古い土地

暗い穴

『時のオカリナ』RTAの歴史 part 1.5:グリッチ史からの補足/part 1の後書き

 

<前|

wagaizumo.hatenablog.com

 

前回記事の後書きを収録。グリッチ史からの補足を現在執筆中。

 

 

 

Part.1のあとがき:RTA史に関する提案と展望と雑考

いかがでしたか?

 

1. 呼びかけ

英語圏のことに限っても私より詳しい日本語話者は山ほどいる(生き字引もいる)だろうから、そういった方々により詳しく正確な記述を託したい。2017年頃からスピードランを歴史化するモードが世間的にある。

 

そうした内部の視点とは別に、人文科学的なゲーム研究の一端として時オカRTA史を書くこともできる。私は単にファンだから筆をとり始めたが、書く上では研究的な文体を援用した。この意味でも私はアマチュアでしかないので、専門家の参入に期待したい。2010年代をどういう切り口から攻めれば研究的な読みものとして面白くなるか、私には見当がつかない。

 

 

2. 日本のスピードラン史

「初期史」にもかかわらず日本での様子を追えなかったのは大いに心残りだ。RTA史のみならず文化研究的な興味がある。ゼロ年代の匿名掲示板や個人サイトとともに、ファミ通が出していたゲーム雑誌・やりこみプレイDVDの類も捜索すべきだろう。今だと国会図書館に行けば読めるゲーム雑誌の方がゼロ年代前半のインターネットよりdigしやすいかもしれない。

 

私が理解できた範囲で何点か述べる。以下、まろばし『RTAの歴史』参照

前言を翻すようだが、ファミ通時代に時オカの早解き系やりこみが投稿されたとは思えない。単純にクリアタイムを表示する機能が時オカにないからだ。「ゲーム内タイムが存在しないゲームのタイムアタックはできない」というのが1990年代の認識だった。

ゆえにRTA概念が形成された2000年頃より後を追えば十分そうだ。私が発見できた最古の記録はかみしけ氏のもの。

このように、個人サイトにおいてプレイレポの形でRTA記録は報告された*2。『Part 1』で何回か登場した七空白氏もこの例にもれない。

 

2010年前後のニコ生時代の時オカRTAコミュニティにおいて注目すべきことは、「バグ制限」(英語圏のGlitchlessに相当)の圧倒的流行だ。この流行の感覚・RTAにおける美学の形成はなんとも説明し難い。Twin Galaxiesより規模はずっと大きかったし、Twin Galaxiesと違って他のゲームではバグありが優勢なことも多かった(例えば『マリオ64』の16枚RTA)。

2011年にはNo Wrong Warpを走る走者もいたので、強力なバグが人力で可能なこと自体は認知されていたはず。だが競技性を認められたのは4時間近くかかるバグ制限だった。当時界隈にいた方によると、日本語のグリッチ関連資料が非常に少なく、バグの発動条件すら分からないことが多かったらしい。

 

個人サイトとニコニコの狭間、PeerCast(2004年発足)にも時オカRTAコミュニティが存在した可能性は否定できない。ただ次のような事情で記録がほぼ残っていない:PeerCastは「ゲーム配信は法的にアウト」というゼロ年代規範に基づく閉鎖的なコミュニティであり、検索除けもしていた。そして2007年にPeerCastで出たSFC版『ドラクエ3』の世界記録がニコニコへ無断転載されたことをきっかけに、ニコニコとの文化的・世代間対立は苛烈になっていく。

 

 

補足:segmented run、single-segment、TA、RTA

『Part 1』でsegmented runを「タイムアタック」ではなく「区間ラン合計」という造語で訳出したことについて、もろもろの歴史的判断があったことをここで紹介する。

