エロ漫画に付いてる黄色くて憎いアンチクショウ - 「成年コミック」マークを考える

tunderealrovski2009-06-14

 
本日のエントリは、エロ漫画のお話です。
画像が多い上に、今回は修正を特に入れていないので、本文は収納しておきます。
 
 
エロ漫画の表紙には、「成年コミック」というマークが付いています。あの黄色い楕円形のヤツです。
アレって出版社毎に形状が違うことに最近気がつきました。
 

<左上:和六里ハル「大妹」(ホットミルクコミックス) 右上:鬼束直「ワン ホット ミニット」(LO COMICS) 左下:はんざきじろう「誘惑の花園」(富士見出版)>
 
コアマガジン、茜新社、富士見出版と、各出版社のエロ漫画の表紙に付いている黄色いマークを並べてみましたが、それぞれ文字のフォントや大きさが微妙に異なっているのが分かっていただけると思います。
 
他の出版社でもこのような違いはあるのでしょうか?
ちょっと興味が沸いてきましたので、手元にあるエロ漫画を調べてみて、各出版社毎の「成年コミック」マークの特徴をまとめてみました。
勿論、同じ出版社でも、本が発売された時期やレーベルなんかによってもそれぞれに形状の違いはあると思います。
ですから、ここで挙げる特徴がイコール出版社毎の特徴とは一概に言えないと思うのですが、普段何気なく目にしているエロ漫画の黄色いマークにも色々バリエーションがあるんだな、といった軽い気持ちで当エントリを読んでいただければ幸いです。
 
 

■「成年コミック」マークを出版社毎に見てみよう!

●ヒット出版社●

<田倉まひろ 「たくらまかん動物園」(セラフィンコミックス)>
成年漫画誌「阿口云」を発行しているヒット出版社の単行本に付いている「成年コミック」マークは、見ていただければ分かる通り、太いゴシック体を用いたフォントが特徴です。
「阿口云」の連載陣も、ゴージャス宝田先生や、あべもりおか先生といった、熱くてハイテンションな作風の漫画家さんが大勢いらっしゃいますが、この黄色いマークに描かれた文字にも、エロ漫画に対する誇りというか、力強さが溢れているようです。
 
●一水社●

<廣田眞胤 「エッチで自分勝手でカワイイ娘」(いずみコミックス)>
一水社から刊行されている「いずみコミックス」の作品群に付いているマークは、黄色い楕円の周囲が太い線で縁取られています。
 
●ティーアイネット●

<養酒オヘペ 「大好きだよ」(MUJIN COMICS)>
成年漫画誌「MUJIN」「BUSTER COMIC」を出版しているティーアイネット。その単行本に付けられた「成年コミック」マークは、他の出版社のモノに比べて楕円の長径が短く、より真円に近い形状となっています。また、周囲の縁取りがないのも特徴です。
 
●ジーウォーク●

<睦茸 「ちちこき」(ムーグコミックス)>
「COMIC PLUM」や「MOMOPAN」でお馴染みのジーウォークも、形状的にはティーアイネットに近い感じのものを使用しています。こちらは、周囲を縁取りしていますね。
 
●松文館●

<戦国くん 「淫魔性伝」(別冊エースファイブコミックス)>
ティーアイネットやジーウォークとは反対に、長径が長く細長い形の楕円形をマークに採用しているのが松文館です。
比べてみてみると、その形の違いがハッキリと分かります。
 
●キルタイムコミュニケーション●

<くりから 「ぱい☆ずり」(キルタイムコミュニケーション)>
ジュブナイルポルノ誌の「二次元ドリームマガジン」、その漫画版ともいえる「コミックアンリアル」、「コミックヴァルキリー」といった雑誌を発行し、エロ漫画界でも独特の地位とニーズを築いているキルタイムコミュニケーションの黄色いマーク。「成年」と「コミック」のフォントの大きさと太さの差がデカいです。
 
●普遊舎●


ほとんどの出版社では「成年コミック」という文字に角ばったフォントが使用されているのですが、晋遊舎(現:マックス)は丸みを帯びたフォントを使用しています。
普遊舎のエロ漫画って、ラブラブで甘い作品が多いので、この字体の柔らかい雰囲気が非常にマッチしていますね。
 
…と、まぁ、ざっとではありますが、私が気付いただけでも、各出版社毎にマークの規格にはこれだけの違いがあるわけです。では、何故、こんなにも様々なバリエーションが存在しているのでしょうか?
 
