7/26くもり、くつ下をめぐる攻防2020

みんなで鰻を食べようというので実家に帰ったはずなのに、気づいたらみんなでそうめんをすすっていた。アパートに帰ってきて、母から「殻付きウニが届いたよ~」と連絡があったので、私の分はと聞いたらそれ以降連絡がない。

まあそんなもんだよね。

 

くつ下を買いに行った。

よくある、三足1,000円のなんの変哲もないくつ下。仕事にはストッキングなので休みの日にしかはかないけれど、生地が硬くなって履き心地が悪くなってきた。新しく買い替えるくらい、贅沢ではないだろう。

三足1,000円の棚はお店の出入り口側にある。さっさと買ってさっさと帰ろう、と思ったら、その棚の真ん前にご婦人が二人、陣取っていた。口は動くが手が動いていない。後にするか、と思って店舗が入っている商業施設の同フロアをぶらぶらすることにした。一周まわってくる頃には、くつ下くらい選び終わっているだろう。

 

店内には、黄色の背景にSALEの赤い文字が飛び交っている。いまいちパッとしない天気だが、もうすぐ8月だ。ここから、じりじり暑くなるのだろうか。どこに出かけるわけでもないが、服は次第にボロボロになっていくので買い替えないわけにはいかない。気に入って着ているとクタクタになっていくのがわかる。で、いざ買おうと思うと気に入った服がなかったり、欲しくても予算オーバーだったりする。必要に迫られなきゃ買わないけれど、焦るといい買い物ができない。

小ワザとして「気に入った財布はもう一つ買っておくといい」というのがある。そんなに買うものではないけれど、頻繁に使うから(キャッシュレス志向の人はそうでもないかな)傷みがはやい。1年ごとに買い替えるのがいい、なんて人もいる。とにかく、いつかは買うけれど、そのときに「欲しいもの」があるかわからないので、気に入って使っているものをもう一つ買っておけ、という知恵である。

 

服も財布も買わなかったけれど、ふーんと思いながら一周してもとの売り場に戻ってきた。10分とか、15分くらいか。

あ、まだいる。

 

「ただのくつ下なのにねえ……、選べないのよねえ……」

「そうなのよねえ……」

二人いるうち、一人が買い物をしていて、もう一人は付き添いのようだった。さすがにまた一周するほど元気でもないし、今日はくつ下以外の用事は終わっている。これを買って、家に帰って昼寝でもしたい。しかたないけれど、突撃する。

周りをうろうろして、興味のあることアピール。動きなし。あれ、視界に入ってないかな。結構わざとらしく、ご婦人の真横に立ってみたりしたんだけれど。お二人は、相変らずどうしようどうしようと言っている。

まあいいや。欲しいのははじっこにあったので、少し身をかがめて思い切って手を出してみる。再び動きなし。え、結構強引に行ったつもりだけれど、だめ?すごいいやみっぽく、「邪魔なんですよっと」みたいに手を出したけれど、効果はない。しかも、こっちとあっち、両サイドから手を出してみたんだけれど。つまり、2回攻撃を仕掛けたのに、暖簾に腕押し糠に釘、手ごたえは全くない。

ああ、私の性格の悪さばかりが露呈する。

 

相変らずうーんうーんと考えるご婦人。いや、付き添いの方はどけてくれてもいいんじゃ、と思ってハッとする。向こうも意地になってたりするのだろうか。こっちが買いたいのを承知の上で、わざとどけてやらない、みたいな。

そういう気ならこっちも……と闘志を燃やすことはなく、自分の欲しいものは三足きちんと手に入ったので、そこから離れた。レジに行くまでに、何か面白い商品はないかなーと物色していると、誰かがさっと横を通る。

あれ、さっきのご婦人じゃん!

散々迷ってたくせに、もう決めたの?どうしよう、決められないわあとか言ってたじゃん。結局何を買ったのかは非常に気になるが、レジで商品を出し、金額を払った彼女は友人と共にお店を出ていった。ああ、こうなると、「わざと圧かけてくるこいつを邪魔するためにここで踏ん張ってやる」作戦が行われていたのではないか、と訝しんでしまう。

すみません、て声を掛ければいいだけの話なのに、何やってんだろうね。