そもそも「タイムアタック」(TA: Time Attack)という和製英語はモータースポーツのレース用語として生まれた。1980年代にはアーケードゲームのクリアタイムを競う遊びに対しても使われるようになる。1990年代、コンシューマーゲームのRPGに関してセーブファイル・エンディングに表示される時間(IGT: In Game Time)を短くするやりこみを指すようになった。やりなおしがいくらでも効く点で確かにこの「タイムアタック」はsegmented runに近い。

その後、タイムアタックにおいて本来の意図とずれるようなプレイング(例えば59秒ごとにセーブリセットしてIGTを進めないなど)が横行したことから、実時間で計測する「リアルタイムアタック」(RTA: Real Time Attack)の概念が2000年頃生まれた。

ところで、「TA」「RTA」という和製英語はそれぞれ英語圏に渡ってから意味が転じている。RTAはTASとの区別を意識した「人力スピードラン」、あるいはsingle-segmentとの区別を意識した「セーブリセット・デスワ―プを許した一発通し」を指すようだ。TAの方は「休憩有りの一発通し」くらいのニュアンスで使われる。例えば『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』の100%カテゴリの計測方法は「TA」(休憩あり)と「RTA」(休憩なし)に分かれている。

私も正直こちらの感覚に近い。よって『Part 1』ではsegemnted runを90年代的な「タイムアタック」ではなく「区間ラン合計」という造語で訳した。

 

 

3. グリッチ史

今回はAny%を中心として世界記録史・グリッチ史・コミュニティ史を含む大きな流れを追ったが、それとは別に時オカのグリッチ史に特化したページが欲しい。本当に欲しい。風タクにはそういうのがある。

時オカの場合毎年50は新ストラト・グリッチが(有用性は別として)発表されてきたから、同時代的には扱えたものじゃなかったのだろう。だが今過去を振り返って書くことは可能ではないか? あるいは私が把握できていないだけですでにあるのだろうか。

→ あ り ま し た 

有識者の方に教えていただいた。情報提供に感謝申し上げます。

 

 

4. TASの歴史とRTAの歴史的役割

TASの歴史はもう少し深堀りされるべきように思う。次が初期史を簡潔にまとめている。

私はニコニコ動画文化圏にいたので2009年頃「ゲームの早解きと言えばTAS」*3と思っていた記憶がある。今更ながら個人的思い入れから本稿の記述にバイアスがかかっている可能性を注意しておく。

時オカのテクニカルなグリッチはゲームの解析に関わるブラックな歴史(技術・法制・思想)と不可分だ。また時オカのスピードラン史の特徴として、TASが十分発展したあとRTAがそれを吸収し尽くした(「食い潰した」)ことが挙げられる*4。これは有名ゲームのスピードランにしばしば見られる現象で、むしろRTAとTASが今でも別個に発展し続けているマリオ64が異例なのだろうが……。

Googleトレンド「ocarina of time speedrun」 山は大抵GDQのタイミング

www.youtube.com

『part 1』冒頭で「スピードランというゲームの遊び方を代表する作品の1つ」と書いたが、界隈全体の興隆とともに2018年にはその役目を終えているように思う。歴史化へのモチベーションはこのあたりからも湧いている。

 

 

5. カテゴリの歴史

世界記録史としてAny%に記述を絞ったことは、2012年までを対象とした『Part 1』の場合妥当と信じる。だがもし次回があれば100%・MST・All Dungeonsなどのカテゴリの歴史も追いたい。MSTは歴史が古く2008年からTASがあって比較作業が面白い。All Dungeonsは手頃そうだ(がMSTを前史とすると長くなる)。100%は、まあ、大変でしょう。

個別カテゴリの歴史に加えて、カテゴリが分割されていく歴史も追いたい。というかグリッチ史以上にどこかに履歴ページがあってしかるべきだろう。同時代に書くのが一番簡単だし。speedrun.comすらわざわざInternet Archiveを使わないといけないのは本当に困る。

というわけでまとめてみました。

時のオカリナRTA カテゴリ分割の歴史

下手をすると本稿で唯一新規性のある仕事がこの画像の制作だ。

 