 

■何故「成年コミック」マークには、こんなにバリエーションがあるのか?

各出版社によって、何故こんなにも形状に違いがあるのでしょうか? その理由を、ちょっと調べてみました。
 

「成年コミックマーク」「成コミマーク」「成コミ印」「識別マーク」 とは、1990年代初頭の 「18禁」 マンガ雑誌、単行本などに対して吹き荒れた 「子供向けポルノ追放運動」 に対して出版社などの団体が 1996年より自主的に取り決め行った自主規制措置のひとつです。
 
(中略)
 
アダルトビデオやアダルトサイトなどに表示が義務付けられている成年マークと異なり、マークに対する形状や寸法、色彩などが厳密に決まっている訳ではありませんが、おおむね各自治体で 「青少年健全育成条例」 で 「有害コミック」 とされるような書籍類の第一表紙の四辺隅などに目立つサイズで入っています。

 
 
■成年コミックマーク(同人用語の基礎知識)

 
上記のサイトによると、エロ漫画に付いている「成年コミック」のマークは、あくまで出版社側が行う自主規制であるということが書かれています。
つまり、あの「成年コミック」マークには「楕円形の黄色地に黒色の文字」という曖昧な基準はあるものの、統一された規格があるわけではないのです。
 
…恥ずかしながら、初めて知りました…。
 
昔は、その辺りがもっと曖昧だったのか、古いエロ漫画とかを見てみると、「赤地に白文字」の規制マークとかも見かけるんですよね。
 

<戦国くん 「BRANDED」(海王社)>
 
てっきり、あの黄色いマークって何かしらの公的機関が存在していて、そこがルールを作っているものだとばかり思っていたのですが、そういうわけではなかったんですね。各出版社が、各々でマークを作って付けているので、形状もバラバラなのでしょう。
 
現状としては「各出版社毎に作った『成年コミック』マークが、エロ漫画の表紙には貼られている」という状況なわけです。
そんな曖昧な「成年コミック」マークですが、中にはそれを使って単行本の表紙でおもしろい試みをされている漫画家さんもいらっしゃいます。
 
 

■ちょっとおもしろい「成年コミック」マーク

●師走の翁 / 「精装追男姐」●

<師走の翁 「精装追男姐」(セラフィンコミックス)>
ベテラン作家の師走の翁先生の単行本なのですが、エロ漫画で極々たまに見かける、下地と文字の色が引っくり返っているパターンが使用されています。
「黄色の下地に黒色の文字」ではなく「黒色の下地に黄色の文字」のパターンですね。
Wikipediaの解説を見ると、下地の色は黒でも黄色でも構わないようなのですが、これが結構売り場で目を引きます。
あと、これは勝手な妄想になってしまうんですが、この「精装追男姐」という作品は、「突然主人公の男性器がとれて、女の娘がソレを付けたりして快楽にふける」っていう物凄いナンセンスなコメディーなんですけど、女の娘が男性的な機能を身に付けるっていう漫画の内容に、引っくり返えったロゴマークが掛かっているのかな、なんて。…完全に自分のこじつけなんですけど(笑)。
 
●じゃみんぐ / 「お姉ちゃんにおまかせ」●

<じゃみんぐ 「お姉ちゃんにおまかせ」(MUJIN COMICS)>
同じくベテラン作家である、じゃみんぐ先生の「お姉ちゃんにおまかせ」です。
この漫画の表紙は、タイトルと著者名の文字のアウトラインを銀色で縁取っているんですが、「成年コミック」マークの周囲もついでにグルリと囲んであります。
要は、この成年マークも表紙の一部であるっていうことを意識して作られたデザインだと思うんです。
普通に「ペタッ」と貼り付けられているよりは、ちょっと自然な感じを受けますし、先ほどの「精装追男姐」同様、こういう細かいところにちょっと工夫がされている作品って、やっぱり引っかかるんですよね。
 
