『しゅごキャラ！』−子ども向けアニメの素直な感覚

今回取り上げるのは毎週土曜朝9時半放送の子ども向けアニメ、ですが、何故か一部では30歳児向けアニメとの呼び声が高い『しゅごキャラ！』です。原作は何故かいきなり連載が終了した『ローゼンメイデン』で有名なPEACH-PIT氏。(最初に貶して後で褒める作戦)
見所の多い作品なので順を追って話していきましょう。まずはOPから。

このOPと第1話の終盤では非常に気持ちの良いカメラワークを見せてくれます。まずOP冒頭、主人公を上空から捉え、その後急降下して彼女の後ろ、つまり地面の下から映すという現実では「ありえない」ショット。


OPでこんなアニメらしいショットを見せられると、本編に期待してしまうじゃないですか。
その本編について、まずはあらすじを簡単に紹介しましょう。主人公は「ツンデレ」であることに悩む少女・日奈森あむ。周囲からはクールなキャラだと思われているのですが、本当は自分の思っていることを上手く言えないだけで、素直な普通の女の子になりたいと願っていました。
ある朝目覚めると、ベッドの中には３つの卵。そこから生まれた3人の「しゅごキャラ」の助けを借りて、彼女は「なりたい自分」を探し始めます。
第1話の終盤、「変身」したあむは空を飛びます。実は必ずしも空を飛ぶ必然性がないシーンなのですが、id:kagamiさんが言うように「ツンデレ」として見られる自分からの解放を象徴するシーンだと見ることも出来るでしょう。


まるでエロゲのヒロインかの如き、外的には
完璧さを持った主人公の女の子は、自分がツンデレであること（外面を制御できず、
意に反した行動をとってしまうこと）を苦しんでいるし、その苦しみがよく伝わってくる。
(中略)
男性が男性のためにツンデレを描く作品に欠如しているものはこの眼差し、
女の子自身の眼差しですよ！！「ローゼンメイデン」などの、弱者の側、弄ばれる
フラジャイルな側からの眼差しを持った作品を創造してきた女性作家PEACH-PITさんの
作品なだけはある。ジェンダーの、眼差される側の苦しみをきちんと描いている。

http://d.hatena.ne.jp/kagami/20071007#p4

kagamiさんは第1話の時点で上の記事を書かれたわけですが、3話まで見ると「ツンデレ」に話を限定する必要がないのは明らとなります。例えば、彼女が憧れる品行方正な「王子様」もやはりキャラを演じているわけで。
「ツンデレ」に限らず他人を「キャラ」として見る視線は総じてベタとなります。多くの萌えアニメではそれをキャラクタの本性として受け止めるので、結果として屈折したキャラクタに見えてしまう。その点、この作品ではベタさを強調すると同時に茶化すようなところがあって、茶化しているのだけれどそれは素直な感覚だなと思います。
現時点の僕の感想ですが、この作品で一番ベタなのは、実はしゅごキャラの力を借りて「キャラなり(いわゆる変身)」した主人公ではないかな、と。普段は下のケープを着せられそうになった時も

「どう見たって私のファッション哲学と美意識に反するし！」と言って断るような、割と普通の感性を持った女の子なのに、変身し始めると途端にベタになります。例えば第2話の変身シーン。

「私の心、アンロック！」

最初にこの変身シーンを見たときは笑ってしまったのですが、「キャラ」のベタさを思いっきり強調した作品であることがよく分かります。もう少し補足しておくと、先述した通り主人公は「普通の女の子」になりたいと願っているのだから、変身することと彼女の願いとは、実は大きく食い違っています。そう考えると先の展開がうっすらと予想できるような……。今のところはベタとネタの境界を漂っている感じ。


演出についても少し触れておきましょう。一応は子ども向けアニメということで、場面転換などでは過剰に思えるほどの演出がなされています。



他にはこんなのも。

デフォルメが利いていますが、手法としては正統派そのもの。最近は背景も含めて画面全体にピントを合わせる演出が多く見られる中で、この作品では人物にピントを絞り情報を制限することで、画面に集中しやすくしています。対象年齢がもっと上がれば別の演出方法もあるでしょうが、これはこれでアリではないかと。
あと、やっぱり主人公の服装が気になりますね。制服姿も良いですが、3話で登場したエプロン姿にもかなりグッとくるものが(危ない発言)。

こういうロリコンキャッチャーな部分がたくさんあるわけですが、30歳児向けなどと言われる理由はそれだけではないと思います。上述した通りすごく情報が読み取りやすい、ということはそれだけ一意的で単純だという話なんですが、大人にとっては完全に受身になれることの心地よさが好まれているのかもしれません。
参考リンク
TV東京『しゅごキャラ！』番組公式サイト
http://www.presepe.jp/m44/sp/id/yxPoJrQNvuM=
朝日新聞で「しゅごキャラ！」が紹介される - ［ 悠 々 日 記 ］
「しゅごキャラ！」を読む少女 - 斧屋のアイドル領域

しゅごキャラ!(1) (講談社コミックスなかよし)

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ホントのじぶん

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