6. 記事を書いたきっかけ

時オカには「GSR」と呼ばれているカテゴリがある。名前こそ変われど昔から今までずっと人気を集めてきたカテゴリだ。アイテム不正入手系グリッチとWrong Warpの禁止がその趣旨で、「時の扉抜け → マスターソード → 闇・魂・森(弓矢まで)→ 光の矢 → ガノンドロフ」というルートをとる。

GSRのルートには古典的な印象を前から抱いていた。光の矢取得ムービー6分を毎回律儀に見なければならないあたりとか。そしてつい最近「GSRはすごく昔のAny%ルートだったんじゃないか?」という疑問がよぎり、「oot speedrun history」で検索してみた。そこから調査を続けて今回の記事ができた。

当初の疑問に答えると、BA/RBAの方が時の扉抜けよりも早く見つかっているためGSRが最速ルートだったことは1度もなかった。上の画像だと「5 Boss」から「(No RBA)」の枝が生えているが、Wrong Warp以前には1時間53分33秒(by Runnerguy2489, 2010/1-3)の記録しか残っていない。GSRはWrong Warp以後に「No RBA/WW」として始まったと思ってよいだろう。

  • No RBA/WW 1:31:17- YouTube (by すば, 2012/5/4):動画が現存するNo RBA/WWの記録のうち最古のもの

私はGSRの疑似古典感にすっかり騙されていたわけだ。もっと言えば、No RBA/WWにおいて「時の扉抜けがBA/RBAより先に見つかったというあり得たかもしれない(非常にあり得そうな)過去」の創出が行われた。創られた伝統である。

BA/RBAが禁止されるカテゴリ(MST、GSR、部分的に100%)が比較的多いのに対して、時の扉抜けが禁止されることはGlitchedだとまずないことに注意しよう。時の扉抜けはボムホバーやESSと同様に攻略の自由度を高める方向に働くらしい。一方でBA/RBAの強さは、ある程度カテゴリの方向性を決めてしまう「味の濃さ」と同義だ。No Wrong Warp、All DungeonsのWii VCルート、ビンゴレースにおけるわらしべRBAの定石っぷりを参照。

 

 

以上。今のところ『Part 2』を書くか不明なので全て吐き出しておいた。

 

 

 

グリッチ史からの補足(作業中)

RBA/BA・Wrong Warp・SRM/ACEといった明確にスピードランの形を変えたグリッチは通史に組み込みやすい。だがボムホバーや森抜けなど、今日当たり前のように使っているグリッチの歴史は書いていてノイズになる感じがした。発見の偶然性がどうしても強く感じられる。

というわけで今回はグリッチ史に集中し、「時オカのアタリマエ」をトピックごと・時系列順に整理してみよう。次の資料を参考にした。

トピックの選出基準は個人的興味による。さらに細かい所まで追うとキリがないので、動画の数は絞った。

 

本編で扱った/扱う予定のメジャーグリッチ

『part 1』

06-07:残像剣、スーパースライド、ボムホバー、Megaflip、BA/RBA(MSTで禁止され、No RBA/WWを生んだ)

08:時の扉抜け、ESS 

 

それ以降

12:Wrong Warp(No WWとNo RBA/WWを生んだ)

14:Quickdraw(Bottle on Bが容易になりRBAがさらに使いやすくなった)

15:GIM(Defeat Ganonを1分、No WWを2分縮め、MSTで禁止され、No IM/WWを生んだ)

17:Equip Swap(大人で全てのダンジョンを攻略できるようになり、子供で魂以外のダンジョンを攻略できるようになった)

19-20:SRM/ACE(SRM/No SRMのカテゴリ分割を生んだ)

このうち時の扉抜けとQuickdrawは話の都合で今回も登場する。

 

