給料が上がらねぇからだろ

学習性無力感で日本は滅びる
 これは間違っている。
 まず、かつて高度経済成長期に人々が感じていた「成功体験」とは単純に「昇給」である。特にすばらしい業績を残さなくても所得が倍増していくという体験である。実はそれに平行して物価も上がっていたのだが、まあ給料が上がっていれば不満はなかったのである。「頑張れば頑張るほど」、「良くなった」のは日本ではなく個人の給料の数字だ。
 数々の便利な機器の登場にも、別に「自分が頑張ったからカラーテレビは登場した」などと思っていた愛すべき馬鹿は居なかったのである。
 現在人々の心に重く圧し掛かっているのは「学習性無力感」などではない。仕事を毎日こなす→年をとる→給料が上がる、このサイクルが回らないことである。派遣会社に搾取される日雇い労働者たちは、単純に給料が上がらないからしんどいのである。定期的に給料が上がれば、いつかはネットカフェや一種のドヤアパートから脱して幸せに暮らす未来のイメージを抱けるのである。30歳、40歳になっても同じ生活を続けているだろうなと考えることがダメージなのだ。
 そしてもうひとつ。この増田は10代を無視している。努力→結果というサイクルが最も回りやすい学習はもちろん、恋愛、スポーツなどの舞台で、大きな成功体験を初めて得るのは10代である。それらの多くは働いて得るものではない。
 今、日本の一部の大人たちが感じている閉塞感を突破するには、10代20代に「おめーらミスったな、こんな閉塞感の時代に生まれてきてよ」とブチブチ言わないことである。梅田望夫さん*1や井上雄彦*2のように、他人にポジティブな言葉を投げかけ、自分でポジティブな行動を実践する。それで日本が成功するかどうかは深く考えずに、個人としての成功体験を積み重ねていくことが必要である。
 こんなことを言うと、しかし貧困層にそんな余裕はないと反論する人がいるが、これもおかしい。自己実現ができる環境にある人たちが、自己実現ができない(と思い込んでいるのも含めた)人たちに遠慮して自己実現をしないのは意味がわからないことである。自己実現ができる環境にある人はどんどんしたらいい。
 そんなわけで今回は特にオチは無いのである。

*1:「オプティミズム」という言葉とセットで語られているが、なんとなく「オプティミズム」という言葉は苦手だ。第一に、意味を知らない人が多い。第二に、英語圏の人にYou are optimistic.などと言うとわりと「君は楽観的過ぎる。馬鹿だ」「おまえ甘っちょろいよな」などと受け取られるからだ

*2:『リアル』は暗い漫画だと勘違いしている人も多いが、あれはそんな次元に留まらない