●野良黒ネロ / 「エロイネコ」●

<野良黒ネロ 「エロイネコ」(メガストアコミックス)>
ムッチリとした女の娘の描写に定評がある野良黒ネロ先生の初単行本。
タイトルの「エロイネコ」に合わせて、成年マークに猫耳が生えています(笑)。
可愛らしさの演出のための一工夫です。なかなかおもしろい試みですよね。
 
●海野螢 / 「思春期の終り」●

<海野螢 「思春期の終り」(富士美コミックス)>
これはちょっと大きな画像で。
海野螢先生の名作「思春期の終り」です。成コミマークは横にして貼るのが普通なのですが、この単行本では敢えて斜めに貼ってあります。右上にチョコンとあるのが、そうですね。
で、表紙に描かれた少女の身体や、タイトル、著者名も斜めに描かれていて、この表紙を構成する全ての要素が平行になるようにデザインされているんです。
海野螢先生といえば、エロ漫画界でも相当に凝ったコマ割りや、見せ方を各作品において実践されている漫画家さんなのですが、こういった細かい部分にまで気を配って見せることができるのも、やっぱりセンスですよね。
「成年コミック」マークの扱い方一つとっても、海野螢先生の作家性や個性が垣間見えるようでおもしろいな、と。
 
●小梅けいと / 「少女花粉注意報!」●

<小梅けいと 「少女花粉注意報!」(ワニマガジンコミックス)>
最後は、ちょっと反則気味なんですが、小梅けいと先生の単行本「少女花粉注意報!」です。
コミックスに付いている帯にHなイラストが描かれているんですけど、その局部を隠すのに「成年コミック」マークを使用しています。
規制をパロディにするというか、ギャグにしてしまって笑い飛ばす反骨精神みたいなものを感じられて、おもしろいです。
 
 

■まとめみたいなもの

急いで調べたので、私の認識に誤りがあったならば本当に申し訳ないのですが…。
エロ漫画を買うと当たり前のように付いてくる、あの黄色いマークですが、あくまで自主規制であって、かなり曖昧ものであると*1。
 
もの凄く綺麗に描かれている表紙にあの黄色いマークが付いていると、やはりどうしても邪魔に思ってしまう時があります。
その位の曖昧なモノで、なおかつ(例え、建て前であっても)レーティングに必要なものであるならば背表紙につければOKとか折衷案は色々ありそうな気がするんですが…。
 
とはいえ、各出版社毎にデザインに差があり、その中に出版社のカラーが何気に出ていたり(例えば、上記したようなヒット出版と晋遊舎のフォントの差とか)、あのマークの使い方に作家さんのセンスや個性が出る場合もあるので、そういう細かい部分を偏執狂的に見ていくのも、たまにはおもしろいものです。
 
…たまには、ね…。本音を言わせていただければ、やっぱり「ちょっと、邪魔だな〜」なんですけど(笑)。
 
 
ちなみに、個人的にもっとも「カッコいい!」と思う「成年コミック」マークは、シュベール出版から発行された単行本に付いているヤツです。
 
●目黒三吉 / 「さんま」●

<目黒三吉 「さんま」(シュベールコミックス)>
「さんま」は、現在一般漫画誌で活躍をされている目黒三吉先生が、成年漫画雑誌で活躍をされていた時期に出された恐らく唯一のマテリアル。
道満清満先生の漫画にも通じるシュールでナンセンスな世界観が秀逸で、中身も勿論大好きなんですけど、黒地の上に黄色…というよりはオレンジに近い色合いで「COMIC」とアルファベット表記された成年マークがカッコいい!
この「カッコいい!」は、非常に感覚的なモノで申し訳ないんですが、マーク自体の大きさが、かなり小さめなのも良い味を出しています。
残念ながら、シュベール出版は倒産してしまっているので、この形状のモノは、もう目にすることができないんですが…。

*1:ちなみに、成人向けのゲーム(エロゲー)の場合はソフ倫が指定するシールをパッケージに貼り付ける義務があるため、規制表示の大きさやデザインは統一されているようです。