2020年以降のグリッチに関して。Quick Putaway(2020)、Lunge Storage(2021)、Dynawarp(2024)、Stale CS Manip(2024)あたりがすぐ思いつく。前2つは汎用性が高くルート組み換えも可能にしたが、短縮幅はさほど大きくない。後ろ2つは派手だが大技過ぎて思ったよりメインカテゴリRTAに波及しなかった。今後の研究を俟つ。

 

 

森抜け(Forest Escape)

『part 1』で「時の扉抜けで子供ダンジョンを全てスキップできるようになった」と書いたが、これに必要な「デクの樹様を攻略せずコキリの森を抜ける方法」についてすっかり言及し忘れていた。森抜けは時の扉抜け(2008年3月)の少し前、2007年12月に見つかっている。

なおN64のカセット半差し(crooked cartridge)による森抜けはさらに前から知られていたらしいが、動画が見当たらないので省略。

 

2009-11年に急激に整備された、と覚えておこう。

 

 

時の扉抜け(Door of Time Skip)

シーケンスブレイクとしての強力さは『Part 1』で書いた通り。

  • Temple of Time Skip - YouTube (by Mitjitsu, 2008/3/28):時の扉抜けの初出。
  • DoT skip as adult - YouTube (by TobiSamoht, 2008/5/4):子供時代に時の扉抜けをすると、大人になっても時の扉が閉じたままになる。長時間カテゴリで大人と子供を行き来するとき困るので大人時の扉抜けが開発された。この時点ではネールの愛やバクダンBボタンが必要なため実用性皆無。
  • Adult Door of Time Skip with Recoil boost - YouTube (by Exodus, 2011/4/14):壁に盾突きした反動を使えばマスターソードとホバーブーツだけで大人時の扉抜けはできる。今日よく見る形。
  • Door of Time Skip Without Kokiri Sword! - YouTube (by MrGrunz, 2011/10/25):2008年のセットアップを精密化することで剣を不要にした。今日よく見る形。
  • Jumpslash DoT skip as child with lunge storage (Oot Calendar 2021 day 17) - YouTube (by bliny and Jolin, 2021/12/20):突き保存(Lunge Storage)による時の扉抜け。簡単なので初心者にお勧め。

 

 

Bビンセット(Bottle on B)

BA/RBAの前提として空きビンをBボタンにセットせねばならない。

  • The Legend of Zelda: Ocarina of Time - Steal The Rod In Any Version! - YouTube (by SwordlessLink, 2007/10/7):『Part 1』でも触れた全バージョンで出来る釣り竿盗み。Bボタンの釣り竿はポーズ画面を挟むとデクの棒になる。その後空ビン増殖の要領で空きビンにおきかえる。
  • Acryte - Overstuffing, Duplication, and Index Swap.avi - YouTube (by Acryte, 2010/3/4):「Shield Swipe」の初出。これを使うと空きビン増殖が楽になる。特に釣り竿から直接空きビンに置き換えられて微短縮。
  • Bottle on B - Lon Lon Ranch Method - YouTube (by ZodiacMustDie, 2011/10/25):森抜けと時の扉抜けの発展により、コキリの剣を取得せずマスターソードを取得できるようになった。この条件下でのみロンロン牧場においてBビンセットができる。当時のAny%(今のNo Wrong Warp)を30秒短縮したらしい。
  • Quick Draw Bottle Dupe (Ocarina of Time Glitch) - YouTube (by nathanisbored, 2014/7/12):剣を引き抜く(Draw)モーションを水没や爆風でキャンセルすると、Quickdrawというバグが発動して次に剣を使うときモーションなしで引き抜ける。この状態の剣なら空きビンに上書きできる。上の2つの方法は釣り堀とロンロン牧場に場所が固定されていたが、Quckdraw法はいろんな場所で容易にBビンセットができる(=RBAができる)ので非常に凶悪。

 

ロンロン牧場Bビンセットという今日顧みられることのない地味なグリッチのために、森抜けと時の扉抜けの歴史を述べた。

 

 

