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「大丸組の不正工事」(『二六新報』1914年3月10日)
要約:「土木の請負工事に不正なくんば、請負師は立行く者に非ずといふのが、彼等社会の常に口にする言葉である」。3月9日から13日にかけて『二六新報』は、土木の下請け工事において手抜き工事が常態化しており、その典型例として大丸組の不正工事を告発する内容の記事を連載している。その第二回であるこの日の記事では、北海道の広尾線(現在は廃線)の敷設工事、宇治川の架橋工事における手抜きが批判されている。
なお、翌日・翌々日の記事では鬼怒川の水力発電所工事が取り上げられている。
参照http://www.doboku.shimotsuke.net/kurobedamu.html
工事において発注元が下請けの大丸組に対し、莫大な報奨金と引き換えに工事を急がせ、結果多くの死者が出た。以下、3月12日の記事から引用。

炭山とか銅山とか云うものは事実上警察権以外にある従つて弱い奴は片つ端から強者の為に圧倒されて仕舞ふ〔中略〕会社で工事半ばに阪谷東京市長を始め株主新聞社等を招待したが此時などは三人も横死したのを目撃した〔攻略〕

なお同日の記事では、公共事業の受注に関して、下請けを受注する際には赤字が出ることを最初から予想し「其他の諸経費」で利益を出すこと、受注に際しては(土木会社のエージェントである)請負師と発注元(この場合は官僚)のあいだで賄賂の授受が行われることが「公然の秘密」であること、などが書かれている。
ちなみにこの時期はシーメンス事件(戦艦の発注における贈収賄事件)が世上を騒がせていた。当時流行語大賞が存在していれば、大賞はまちがいなく「コンミッション(賄賂のこと)」だったろう。