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細田守監督作『竜とそばかすの姫』は『美女と野獣』のパクリなのか?

竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて本日、金曜ロードショーで細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が放送されます。2021年に66億円の興行収入を叩き出した大ヒットアニメですが、なんと公開から1年あまりで早くも地上波放送が決定!

ちなみに、この映画はインターネットの世界が舞台なんですけど、細田監督は2000年公開の『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』と、2009年公開の『サマーウォーズ』でも”ネット世界を描いた物語”を作ってるんですね。

つまり、細田監督にとってはインターネットを題材にした映画の3作目になるわけで、ある意味「手慣れたジャンル」と言えるのかもしれません。

ただし、フルCGで作られたキャラクターや有名ミュージシャンたちが手掛けた魅力的な楽曲の数々など、本作で初めて取り入れた要素も満載なため、過去の2作を観た人も楽しめるんじゃないでしょうか。

竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫

そんな『竜とそばかすの姫』ですが、公開当時は「『美女と野獣』に似てる」とか「パクリじゃん!」「ディズニーに許可とってるの?」「著作権的にヤバそう…」などの疑問や批判が出ていたようです。えええ…

『美女と野獣』といえば1740年代にフランスで生まれた物語で、1756年にジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン夫人が童話として再構成し、書籍を出版。

そして1946年にジャン・コクトーの手によって映画化され、さらに1991年にはディズニー制作の長編アニメーション映画が公開されました。

『竜とそばかすの姫』はこのディズニー版『美女と野獣』に似ていると言われてるんですが、では一体どれぐらい似ているのかというと…

まず、主人公の「内藤鈴(すず)」という名前は『美女と野獣』の主人公ベル(Belle)からとったもので、しかもインターネット世界<U>のアバター名は「ベル(Belle)」となっていてそのまんま!

また、ネットの世界で忌み嫌われ、自分の城に隠れて暮らしている「竜」はどう見ても「野獣(Beast)」だし、ベルと竜がダンスを踊るシーンなども『美女と野獣』にそっくりなんですよ(他にも「バラの花」や「城にいる召使い」など類似点が多々あり)。

美女と野獣(上)竜とそばかすの姫(下)

美女と野獣(上)竜とそばかすの姫(下)

これらは本当にパクリなのか?そもそも何故こんなに似ているのでしょうか?その理由は……実は細田守監督が『美女と野獣』の大ファンだったからです(笑)。

ディズニーアニメ版が世界中で大ヒットを記録し、日本でも公開されていた頃(1992年の9月)、ちょうど大学を卒業して東映動画(現:東映アニメーション)に入社したばかりの細田監督も映画館へ観に行ったそうです。

ところが当時、細田さんは「アニメーション作りがいかに過酷で賃金的に報われない仕事なのか身に染みて味わい、早々に転職を考えていた時期だった」とのこと(まさに”人生の岐路”に立っていた!)。

そんな時に『美女と野獣』を観て、「アニメーションとはこんなに素晴らしい表現ができるものなのか!」と感激し、「この仕事を続けよう」と決意したそうです。つまり『美女と野獣』がアニメーション監督:細田守を生み出したと言っても過言ではないのですよ(細田監督自身も「今の僕があるのは『美女と野獣』のおかげ」と認めている)。

以来、細田監督は『美女と野獣』の影響を受けながら作品を作り続け、「例えば『おおかみこどもの雨と雪』では主人公と狼男の関係に『美女と野獣』が反映されているし、『バケモノの子』は英題が「The Boy and The Beast」ですからね(笑)」などと証言。

すなわち、細田守監督にとって『美女と野獣』はそれぐらい重要な作品なわけで、『竜とそばかすの姫』にその要素が取り入れたのは、ある意味”必然”と言えるんじゃないでしょうか(細田監督曰く、「”『美女と野獣』のモチーフをインターネットの世界でやる”というアイデアが『竜とそばかすの姫』を作るきっかけだった」とのこと)。

しかも細田監督は以前から『美女と野獣』の大ファンであることを堂々と公言しており、海外の映画祭に出席した際も「今までどんな作品の影響を受けましたか?」と質問されたら「『美女と野獣』が大好きです!」と答えるほどだとか。

さらに『未来のミライ』で米国アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた時は、グレン・キーン(『美女と野獣』のスーパーバイジング・アニメーター)に「僕が将来について悩んでいた時、あなたの描いたキャラクターたちに勇気付けられたんです!本当にありがとうございました!」と直接感謝の気持ちを伝えたそうです(どんだけ『美女と野獣』が好きなんだよw)。

また、『美女と野獣』のプロデューサーを務めたドン・ハーンも、「細田監督は独特のスタイルを持ちつつ、違う場所・違うキャラクター・違うジャンルへとどんどん飛び出して行く。似た映画の繰り返しには決してならない。そこが魅力的でワクワクする」と絶賛していました(まさか”本家”からも認められるとは…)。

竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫

ちなみに、細田監督は『美女と野獣』のどこに最も感銘を受けたのか?という質問に対して以下のように語っています。

ディズニー版だけでなく、ジャン・コクトーによる実写映画版(1946年)も好きなんですが、どちらも何より”野獣”がいいんですよね。ジャン・コクトーの方なんて、野獣にしか興味がないことがフィルムからはっきり伝わって来るぐらいですが(笑)、その気持ちはよく分かるんです。野獣は、人間の多面性を表す存在なんですよ。『美女と野獣』という作品は、そういった多面性を抱えた人間がどうしたら変化していけるのか、そのプロセスを描く物語として僕は受け取っています。

元の『美女と野獣』は18世紀のフランスで書かれた作品であるにもかかわらず、時代や場所を超えて作られ、そして観られ続けてきた。それはなぜかと言えば、「人はどうすれば変われるのだろうか」という普遍的で本質的なテーマを描いているからだと思うんですね。だから僕も同じように『美女と野獣』を通じて、現代のネットの一般化した社会や、その中で生きる人たちについて描くことが出来ると思ったんです。

(「キネマ旬報」2021年8月上旬号より)

というわけで、細田守監督のリスペクトがあまりにも強すぎて、かなり『美女と野獣』に似てしまった『竜とそばかすの姫』ですが、『美女と野獣』のプロデューサーが褒めているぐらいですから、もはや「ディズニー公認」と言ってもいいんじゃないでしょうか(笑)。

なお、『竜とそばかすの姫』のベルのキャラクターデザインを手掛けたジン・キムは、『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンツェル』などのキャラデザを担当した人で、細田監督も「ジンさんの素晴らしいところは”表情”なんですよね。単に絵が上手いってだけじゃなくて、キャラクターに魂がこもってるんですよ!」と絶賛。こういう部分にもディズニー作品に対する”愛”を感じさせますねぇ。

 

竜とそばかすの姫