スライド再び

ESSが2008年、WESSが2008-9年、HESSが2012年12月に見つかったことは『Part 1』で述べた。以下は全てWESSとHESSの間に見つかっている。

  • New Technique - Hyper Endless Superslide in Ocarina of Time! - YouTube (by MrGrunz, 2010/2/19):タイトルに反してここで見つかったのはいわゆる「Z-slide」。Zをタイミングよく押すことで速度を維持するTAS技。
  • Analog Slide- YouTube (by Bloobiebla, 2010/7/23):いわゆる「A-slide」。アナログスティックの入力と無入力を1フレームごとに繰り返してスライドするTAS技。
  • Weird Shot Setup - YouTube (by sockfolder, 2012/8/7):地面に潜ってフックショットを打つ「Weirdshot」はこの時期。元はA-slideからの派生技だったが、Weirdslideという地面に潜りながら滑るグリッチ*5からの派生として今日では知られる。

 

 

ミラーシールド早期取得(Mirror Shield from Outside)

魂の神殿のキーアイテム・ミラーシールドはダンジョン外に置いてある。頑張って外部を登って取りに行こうとするのは自然な発想だ。

  • Get Mirror shield ledge from outside - YouTube (by Kazooie, 2006/7/7):魔法のマメを使うアイディア。2008å¹´11月のMST TASはこれを用いている。
  • Mirror Shield chest from outside - bean skip on console (no chus) - YouTube (by ZFG, 2010/7/23):ボムホバーの自然な応用として「Spirit Hover」はいつの間にか出てきた。2012年以降になると通しRTAでも見かける。
  • OoT: Mirror Shield Early with Skulltula Hookshot Jump - YouTube (by ikswozol, 2014/12/23):Hookshot Jumpによる方法で「Spirit Jump」と呼ばれる。2024å¹´9月のGSR世界記録はこれを用いた。

 

 

井戸チュウ(BotW Chus)

爆発物を早期取得するグリッチ。BotWは「Bottom of the Well」(井戸の底)の略。

今のRTAでは毎回序盤に行うから基本的に見えてしまうけれど、発見はGIM(2015年)の前後。

  • OoT: BotW Chus without Zelda's Lullaby - YouTube (by KlydeStorm, 2010/4/4):井戸チュウの前形。本来は水位を下げるためにゼルダの子守歌が必要だが、Walking While Talkingで水をアンロードすることで回避している。井戸の底を結構攻略しているが、子供時代に「ゼルダの子守歌 → サリアの歌 → ゴロンの腕輪 → バクダン」と行くよりはずっと早い*6。
  • Botw Chus Early with Blank A - YouTube (by Fox, 2014/8/29):入口からすぐ井戸チュウに辿り着く。今でも最速の方法だが初期版限定。
  • BotW Chus with Ocarina Dive! (All versions) - YouTube (by Exodus, 2015/10/24):オカリナダイヴを使う方法。このセットアップが、というより妖精のオカリナ取得が遅い。
  • Botw chus with skulltula push setup 1 stick and nut (oot calendar 2021 day 25) - YouTube (by bliny and Jolin, 2021/12/25):「Skull Push」「Corpse Push」と呼ばれる方法。frame-perfect 4回と難易度は高いが、アイテムはほぼ要らず時間がかからない。おかげで初期版の優位性がだいぶ無くなった。

 

そもそも嵐の歌(正規の手段)抜きに井戸の底に侵入する方法が問題で、発見が微妙に遅かった。ナヴィダイブが見つかるのは2011年。

 

 

