アクティビスト銘柄で顕在化する「後始末リスク」 手元資金が急減し、巨額還元の撤回も困難に
大規模な株主還元がアクティビスト(物言う株主)の退場を促したのかーー。
2024年6月の株主総会で一部の大株主から社長(当時)の再任案に反対され、トップ交代に追い込まれた中国地方を地盤とする中堅の東洋証券。UGSアセットマネジメントなどのアクティビストが30%程度の株式を握っていたが、12月18日にその一部を買い取ることに成功した。
同日に行ったのは「自己株式立会外買付取引」(ToSTNeT-3)による自己株式の取得だ。前日の終値607円で1317万株、総額80億円の株式を買い取った。発行済み株式総数に占める割合は15.8%。大株主のUGSアセットとBe Braveは12月25日に変更報告書を提出。この取引で合わせて約900万株を売却したことを明らかにした。
株式売却を後押しした株価上昇
大株主から株式を買い取ったことで、ひとまず経営の安定性は確保しそうだ。6月の株主総会では、当時の桑原理哲社長の再任案に大株主が反対。選任の見通しが立たないことから総会当日に選任案を撤回した。株主提案の取締役候補は選任されなかったものの、小川憲洋現社長を含めた取締役は賛成率がいずれも50~52%と、薄氷の結果だった。
株主構成に変化がない限り2025年も同様の厳しい株主総会を強いられる可能性が高く、何らかの対応策が必要だった。そこで打ち出したのが大規模な株主還元だ。
2024年10月30日、それまでの中期経営計画を撤回して、新しい中計を発表。併せて2025年3月期からの3年間、毎年50円の配当を支払うことを表明した(2024年3月期は10円配)。必要となる資金は毎年30億円超。この資金確保に向けて、保有する株式や不動産の売却益を計上するものの、配当性向は100%を超える。稼ぎ出した利益以上の株主還元を実施する大盤振る舞いだ。
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