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『ボーン・アルティメイタム』のアクションはここが凄い!

ボーン・アルティメイタム

ボーン・アルティメイタム


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日、「午後のロードショー」で人気映画「ジェイソン・ボーン」シリーズの3作目『ボーン・アルティメイタム』が放送されました。

ジェイソン・ボーンといえば、マット・デイモン演じる「記憶を失った男」が自分の正体を求めて世界各地を駆け巡る…というサスペンス・アクションで、1作目の『ボーン・アイデンティティー』は2002年に公開、世界中で大ヒットを記録しました(日本でも2003年に公開)

そして2004年には続編の『ボーン・スプレマシー』が作られ、これまた大ヒット!その後も、マット・デイモンに代わってジェレミー・レナー主演の『ボーン・レガシー』(2012年)が、さらに再びマット・デイモンが登板して『ジェイソン・ボーン』(2016年)が制作されるなど、現在まで計4本の映画が作られるほどの人気作です。

『ボーン・アルティメイタム』は、そんなボーン・シリーズの第3弾として2007年に公開され、オープニング3日間で6928万ドル、最終的には4億4200万ドルの興行収入を叩き出しました。

あらすじは、前作『ボーン・スプレマシー』で、CIAの極秘プロジェクト「トレッドストーン計画」や様々な事件に加担させられていたことを知ったジェイソン・ボーンが、全てに決着をつけるためにニューヨークのCIAを目指す…というもの。

僕は公開当時に劇場で観たんですが、過去の手掛かりを求めて主人公がフランス・イギリス・スペイン・モロッコ・ニューヨークなど、世界中を目まぐるしく移動する入り組んだストーリーを、わずか115分にまとめるスピーディーなドラマ展開に驚きました。

まぁ、あまりにも展開が早過ぎる故に「それはちょっとどうなのよ?」と思うようなシーンもありますけど(「ボーンの手際が良すぎてCIAがマヌケに見える」とかw)、娯楽映画としての満足度はかなり高いと言えるでしょう。

ボーン・アルティメイタム

ボーン・アルティメイタム

そんな本作の見どころは、なんと言っても世界各地で繰り広げられる壮絶なバトルであり、中でもモロッコのタンジールで撮影された数々のアクションシーンは必見の素晴らしさ!

殺し屋がCIAのニッキー(ジュリア・スタイルズ)を追いかけ、それに気付いたボーンが現地の警官に追われながらニッキーを助けるという複雑なシーンを、スピード感溢れるカメラワークで描写するという、実に見事な映像に仕上がっています。

ここで使用されたのが「ケーブルカム」と呼ばれる装置で、屋根の上に張られたワイヤーにカメラを取り付け、スムーズに移動しながら被写体を撮影できる優れもの。

ところがこの装置、建物の屋根から屋根へと全力疾走するボーンの動きをとらえるために、かなり長いワイヤーが必要なんですが、ワイヤーを張るためのクレーンが非常に重かったそうです。

しかも現地の建物は泥とレンガで400年以上前に作られたものなので、屋根の上に何トンものクレーンを載せたらその重さに耐えられません(実際、第1班が撮影していた時に突然2階の床が崩れ落ちて大騒ぎになったらしい)。

そのため、頑丈な足場を組んでクレーンを設置し、どうにか撮影を乗り切ったのですが、無数の店舗や民家が立ち並ぶ街の中に機材を設置するのはとても苦労したそうです(ちなみに、ボーンが手にタオルを巻いてガラスだらけの塀を乗り越えるシーンのガラスは「シリコン製なので安全」とのこと)。

さらに凄いのは、ボーンがアパートの中を駆け抜け、通りの向こうにある別のアパートの窓へ飛び込むシーン。ここではなんと、カメラも一緒に部屋から飛び出し、横76センチ、縦122センチの窓に向かってジャンプするボーンの後ろ姿をしっかりとらえているのです!