Hookshot Jump

フックショットを使って一気に上に飛ぶやつ。時オカ随一の上方向移動技。

  • Hookshot megajumping - YouTube (by Glitches0and0stuff, 2011/7/11):初出。死をトリガーとする。
  • Setup For Doom Jump in DC - YouTube (2014/10/31):デスメソッド。大人時代にバクダンを取るのが効率的になった。「Doom Jump」とも呼ばれる。
  • OoT: Mirror Shield Early with Skulltula Hookshot Jump - YouTube (by ikswozol, 2014/12/23):ミラーシールドを外郭から入手する方法(Mirror Shield from Outside)の1つで「Spirit Jump」と呼ばれる。スタルチュラのしるしを取得した際の遅延を用いる。
  • A New type of Hookshot Jump - Ocarina of time - YouTube (by Rosewater, 2017/4/6):いい感じに頭をぶつけるとHookshot Jumpが出来ることが判明。「Bonk Hookshot Jump」とも。
  • Shadow Early with Hookshot Jump - YouTube (by Exodus, 2017/4/7):闇の神殿侵入への応用。
  • Double Hookshot Jump to Fire Arrows - YouTube (by bakeneko, 2017/4/8):2種類のHookshot Jumpを組み合わせて炎の矢を取得。動画説明文にあるように2016年から初期版限定の方法で炎の矢Hookshot Jumpは行われていた。
  • OoT - Early Bow With Hookshot Jump Tutorial (Jungle Jump) - YouTube (found by homerfunky, 2020/9/21):森の神殿1階から弓矢部屋へのHookshot Jump。「Jungle Jump」と呼ばれる。

 

 

闇の神殿侵入(Shadow Temple Early)

時間的には大して差がないのに手段がやけに充実している。

  • Shadow early - YouTube (by Kazooie, 2006/3/20):ダメージブーストによる方法。今日のGlitchlessで使われる。
  • How to Bombchu Teleport for Shadow Temple Early - YouTube (found by Runnerguy2489, 2010/2/15):Superslide Teleportによる方法。ボムチュウがあるときはこれ。
  • Shadow Temple Early with Bomb Hover Method - YouTube (found by fluffy_kitten?, 2011/07/06):ボムホバーによる方法。バクダンのみのときはこれ。
  • Shadow Early with Hookshot Jump - YouTube (by Exodus, 2017/4/7):Bonk Hookshot Jumpの応用。今日ではまずこれを使う。

さらに闇のノクターンで墓地に来たときのため、扉スキップに絞った方法もある。

 

 

ダンジョン内の攻略・スキップ

大人ダンジョンのボス鍵スキップを中心に見ていく。森・炎・水・魂は2009-12年に基本形が出来ていて、闇は16年にブレイクスルーが起こる。

  • Water Temple Boss Key Skip without Bombs and Hover Boots!!!! - YouTube (by MrGrunz, 2009/1/15):水の神殿のボス鍵スキップはボムホバーの応用として比較的すぐ探索がはじまったようだ。
  • Fire Temple Boss Key Skip! (from Hammer Room) - YouTube (by Exodus, 2011/3/29):ハンマー部屋から落ちる炎の神殿のボス鍵スキップ。炎の神殿の問題はハンマー部屋に行くまでなのだが……。
  • Skip 99% of Forest temple OOT! - YouTube (by Zruns, 2011/7/6):手すりにつかまって云々という森の神殿のボス鍵スキップはこのあたりから?
  • Spirit Temple: The Ultimate BK Skip Setup - YouTube (by Pokey, 2012/1/28):魂の神殿のボス鍵スキップは2012年前後からずっと改良が続いている。
  • Shadow Temple Boat Skip - YouTube (by Sketer, 2016/1/13):闇の神殿のボス鍵スキップ自体は2014年にあったが、そこに行くまでボートに乗らなければならないことが問題だった。ゼルダの子守歌が必須だし時間もかかる。この動画では中ボス部屋付近から下に落ちてボス部屋に直行する方法を編み出し、闇の神殿の大部分をカットした(Boat Skip)。ホバーブーツの宝箱に体をひっかけるMegaflip法は2018å¹´12月から。

 

