「紙の時代」終焉の雑感+有料化と英新聞界(下):「新聞協会報」より
私は紙媒体に書くことによって主な収入を得ている。いくつかの出版社は厳しい状態にあって、某媒体の原稿料が若干削減となった。この削減自体は大きな影響とはならない。しかし、これが雪崩の始まりとみるのが正しいのであろう。そのうち、「はい、これでこのメディアは終わりになりました。最後の報告です」といって、ペンを置く・・・ということになるのかもしれない。
「電子出版があるさ」とは言っても、それがすぐ紙媒体の代わりになるには若干時間がかかりそうであるし、これを待つ時間は私には残されていないかもなと思う。
ニュースサイトのJAN JANが終わった(休刊かもしれないが)。いろいろな理由はあるだろうが、これも一つの時代の終わりであろう。すっかりメディア環境は変わってしまったのだから。英国のメディア話も、数年前までは定点観測がない感じだったが、今は、米国の話が中心だけれど英国もカバーする「メディアパブ」さんがすごい。そのほかにもたくさんある。メディアのニュースと言えば、テクノロジーのニュースになってしまったのも、大きな変化の1つだろう。(メディアの話がトピックになること自体も。)
それに、「真実を突く」というメディアの機能だって、たくさんあるネットサイトのレポートがはるかに良い仕事をしてしまう場合もある。佐々木俊尚さんのツイッターから拾ったものだが、
「 中国って単純じゃないよ」|増田にゃんねるβ http://masuda.livedoor.biz/archives/51403264.html
こんなに、かみしもを着ている雰囲気がない・本音が出ている・気取らないレポートがネットで読めてしまうのだ。感心してしまったーこんな書き方は、普通、原稿を書いてお金をもらっている人、いわゆるプロの人にはなかなかできない。
・・・とあれこれ思いながらも、英新聞を読んだりテレビを見ては面白がり、これまた感心する毎日だ。船が沈むまで、とりあえずは報告を続けたいと思っている。
新聞協会報の3月16日付に、有料化と英新聞界について書いた。以下はそれに若干補足したものである。
コンテンツ有料化と英新聞界(下)
「サイト上のニュース閲読は無料」というこれまでの英国の読者の期待を裏切らずに、インターネット・ニュースの配信から収入を得るにはどうするか?英新聞界が目を付けたのが、ネットが本格的に使えて、高度な情報端末として機能する携帯電話、いわゆるスマートフォンや電子書籍端末だ。
無料のイメージが強い自社ウェブサイトから、課金の仕組みが既に整っているプラットフォームに注目することで、各社は仕切り直しをはかる。
具体例が、アイフォーン向けに提供する独自の閲読アプリだ。アプリは原則無料だが、ガーディアンが2・39ポンド(約326円)で有料版を販売している。昨年12月中旬の発売から2か月で約10万1千回、ダウンロードされている。3月上旬現在、有料ニュース・アプリのランキングでトップだ。このほか、テレグラフはクロスワード、スポーツ、漫画など、それぞれの有料アプリを販売している。一方、BBCは商業部門BBCワールドのニュースの閲読用に0・59ポンドで「BBCニューズモバイル」アプリを販売中だ。
今後、テレグラフのように、人気コンテンツを有料切り売りする方法を他社・他局が追随する可能性は大だ。
米アマゾンの電子書籍端末キンドル上では、英新聞6紙が購読可能だ。購読料はフィナンシャル・タイムズが27・99ドル(約2525円円)、インディペンデント、タイムズ、テレグラフ、デーリー・メールの各紙が22・99ドル、ロンドン・イブニング・スタンダードが9・99ドルとなっている。
4月末発売予定の米アップル社の電子書籍端末「iPad(アイパッド)」への各紙の参加方法はいまだ明らかになっていないが、アイパッド上のアプリを開発中の2ergo(ツーアーゴ)社のコリン・マッカフリー氏は、アイパッドは出版業にとって「大きな救い」になると述べる(ガーディアン、2月15日付)。紙媒体のコンテンツをネット向けにまったく違う形に編集する必要がなくなり、「紙面のデザインをそのまま」載せられる強みがあるからだ。
有料テレビの契約料に新聞サイトの閲読を組ませる案も浮上している。例えば衛星放送BスカイBの有料契約者数約1200万人を対象に、毎月の契約料に少額の追加料金を上乗せする。これで複数の新聞サイトのニュースを無制限に閲読できるようにする。読者からの抵抗が予想されるサイト閲読有料化を有料テレビ契約と抱き合わせ、パッケージとして販売する案は一理あろう。各社の知恵比べの時代となった。(*個人的に、この案は非常に頭がいい感じがするー。もし実現したら、だが。紙の新聞を読まない若者層だって、テレビは見ているわけである。そこを狙っているのである。「知らないうちに払っている」というわけだ。ニクイ!あるいはズルイ!)