ボーン・アルティメイタム

ボーン・アルティメイタム

飛んでいるのはマット・デイモンのスタントダブルを務めたデヴィッド・リーチで、彼はブラッド・ピットやジャン=クロード・ヴァン・ダムなど数々のハリウッド俳優のスタントを務め、『ボーン・アルティメイタム』では全米映画俳優組合賞で2つの賞を受賞するなど、スタント界のベテランです。

ちなみに、この後デヴィッドはチャド・スタエルスキと組んでキアヌ・リーブス主演の『ジョン・ウィック』を監督し、『アトミック・ブロンド』や『デッドプール2』、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』など次々と優れたアクション映画を作り出しているのですよ。スゲー!

そんなデヴィッド・リーチですから、この「窓へ飛び込むシーン」のスタントも非常に見事なんですけど、実は撮影している人もワイヤーを付けたスタントマン(ディズ・シャープ)なんですよね。

今でこそ他の映画でも見かける映像表現ですが、当時は「スタントマンがカメラと一緒にジャンプする」という発想がなく、初めてこのシーンを見た多くの映画ファンが度肝を抜かれたという(第2班のカメラ・オペレーターを務めたピーター・ウィグノールも、「スタントマンにカメラを持たせると言ったらスタッフはみんな呆れていたよ」と証言)。

しかし、これによって臨場感溢れるカメラワークが可能となり、『ボーン・アルティメイタム』以降は様々な映画で迫力満点の映像が生み出されました。

ちなみに、実写版『るろうに剣心』の1作目の「剣心が橋から飛び降りるシーン」でもこのテクニックが使われています(『るろ剣』でカメラと一緒にジャンプしたのはアクション監督の谷垣健治さん)。

るろうに剣心

るろうに剣心

さらに、窓からアパートに侵入したボーンは狭い室内で最強の殺し屋デッシュ(ジョーイ・アンサー)と壮絶なバトルを繰り広げます(なお、外のシーンはモロッコですが室内はロンドンのパインウッド・スタジオに作られたセット)。

格闘スタント・コーディネーター:ジェフ・イマダの指導により、激しいアクションを的確にこなすマット・デイモン。ボーンの格闘スタイルはフィリピン武術のカリにブルース・リーの要素を加えたものですが、今回は迅速にとどめを刺す戦い方にシフトしたという。

また、このシリーズではその場にあるものを武器にして戦う点も特徴で、ハードカバーの本やスタンド灰皿などあらゆるものを使って相手を攻撃!

もちろん俳優の安全を考え、硬そうに見える本やスタンド灰皿などは全て軽くてソフトな素材で作られているそうです(そういえば『ジョン・ウイック:パラベラム』でもハードカバーの本を武器にしてたけど、あれもそういう素材なんだろうか?)。

そしてクライマックスは、マンハッタンのセブンス・アベニューを全面封鎖して撮影された空前絶後のカーチェイス!

ニューヨーク湾岸局の駐車場から始まるこのチェイスは、ボーンが湾岸局の車を盗んでバックで急発進。そこへ前方から敵のセダンが銃撃しながら迫ってくる…!

というもので、あまりにも凄まじいアクションに「当然スタントドライバーが運転してるんだろう」と思っていたのですが、なんとマット・デイモン本人がハンドルを握っていたそうです。えええ!?

ボーン・アルティメイタム

ボーン・アルティメイタム

このシーンのためにマット・デイモンは、ニュージャージー州にある広大な試験走路で運転の練習を繰り返し、最終的には180度ターンが出来るまで上達したらしい。自動車好きなマット・デイモンによると「演技よりもこっちの方が楽しい」とのことですが、まさか自分で運転していたとは…。

もちろん、他の車と接触するような危険なシーンはスタントドライバーで、アップが必要な場面では「RDV」と呼ばれる特殊な車両が使われました。RDVとは、屋根の上に取り付けられた装置で別のドライバーが操縦し、運転席のマット・デイモンは「運転しているフリをするだけ」というものです。

これにより、奪ったパトカーでマンハッタンを爆走するジェイソン・ボーンの姿を安全に撮影することが可能となりました。『ボーン・アルティメイタム』の凄まじいカーチェイスシーンは、これらの方法を使い分けながら作られていたんですねぇ。

 

トレッドストーン (字幕版)

ジェイソン・ボーンの物語を元に作られたドラマ版(プライム会員特典)