子供ダンジョンの攻略について。

  • Jabu Switch Without Ruto - YouTube (by bloobiebla, 2010/4/10):ジャブジャブにおいて本来床スイッチに物を置いて扉を解除するところをゴリ押すグリッチ。ジャブジャブ内の攻略は(Glitchless用のストラトを除いて)これ以降進展がない。ジャブジャブに入る方法やジャブジャブからのWrong Warpはよく研究されているのだが。
  • OoT - New 231 skip - YouTube (by Glitches0and0stuff, 2014/9/20):デクの樹においてMegaflipでボス部屋まで直行する。

 

 

その他
  • Get into Water Temple early - YouTube (by MrGrunz, 2009/5/21):アイアンブーツなしで水の神殿に入る方法。ground clipの一種。
  • Dodongdoor - door wrong warp from jabu to king dodongo - YouTube (by Jolin, 2017/9/17):ジャブジャブでのWrong Warpは難しく、開発が2016-17年頃まで遅れた。ルト姫がブルーワープ内に陣取っており、さらに非自明なヒープ調整が必要。
  • 1/16th health = no timer - Twitch (by Chris, 2017/12/14):体力を1/16まで減らすと「あついよタイマー」が発動しなくなる。今日の炎の神殿攻略で活用。

 

 

2010年前後の時オカRTAコミュニティ/プラットフォーム史(作業中)

本来は『Part 2』に含めるべき内容だが、いつ出るか分からないのでとりあえずコミュニティ史だけ公開しておく。

 

2009年にゼルダシリーズのスピードランに特化したサイトZaldaSpeedRunsが起動した。グリッチ情報が整理され、フォーラムで活発な議論が行われる。ZeldaSpeedRunsの運営者は有名走者のNarcissa Wright (Cosmo Wright) 氏だった。

氏はさらにレースに着目した配信サービスSpeedRunsLiveを2009年に始める。マリオサンシャインだとSpeedRunsLiveのレース中にAny%世界記録が出ることが多かったらしいが、時オカの場合ビンゴレースの母体になったことが重要である。

2012年、ZeldaSpeedRunsは独自のリーダーボードを発足する。今日のspeedrun.com(2014年発足、時オカの登録は2015年2月)の前形となった。

さて、Any%のWR historyを見ていると2011年頃から急に忙しくなる。これが人の問題なのか場の問題なのかはよく分からない(例えば時オカRTAを代表する走者ZFG氏は2007年頃すでに界隈にいる)。2011年にjustin.tvからゲーム部門としてTwitchが独立したことくらいは言及できるか*7。

 

逆に、SDAの投稿ページが静かすぎたと言えるかもしれない。Internet ArchiveでSDAのAny% 記録を辿ってみると次のようになる。

  • 2:26:56 - Speed Demos Archive - Download (by manocheese, 2007/7/4):5 Boss時代の区間ラン合計。
  • 1:20:31 - Speed Demos Archive - Download (by Pokey, 2010/5/30):RBA時代の「single-segment」ラン。時の扉抜け後は大人になっても時の扉が開いておらず、ノ―セーブリセットでは時の神殿から出る方法がなく詰んでしまう。このランでは2010年に見つかったばかりの井戸チュウで爆発物を早期取得し、さらに子供時代に闇の神殿に侵入してホバーブーツをとる。時の扉抜けをして大人になった後は「大人逆時の扉抜け」で時の神殿を出る。RBAルートが中々走られなかったのってsingle-segmentと相性が悪いせいでは……?
  • 18:10 - Speed Demos Archive - Download (by Cosmo Wright, 2014/7/20):Ganondoor - Ique Player時代(『Part 2』で述べる)のラン。セーブリセットを使っていても「single-segment」と扱われたようである。

以上。……『Ocarina of Time Speedrun World Record History』を読めば分かるが、流石に少なすぎる。SDAのフォーラムは時オカRTA史において非常に重要だが、投稿ページの方はそうでもないようだ。ゼロ年代の動画環境を考慮してもランを抑制していた気配さえある。

