず)無免許解禁にすべき。だいたい自転車が治外法権すぎるのである。ギアつきの自転車なら、鍛えてない人でも30km/hは平気で出せるのに無免許ノーヘルOKなのだから。ミラーもなければ尾灯も制動灯もないのに、ね! おっと、別に自転車が憎いわけではない、頑張れば40km/hだって出せてしまう自転車より、25km/h程度に最高速を制限したパーソナルモビリティのほうがより安全なんじゃないの、と。原付きの課題は30km/h制限だよといいつつ60km/h出せてしまうハードウェアにある。25km/h制限のe-bikeはどう考えても40km/hですっ飛んでくる人力バイクより安全、さらにはe-bikeより軽量な20km/h制限の電動キックボードはより安全なのではないか? という仮説に基づく検証をしっかりやって、ロビイングをやって、法改正にむけて動いていかないと、あたらしいパーソナルモビリティ関連のビジネスで日本は大きく世界に遅れを取っていくんじゃないかなぁという危機感を強く持っている。すでに2周遅れぐらいの認識なんで。


ロビイングなんてモンに興味はなかったけれど、この分野においては手をこまねいてないで仕掛けていかないとやばいんじゃないかと本気で思っている。
コアとなる部分はもうモーターとバッテリということで決まってきているわけで、あとはどうそれらを応用して最終製品のスタイルを作っていくか&その最終製品の運用形態(Uberじゃないけど)でまだまだチャレンジしどころがあるはず、きっとある。大事なことなので二度言いますがこのままだと全部諸外国に持っていかれますよ。


過激なことを書いたが、落とし所としてはまず現行道交法のママで、原動機付自転車の定義を変更するところからじゃないかと思っている。スケボーやホバーボード状のモノに立って乗るのも『座席(人がおさまる場所)』だという解釈にしてもらうというのが1つ。もう一つは制動装置の定義だ。モーター逆回転による制動効果をブレーキとみなす、というこれも定義変更で何とかなるはず。方向指示器は自転車とおなじくハンドサインで代行するならなしにしてもいいとかにできんかねぇと。尾灯・制動灯については現行ママでもさほど大きな課題にはならないと見ている。一番きっつそうなのはナンバープレートとナンバープレート灯ですなー。こればっかりは何か抜本的な手が必要そう。RFID化してしまう、より小型のプレートを手配する....などは警察庁が嫌がりそうなので、100歩譲って背中に付ければOK、とかね。そもそも原付きのナンバーは現状でも封緘がないので、ヘルメット後方やリュックサックにパチッと止めて後方から見えるようにしていればOKなどの規定にすれば、より小型の車体を実現することができるきがするのですよね。

*1:まぁEUの一部で50ccバイクは売られてはいるが