仮想と現実の真ん中あたり

主に舞台探訪とか聖地巡礼と呼ばれる記録をつづるブログ

メロンブックス第8巻カバー絵の舞台

やぁ、ワトソン君、久しぶりだね。
何だい、やぶからぼうに? え、メロンブックスの第8巻カバー絵だって?


メロンブックス 第8巻カバー


もちろん、入手したとも。あれは素晴らしい絵だねぇ。
左右両端にのどっちとモモの“おっきい”コンビを向かい合わせに配して、その奥に一点透視法の道路のパースに沿って各キャラを配置する“小林構図”。そして、その奥に広がる水面と山の柔和で繊細な背景、これはヤオキン氏の手になるものだよ。小林先生の開放的(すぎる)キャラ描写と合わせて、まさに絵全体から夏の空気までが伝わって来るようだね。これをワイドなカバーサイズで楽しめるのは、「咲-Saki-」ファン冥利に尽きるというものじゃないかね?


…え、そうじゃない? 場所だって?
ああ、それはだね、知人のSUGI氏が現地から写真を送って来てくれたよ。まさにピッタリの風景が現地で見つかったそうだ。
だけど、正直、この件はあまり首尾良く行かなくてね。君が興味を持ってくれるとは思えないんだがね。それでも知りたいかい?
…そうか。それじゃ、顛末を話そうか。でも、聞いてがっかりしないでくれたまえ。

舞台探訪者の心得
 ・舞台を荒らさないこと。 ・住民に迷惑をかけないこと。 ・舞台での行動は慎重に。

※「咲-Saki-」探訪関連の記事一覧は、キーワード「咲-Saki-」で。


■謎解き編
さて、もう一度、カバー絵をよく見てみよう。この絵を見て分かる事は、以下の通りだ。





 1.右手奥に大きな水面。湖か海?
 2.大きな水面の手前に、四角い人工的な水面。
 3.背後には、険しそうな山。水面から急峻にそそり立っている。
 4.平地は、わりと田舎の風景。
 5.手前の家の屋根にソーラーパネル
  →水面が広がっているのは、北東方向。陸地は西側に広がっている。
 6.手前の家の窓には、ビニールのトタンかよしずのような日よけの覆い?
  →日差しが強い地方らしい。北日本や寒冷地ではない。
 7.右手方向中央に赤い屋根が2つ、重なって見えている。
 8.中央奥に、工場のような建物が2棟。


1.の水面については、普通なら真っ先に候補に挙がるのは、描かれているキャラの出身地である長野県内にある湖、諏訪湖か野尻湖だろう。
正直言うと、僕もメロンのサイトに上がった低解像度のサンプル画像を見た直後に、野尻湖に行ってしまったぐらいだ。
だが、実際にカバーを入手してから、まず最初に長野説を捨て去ったよ。6.は、長野のような寒冷地では見られないからね。我々が探すべきは、南の地方だ。


では、広範囲と予想される舞台の候補地を絞り込むために、どのようなアプローチを取るべきか? 
ここで最初に僕は、1〜3.から地形を読み取って、その特徴から場所を割り出そうと考えたわけだ。それが一番推測に頼らずに済むからね。
けれども、それは結局、思考の迷路に入ったあげくに収穫なしで終わってしまった。どうやら、地理学的なアプローチは、僕には荷が重かったようだ。


そこで、次に方向転換して、2.の「四角い人工的な水面」に目をつけた。これは、一体何だろうか?
真っ先に思いついたのは、養殖場だ。画像検索してみると、どうもウナギか車エビの養殖場の形が似ているようだ。
ウナギか車エビの養殖場で検索してみると、代表的なのが、静岡県の浜名湖,愛媛県の伯方島,大三島,山口県の秋穂、鹿児島県の池田湖、そして沖縄県らしい。(北日本は、6.の理由から一旦除外する)
これらの候補地の中で、「西側が陸地で、北東方向に四角い人工的な水面とその奥に大きな水面が広がっていて、背後に急峻な山がある、田舎の集落」の条件に合致するのはどれか?
それはただ一つ、瀬戸内海のしまなみ海道が通る島、伯方島しかないわけだ。





ここで、伯方島の航空写真を分析してみるとだね…、





7.の二つの赤い屋根を通る線を引いた方向に小高い丘があって、その丘から8.の工場の建物が見下ろせることが分かるだろう?
これで舞台地の条件1〜8.が全て揃ったわけだ。Q.E.D. …おっと、それは別の探偵のセリフだったね、ワトソン君。


さて、ここで思い出したのが、瀬戸内出身の知人のSUGI氏さ。彼に帰省の際に確かめてもらおうと思って、早速連絡をとったらだね、なんと来た返信は、
「実はそのつもり(伯方島方面探索予定)でした。ぱっと見た瞬間、『こんな風景、うちの実家の方にだってあるぞ』と思いました。私の小さい頃はまだまだ塩田の跡地がたくさん残っていてこんな四角い水溜りがいくつもありました」
さすがは地元の強みというべきじゃないか。『しまなみ無双』の異名はダテじゃない。
そして、帰省中に送ってくれた写真がだね…、


メロンブックス 第8巻カバー
伯方島(愛媛県今治市)


これだった、というわけだ。
…何か言いたそうな顔だね、ワトソン君?
…そう、その通りだよ。あの四角い水面は、元々は塩田のために作られたものだ。それを一時期、養殖場に転用していたようだね。(今では、海砂の採取が原因で養殖が出来なくなってしまったそうだよ) あれは、本来は入浜式塩田のための形なんだ。
そう、僕が最初にあの四角い形を見て「養殖場」で検索して引っかかったのは、実は多分に幸運だったというわけさ。
その点、今回の発見の栄冠は、最初からあれを塩田だと見抜いた、SUGI氏の上にあるべきものだ。まさにパーフェクトなアプローチだったと言えるだろう。(写真の中に、彼の故郷が写っているような気もするけど)


ともあれ、古人曰く、「終わり良ければ全て良し」さ。
「咲-Saki-」にとっての、四国という新たな地での舞台発見を記念して、来週からBSで始まる「SHERLOCK(シャーロック)」でも見ながら、祝杯を上げようじゃないか、ワトソン君。

 本記事内の「咲-Saki-」の画像の著作権は小林立先生にあり、ここでは当該作品の比較研究を目的として引用しています。