なぜこうなったのか? おそらく記録申請が面倒だったからだろう。SDAには「そのゲームのRTAを代表する良いランのみを受理する」という哲学があり、審査が厳格だった。投稿時には長文のプレイレポを書かなければいけなかったし、投稿してから受理まで時間がかかったし、受理されると投稿ページにハンドルネームだけでなく本名も晒される。2005-06年はそれでよかったのかもしれないが、生配信の時代には対応できていなかった。

SDAが時代遅れになった理由を新規事項含めまとめる。

  1. 記録申請の面倒さ。
  2. 「single-segment」というセーブリセット/デスワ―プ縛り。
  3. Any%と100%とLow%しかカテゴリとして存在しなかったこと。2011年から活発に走られ始めたMST(Medallions, Stones, Trials)などのカテゴリに対応できていない。
  4. 記録動画のダウンロードがSDAの売りだったが、YouTubeによりすでに陳腐化した。
  5. 1位の記録のみがページに記載されること。各走者の自己ベストをクリアタイム順に並べた「リーダーボード」形式の方が需要が高かった。

 

このあたりが原因でZeldaSpeedRuns独自のリーダーボードを持つことになったようだ。SDA離れは『マリオ64』や『スーパーメトロイド』など他のメジャーゲームにも見られる。

 

 

 

*1:管理日記を読んだがいつページを作ったかは分からなかった。2004/6/5移転以前のサイトには更新履歴が存在したのだろうか?

*2:記録集計サイトULTIMATEGARDENを中心に、日本のRTA文化がプレイレポの形で始まった。これはゲーム画像のアップロードすら違法なのではないかという恐れが当時共有されていたことによる。もちろん貧弱な通信環境も影響していた。

*3:2007-10年のニコニコ動画は転載されたTASが数十万回再生される環境だった。(2000年頃に生まれた)RTAという言葉はよく知られていたものの、ニコニコ文化圏における人気が知名度に追いつくのはニコ生が盛況を迎える2010年前後と思われる。

2008年の言説の例:「というかTASの対義語みたいに書かれてるな。/あくまで「実プレイ時間で競う」ってとこだけがRTA。/TASでもゲーム内のカウントを縮めるもの」「TASは理論上の限界、RTAは人間の目指せる限界の追求」「なんか日本でTASというからみんなTAPとかTAだとかRTAとかつけたがりなんだよな。/正直TASはツール名なんでRTAとか本当にいらない。うっとうしい。」ニコニコ大百科: 「RTA」について語るスレ 1番目から30個の書き込み - ニコニコ大百科 

*4:TASの感想として2008年に出てきた興味深い言説を紹介する。「なんだか、早くなりすぎて魅せる要素が減った気がします・・・。//私の発言は作者さんに失礼かもしれません。/TASは速さが本質です。/魅せは二の次。//でも、時のオカリナはバグが発見されすぎて、すでに魅せる要素が少なくなってきているのかなと思いました・・・。/それでも、作者さんは少なからず魅せをしてくれました。」「なんだか、不満点を書いてしまってすいません。/私は一年半期待してたんでちょっと凹んじゃっただけです・・・。//魅せ分はyoutubeで保管し、TASは速さだけを求めることにします。/そもそも、TAS=魅せという思考回路自体が間違ってました。」【非公式】時のオカリナTASキターーーー!! 1時間12分36秒18 - 太陽6000度で焼いた餅 

*5:そのまま2秒しか持続しないが無限に続ける方法が2017年に見つかった。見た目がファニー。Infinite Weirdslide - YouTube

*6:ただ大人時代にドドンゴの洞窟を攻略してバクダンを入手するルートと比べると微妙な気がする。

*7:『ゼルダの伝説シリーズ リアルタイムアタック研究会』でも2010年の記録が10件なのに対し2011年の記録は47件ある。2012年は25件。動画配信文化の最初のピークが2011年に来たのかもしれない。