ピッチ補正ソフト比較
そろそろ専用のヴォーカル編集ツールを導入したくなってきたのでリサーチ。
ソフト | Tune | Auto-Tune5 | Melodyne Plugin | Pitch Fix |
---|---|---|---|---|
メーカー | Waves | Antaress | Celemony | Yamaha |
SoundHouse価格 | \72,800 (Native) | \44,800 (VST) | \35,800 | \20,200 |
トライアル | Link | Link | Link | Link |
Waves Tune はさすがに高いが Yamaha Pitch Fix はちょっとお話にならないレヴェル。Sonar 使いであれば VP-9000 ゆずりのバリフレーズ・テクノロジ V-Vocal の恩恵にあやかれたのだが。というわけで Auto-Tune5 か Melodyne Plugin なのだが、触ってみた感じでは圧倒的に Melodyne のほうが直感的で使いやすい。
Melodyne はピッチやフォルマントのみならず音量・タイミングまで含めてトータルに納得いくまで柔軟なフレーズ編集を繰り返すことができる。初期状態で自動補正を行わないので、極力音源を改変せずピンポイントでマニュアル編集したい自分にはこの方が合っている。
Auto-Tune はいかに自動的に自然な補正を行うかというソフトのように思える。マニュアル補正よりもどちらかというとあらかじめ設定を練りこんでおいて、ライヴヴォーカルなどの生音源に差し込んで*1補正編集はするような用途向き。Melodyne は一度音源をキャプチャ→アナライズした後編集するので、生ヴォーカルへのリアルタイム補正は Auto-Tune でないとできないし、"Daft Punk - One More Time" のようなロボットボイスエフェクトとしても使えない*2。スタジオワークなら断然 Melodyne かな。
ところで、いまだにピッチ補正ソフトは邪道であるという論調はあるのだろうか。僕の考えとしては、あらゆるパートが完全平均律で構成された現代音楽にヴォーカルを乗せると、ほんのわずかなズレもつぶさに観察できてしまい、よりシビアな編集が求められるため、これに対応するには専用のツールを使っての補正という形でないと現実的に厳しいものがある。また、パーフェクトと言える出来の主旋律に対して完璧なカウンターやコーラスを録れたとしても、それぞれがセント単位のピッチの世界で相互にうまく交じり合うかどうかは別問題になってくるため、この補正も必要になる。敢えて気をつけるならば、レコーディング中に、この程度なら後で補正すれば間に合う、といった妥協を生むことで緊張感を失わないよう心がけることだろうか。
少なくとも僕は手抜きのためにこの手のツールを使うつもりはないし、より良い音楽を作るために最大限の努力を払い、そのための手段を選びはしない。表情がわずかに足りないが正しいピッチで歌えているテイクとピッチがわずかにフラットだが輝くような表情を持つテイク、どちらを採用したいかなんて考えるまでもない。そのための手助けをするだけだ。
*1:Antaress AVP-1 という Auto-Tune のハードラック版が存在する。音痴矯正機として歌唱力の残念なアイドルのコンサートに常備されている。製品化を前提にしたスタジオレコーディングでの作品はともかく、生声を聴かせないライヴとは一体何なのだろう。客を無礼ている。
*2:一度キャプチャしてから編集するためリアルタイムエフェクトとしては使えないが似たような音自体は出せる。ちなみに Daft Punk が One More Time で使ったヴォイスエフェクタは Auto-Tune ではなく Digitech Talker である。このように、ピッチコレクタはヴォコーダーでもトーキングモジュレータ(フォルマントフィルタ)でもない第三のエフェクトとしても使用されている。